表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雪の蝶  作者: Ppoi
4/4

こころの鍵

こころの鍵があったの。


わたしのこころの鍵。


こころの鍵は、使われることなく、お財布の奥底に仕舞われてた。


あの人に会った瞬間、わたしのこころの鍵は財布から出てきて、こころが開いてしまった。


その人に、簡単に鍵を渡してしまったの。その時、青い蝶が鍵を持っていった気がしたの。




高校の入学式だった。その人に会ったのは。4月だというのに、寒い日だった。


「ゆきこ!」


わたしを呼び捨てにして、快活に笑うその人にこころを奪われた。


すきになってしまった。


その時、青い蝶が目の前を通った気がした。その蝶には、鍵がついていた気がした。あまりに非現実的だったので、見間違いだと思ってすぐ忘れてしまった。


背が高くて、あまり小さいことを気にしない人だった。


背の低いわたしの頭をよく撫でてくれた。


バスケ部で、バスケをしている姿はかっこよかった。


よく話してくれた。わたしが1番だと思ってた。


でも、それは間違いだった。


背の高くてスレンダーなバスケ部のマネージャーと付き合っていた。


2人が一緒にいるのを見ると胸が張り裂けそうだった。お似合いだった。わたしが入り込むスペースなんてなかった。


泣いて泣いて目が真っ赤に腫れた。


わたしは女子で1番の友達。


彼女じゃない。特別じゃない。


告白は出来なかった。話しかけてもらえなくなるのが怖かった。友達だったら、側にいられるから。


でも、辛い。苦しい。この気持ちはなんであるの?


恋なんてしなければ良かった。


「あれ? 香川?」


告白しようとしたけれど、いつもと違いすぎた。私を名字で呼んだこの人は誰?


いつも私をゆきこと呼んだ人はどこにいるの?


不思議な既視感に苛まれ続けても、私が好きになった人に会うことはなかった。


辛い恋心を抱えながら、高校卒業になった。


それなのに、わたしのこころの鍵はあの人のところにずっとある。たぶん、本人は持ってるって気づいてない。


使われないのは、辛くて悲しい。


だから、返してほしい。わたしのこころの鍵。


貴方がわたしの鍵を持っているかは知らないけれど返すから、私の鍵も返してほしい。


他の人に渡すから。


使わないならいらないでしょ?


貴方の心の鍵を返すから、わたしのこころの鍵も返してほしい。


わたしは貴方の鍵を持っているなんて勘違いだったかもしれない。わたしの鍵は渡してあるのに、貴方の鍵は別の人のところだったね。


これが片思いの果て。


長年の片思いはわたしのこころを蝕んだ。


思えば、私の好きなあの人がいたのは、いつも寒い日だった。寒い時の記憶しかない。


この記憶を早く捨ててしまいたい。でも、忘れることなんてできない。だから、苦しい。


わたしはこころの鍵を持っていない。


街中を歩いている時、彼が目の前に現れた。3月だというのに、今日も一段と寒い。


ゆ・き・こ さ・よ・な・ら


と口が動いていた。


彼は透けていき、真っ黒な蝶になった。三年前の入学式にみた真っ青な蝶に似ていた。黒く染まった?


そのまま空へ飛んで行った。


びっくりして、スマホを落としてしまった。


「あの、これ、落としましたよ?」


鍵を渡された気がした。だけど、差し出されたのはスマホだった。


新しい恋の予感がした。






noteのほうでも更新してます。画像が入れられていいな、と思っているので。特に意味はないですが、noteだとまとまってるわけじゃないから、こっちは記録として。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ