山道
二泊三日の強化特訓、その合宿地は日本アルプスの奥地にあるらしい。
俺とキムラは最寄り駅まで電車で移動し、そこから山道を徒歩で進むことにした。
「なぁ、キムラさんよ。魔法で一気にビューンって行けないのかい?」
「町中で魔術を使うわけにはいかないんだよ。一般人に見られたら大変だからね。」
なんだろう、魔法使いは電車とか車とか使わないもんじゃないのか。
しっくりこない。
「いやいや家の近くならともかくとして、ここなら樹木に囲まれてるし一般人に見つかることもないんじゃないか?」
「それもそうなんだけどねー。空間移動系の魔術は気分が悪くなるし。」
「箒で飛んだらどうだ?」
「あれも酔うんだよね。」
キムラはあからさまに嫌そうな顔をする。
魔術とは一体...。
「そろそろ休憩しようか。」
キムラが声をかけてきた。
「ああ。」
俺はちょうどいいサイズの石に腰かける。
どこからか小川のせせらぎが聞こえる。
それと野鳥の鳴き声。
風によって木々が揺れる音。
自然を感じる。
喉が乾いたから何か飲もうと思いバックを漁るがコーラしかない。
くっそうコーラって気分じゃないんだよなあ。
水が飲みたいぜ。
出発前にキムラに捨てられたんだよなあ。
当のキムラといえばペットボトル入りの天然水を飲んでいる。
手ぶらのくせに一体どこから取り出したのか。
流石は魔術師といったところか。
しかし...。
鍛え抜かれた鋼の肉体、山道をものともしない健脚、サングラスの奥に光る鋭い眼光。
彼の風貌は知的な魔術師のイメージと全く一致しない。
魔術師は皆こんなふうなイカツイ集団なのだろうか?
「なあ、お前以外の魔術師ってどんなやつがいるんだ?」
「どんなやつ...そうだなぁほとんど生まれつきの魔術師だったね。君みたいに十代になってから魔術師は珍しい。」
「いや外見の話だ。キムラさんみたいにイカツイひとが多いのか?」
「まさか!彼らはしなやかな筋肉をもつものはいても僕みたいなパワー型マッチョは居なかったよ。」
キムラはそう言いながら拳と拳を付き合わせる独特のポージングをした。
「多くの魔術師は容姿端麗で優秀。魔術以外のことにも結果を残し、社会的地位も高い。血筋を重視する彼らだからね、一族としての歴史もある。」
「要は勝ち組ってことか、うらやましいもんだな。」
「まあ、ね。どんな時代でも不可思議な力をもった人間というのは重宝されるから。そして...。」
キムラは口をつぐみ、水を飲む。
「そして迫害されることもある。彼らはいつも勝ち組だった訳じゃないさ、ひどい目に遭った連中は何人もいる。」
魔女狩りとかか...。
重い話だ。話題を変えよう。
「血筋を大切にするってのは何故なんだ?慣習的なものなのかな?」
「その理由は二つあってね。一つに他の一族の技術を知るためには婚姻という手段で繋がりを持つしかないから。二つ目が――こっちの方が重要なんだけど――魔術師の才能というのは遺伝するからなんだ。だから魔術師は血筋を大切にするのさ。」
「じゃあなんd」
「そう、君が選ばれた理由もこれに関係している。」
いや台詞言わせてよ!
TYR (Thank you for READING)!
なーんてカッコつけたったり。
読んでくださりありがとうございます。
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