来訪
ピンポーン。
朝8時14分チャイムが鳴る。
俺は玄関の覗き穴から外の様子をうかがった。
そこにいたのは、宅配業者ではなく、美少女の幼馴染でもなく(もち冗談だが)、ガチムチの肉だるまのおっさんだった。
一歩そして二歩後ずさる。
ピンポーン。
二回目のチャイムが鳴る。
もう一歩後ずさりする。
トンッと背中が何かに当たる。暖かいというか熱い。
ゆっくりと振り向く。そこにいたのはたった今外にいたはずの肉だるまであった。
___。
そこで俺の意識は途絶えた。
熱い。
寝苦しい。
ううう。
薄目を開ける。
頭上には厳つい顔。すぐさま飛び起きる。
「だっ誰だ、お前は!」
「失礼な奴だなぁ君は。先が思いやられるよ。」
男は外見に似つかない、高く、幼い声を発する。
「キ、キムラ…さんか?」
「うんその通り。外見と声が一致しないのがそんなにも不思議かい?」
不思議も何も、違和感しかない。
「ああ。どうなってるんだその声。」
「持病なんだよ。すまないね。どうだったかな?僕の膝枕は。」
「最悪だ。」
こんなゴリラと人間のハーフみたいな男に膝枕されていたと考えるとぞっとする。
「早速だが時間がない。出発するからついてきな。」
「分かった。」
キムラは玄関のドアのロックを外して外に出る。俺は荷物を詰め込んだバックをとるとそれに続いた。
玄関先でキムラは振り返ると俺のバックを見て聞いてきた。
「それは君が用意した持ち物かい?」
「ああ。言われた通り用意した。なにかあるか?」
「少々、多すぎるね。僕が選別してあげよう。」
キムラは俺の手からバックをとると、のこぎりや調理用具、さらに寝袋までもを投げ捨てた。
何しやがる。
「これで軽くなった。いやーこんなにたくさん用意されても逆に困るんだよねー。」
バックを俺に返す。中にはチョコが何枚かと缶コーラ、着替えしか入っていなかった。
「用意しておけって言ったの、あんただよな。」
「はいはい。すまなかったね、その分の費用は後で補填するから許してよ。」
それにしても、とキムラは続けた。
「バナナを用意しなかったのは偉い!「主人公×キムラのバナナ遊び」みたいな本が出かねないからね。」
何を言ってるんだこいつは。
読んで下さり誠にありがとうございます。
高評価、ブックマークよろしくお願いします。