はじめて〜の
生暖かい目で見てくれると嬉しいです(╹◡╹)
わかばマークが行く!
はじめての雪の高速道路!
いや無理。
…。
ついに降りはじめたなー。
マジで勘弁して。
怖い。
えっ、冬タイヤ規制?
マジで…ノーマルタイヤだわこれ。
…一旦降りよう…ついでに休憩。
あとは情報収集しなきゃ。
群馬県も半分くらいかー。
先は長い。
「すみません、ここから先どこまで冬タイヤ規制ですか?」
「5,310円ね。お姉ちゃん若いね。どの辺行くの」
高い。
「北陸道の方です」
「ああ、そっち。それならもう少し先からずっと規制かかってるよ」
えっ。
「スノータイヤ持ってないの?」
「…はい」
「この先ノーマルタイヤじゃ下道も危ないよ。どこかで買うなり引き返すなりしないとはいお釣り、700円。レシート。気をつけてね」
まじか…。
「わかりました、ありがとうございます」
今更帰るなんて考えられないな。
てか帰ってもどうにもならないし…。
とりあえずインターチェンジを出てすぐのコンビニに入る。
気分転換にカフェオレでも買おう。
レジ待ち中に…うげぇ、ほんとにずっと規制だ。
確かに海側の天気予報も雪になってる。
確認しとくべきだった。
気持ちが流行っちゃった。
どうしよう…。
お店を出てあたりを見回すと中央分離帯の向こう側に狙ったようにタイヤ屋さんが見える。
鮮やかな赤い帽子もあいにくの曇天でくすんで見える。
スタッドレスタイヤっていくらぐらいするんだろ…買えるかな。
残金は…苦しいかも。
ただいつまでもコンビニで燻っていてもしょうがないのでとりあえず突撃してみよう。
ここは転回していいのかな?
直進のみ…。
あっ、中型以上か、まわっちゃえ。
ぐるっと方向を変えてタイヤ屋さんに入る。
うわもう見えた。
たっか。
あ、これミニバン用?
軽用はもっと安くないかな。
とりあえず車を駐めて店頭に陳列されているタイヤにガンを飛ばす。
SUV…高いなあ…あれ、軽、軽…。
あった、おっっ…これなら手が届く。
あっ、工賃もかかるのか、そうだよね。
さっきのコンビニで多めにお金おろしてよかった。
よし、換えてもらおう。
店員さんに声をかける。
◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
危なかった。
作業時間ギリギリだったのか。
でも助かった。
寒い中ありがとうございます。
車内が夏タイヤでギチギチだ。
荷物は先送りしててよかった。
と言うわけでこれで目的地まで辿り着けるかな。
怖いのに変わりはないけど。
よし、とりあえずさっきのコンビニで晩御飯を買おう。
途中休憩やら仮眠やらも挟んでのんびり行こう。
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
目的地まで12km、次が16km、隣の県が99km…。
先程から順調に数字が減る緑の看板に気が緩む。
いけないいけない。
やっとここまで来た。
やっぱりあの距離を車だと疲れるな。
途中サービスエリアで仮眠を取ってからは割とスッキリしてるけど。
待ちに待った下宿生活。
一度下見に来ただけでほとんど知らない土地での生活はすごく緊張する。
親元を離れられたのも大きい。
大学もいい感じだし、下宿先のご主人も優しかったので希望しかないよ。
それに下見の時に会えなかった下宿先、井ヶ谷家の子どもたちも気になってて朝も眠れなかった。
2人姉妹らしいしな〜。
今年から高校生だって教えてもらった。
ぴちぴちだ。
…あら?
お姉ちゃんが高校生かな?
そういえば妹ちゃんはいくつなんだろう。
教えてもらってないな。
話のネタにしよう。
着実に近づいてくる新しい生活に心が躍る。
ハンドルも踊りそうになる。
何かを感じたのか突然前の車がブレーキランプを点灯させる。
やめてそんなに警戒しないで。
…。
…なんだ更に前の車がなんか悪さしてるのか。
関わりたくないしさっさと抜いちゃお。
うわぁ、これが噂の煽り運転か…かわいそうに。
地元ナンバーやん、恥ずかしい。
私も同じナンバーだし仲間だと思われちゃう。
近寄らんどこ…。
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
目的地を降りる。
雪が怖くて思ったより時間がかかってしまったけど…。
やっと着いたーっ!
とりあえず体を伸ばしたいのでどこかコンビニでも…。
あったあった。
コンビニが近いインターチェンジが多くて助かるな。
うわ、こんなところにブルドーザーが置かれてる。
工事でもしてるのかな。
とりあえず駐車してっと、えーっとマップマップ…井ヶ谷さんに聞いた住所は…よし、これで迷わない。
あとは気が緩んでるから雪道気をつけよう。
気分転換にチョコレートでも買っていこう。
あぁ〜楽しみだなあ〜。
女の子が2人もいるなんて…うふふ。
いやそっちの気があるわけじゃないけどさ。
ウチにはクソ兄しかいなかったし…妹みたいに接せられたらいいな。
う〜、わくわくする。
予定の時間にはまだ早いけど…まあ何時でもいいよって言ってたから居なかったらタイヤだけでも降ろさせてもらおうかな。
この辺見て回るにも邪魔だしね。
さてさてマップをセットして…。
いざ、井ヶ谷家へ。
まあ、のんびり行こう。
時間は早すぎるくらいだ。
家の人いないかもしれないし。
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○
大きい道以外の雪の量すごいな〜。
車が車なので割と慢心してるけど…お父さんに感謝しないと。
ここの角を曲がって…登り坂の、この辺?
家の場所は下見しなかったので不安がある。
おっきい家ばっかだなこの辺。
表札表札…高田。
違う。
隣は…北川。
うーん。
どの辺だろう。
ハザードを炊いてブレーキを緩めるとゆっくり車が下がり始める。
高本…っと。
後ろから車来た。
やり過ごしてからまた下がり始める。
木田…井ヶ谷…あっ、あった!あった!うわっ!
タイヤが雪崩れてトランクのドアに激突する。
興奮して足離しちゃった。
結局角から1件目まで下がっちゃった。
位置情報の精度良くないのかなこの辺。
車どこ駐めようか。
とりあえず家の前に置かせてもらおう。
坂道なのでサイドブレーキをしっかり引いておく。
車から降りて家の外観を確かめる。
坂道の途中に建てられた家は大きい。
その上庭まである。
敷地の坂下側は高低差で崖みたいになっている。
玄関は階段で少し上がったところに…建物の下に3台は入りそうなガレージが埋まっている。
シャッターは全て降りているので中の様子は伺えない。
てかじろじろ見てるけど本当にここであってるのかな。
とりあえず階段を上がってインターホンを押してみよう。
なかなかがっしりした造りの建物だ。
昔ながらのって感じ。
ただ外壁は最近張り替えたのか比較的新しい装いになっている。
黒の木材と白の漆喰のコントラストが美しい。
わっ、かわいい。
玄関先に小さな植木鉢が置かれている。
そこには群生した小さな白い花が頭を垂れている。
傍のプレートにはこの植物の名前が記されている。
へえ〜これがスノードロップか…かわいいな。
よく見ると他にも大小複数の植木鉢が置かれている。
時期的に緑色か何も生えて居ない物が多い。
誰か園芸やるんだ…こういう趣味もいいな。
玄関脇の小さな庭にうっとりしつつ改めて玄関になおる。
カメラのついたメカメカしいインターホンが浮いて見える。
…なかなか出てこないな。
もう一度押してみよう。
…。
…留守かな。
なら仕方ないか…。
約束の時間の5時間も前だしね。
大人しくタイヤ積んだままこの辺の散歩でもしていよう。
…2本だけ降ろさせてもらおっかな。
流石にどこか行くにしても窮屈すぎる。
ガレージのシャッターの横に置かせてください。
さてさて。
車に乗り込みマップを開く。
どこ行こっかな。
この地方は一度来た切りなのでまだ見るところもたくさんある。
海まで行くと風車があるのか。
それは見たい。
近くに大きい橋もあるのね。
夕方がオススメ?まあいっか。
車を動かして坂道を登りきる。
あっ、待って、登れないんじゃないこれ。
雪道の坂道発進難しい…ゆっくり…ゆっくり…。
おお…動いた、よかった。
日曜日の昼間だからか歩行者が多いな。
この寒くて雪も積もってるのによく歩くなあ…。
おっと、横断ほど、うわっ?!
…こわ〜…後輪滑ったな〜今。
若干車のお尻が反対車線にはみ出してしまっている。
こんな路面はもうちょっとゆっくりブレーキ掛けないとか…。
そもそも横断歩道があることに歩行者がこちらを見てなかったら気づかなかった。
路面表示も雪で隠されちゃってるから危ないな。
早く大きい通りに出よう。
こちらが止まったので横断歩道待ちをしていた2人組の女の子と自転車の小学生が渡り始めた。
ノーヘルの小学生はこちらに軽くぺこりとすると自転車を押して横断し始める。
服が濡れているので何か事故があったんだろう。
…まあ、歩いたらわかるけどこんな雪で自転車乗ったら…ね。
向こう岸の女の子たちは反対車線に気を付けているようで途中で歩くペースを落とした。
対向車がゆっくり速度を落としてライトをピカッと光らせる。
それに反応して女の子たちも会釈をしながら足早に渡り始める。
こっちの人は美人が多いって聞いたけど体感そんな感じ。
かわいいなぁ。
デレデレになって眺めていると片方が転んでしまった。
大丈夫かな…。
緑色の髪…眠くなりそうな色合い。
もう1人は吸い込まれるようなメッシュがかった青色だ。
かわいい。
語彙力が無くなる。
やっぱりこっちの人でも滑って転んだりするんだ。
青髪の女の子が笑いながら手を差し出すと転んだ女の子は恥ずかしそうにその手を取る。
自転車の小学生と対向車の運転手もくすくす笑っている、これは恥ずかしいな。
手を引かれて歩道まで退避する2人。
あら、手擦りむいちゃってる。
ズボンもびちゃびちゃになっちゃって、かわいそうに。
ダッシュボードに入れてる絆創膏でもあげようかしら。
…知らない女の子に声かけたら通報されちゃうな、ここは冷静にスルーしておこう。
かわいかったな。
近所の子だったら、また会えたら今度は話しかけてみよう。
ナンパの予定が増えてしまった。
…そういえば田舎なら女の子に声かけても通報されないかも。
しまった、声かけてみればよかった。
ロクでもないことを考えながら街に車を走らせる。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
結局夕陽は見られなかったのでまた今度連れて来てもらおう。
そろそろ約束の時間なのでタイヤを置き去りにしてきた下宿先に戻る。
もう道は覚えた…はず。
マップを見ずに道を辿ってみる。
おっ、この坂は見覚えあるな。
ならこっちに行くと…あったあった。
なかなか記憶できてるもんだな。
登り坂なのでサイドブレーキを引いてギアを入れておく。
電気が付いている。
いる…緊張するな…。
車に積んでおいた小さい荷物を抱えて玄関前の階段を上る。
深呼吸、深呼吸。
よしっ。
数時間振りに再会したインターホンの大きな1つ目でぎょろりと睨まれる。
怪しいものじゃないですよ〜。
期待と緊張に震える人差し指でいざ、ボタンを押す。
…。
うわ〜!緊張する!
押すぞっ!
軽いベルの音が響く。
見た目に反してレトロな音が鳴る。
おや?
井ヶ谷さんからメッセージが来た。
『急な仕事が入ったのでお出迎えできなくなりました。ごめんなさい』
えっ。
ぱたぱたと足音が聞こえる。
えっ、待って。
唯一の顔見知りの人がいないとなると緊張度が違うんだけどっ、、、。
変な汗をかいている。
別にやましいことなんてないけどっ!
ないけどさっ、、、。
深呼吸、深呼吸。
「はーい」
扉の向こうが騒がしくなる。
かわいい声!
そんなこと考えてる場合じゃない!
まだ深呼吸の時間はある、この扉二重ロックだしドアチェーンもついてるかもしれないから落ち着いて落ち着いて。
吸ってー。
ドアが開く。
吐い…。
えっ?
肺から徐々に空気が漏れる。
扉開くの早くない?
てか待ってこれ扉近い。
私の頭と扉の間で鈍い音が発生する。
完全な不意打ちで思ったよりダメージが大きい。
脳が揺れる。
軽いめまいに思わず後ずさると足元に何かある気配がした。
あっっ、植木鉢っっ。
数時間前に見た小さな花を思い出して足を出すのを躊躇ってしまう。
支えの無い私の体はそのまま仰向けに倒れていく。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
はっっ。
寝てた?夢?どこから?
まさか親元を離れられるところから…?
そんなの嫌あ…。
…。
…いい匂い。
見慣れない景色。
…夢じゃなかった、よかった。
ただ頭が痛い。
あら…これはソファーかな。
広い空間…天井が高めで黒い梁や柱が剥き出しになっている。
梁のひとつからレトロな外観の照明器具がいくつか吊り下がっている。
いい趣味してるな。
エアコンなんかも上手いことデザインに溶け込んでいる。
「あっ…お姉ちゃん、起きたよ」
聞きなれない声の出所を見ると…吸い込まれそうな、青いメッシュの入った髪の女の子がいた。
モノトーンのエプロンを着けて台所に立っている。
かわいい。
「えっと…」
挨拶しなきゃ。
事前に用意してたセリフ…不思議と緊張は吹き飛んでいるけど言葉が出てこない。
あれ…?
でもこの子どこかで…。
「…え?なにそれ…。えと…三吉さん、ですよね。その…。はじめ、まして?」
「あっ、はい!三吉ですっ!お世話になります!」
ソファーの上で正座して青髪の女の子に向き直る。
「…」
「…」
話が続かない。
えーっと…。
気まずい沈黙。
コミュ力がっ…!足りない!
どこかからくすくすと笑う声が聞こえる。
「…なにわろてん」
「いや、情けない顔してるなーって」
「…調子に乗って…あとで覚えといてよ」
「ええー」
先ほど玄関で聞いた覚えのある声が今のやり取りを茶化す。
「お姉ちゃんこそ調子乗ってないでさっさと謝ったら」
「う…ごめん」
台所の陰から頭が出てくる。
「あっ…」
眠くなるような緑色の髪。
胸元まで伸びた長い髪。
この子って…。
「はじめまして、さっきはごめんなさい!」
キッチンカウンター越しに頭を下げられる。
あれ?
謝られるようなことされたっけ。
「えっと…」
「ぶつけたとこ大丈夫ですか?」
アイスノンとタオルを持ってこちらに近づいてくる。
…ああ、そう言えば扉に頭ぶつけて転んだんだっけ。
その上気絶するなんて初対面からみっともないところ見せちゃったな…。
「あはは…すみません。私も油断してて」
「何言ってるんですか。謝らんでください。完全に私が悪いです」
じっとしててください〜、と言いながら緑髪の女の子はアイスノンをタオルに包んで頭に器用に巻いてくれる。
ふわふわと甘い匂いがする…んへ。
あ、手のひらにかさぶたがある。
やっぱりさっき横断歩道で転んだ子だ。
ナンパの予定が思ったよりも早くなってしまった。
こんなにかわいい子たちなら大歓迎だ。
早く仲良くなろう。
オリキャラを絡ませたいと思ったと供述しており。