第六節 探索
――K県のとある沼地。主人公、爆破らを含む狩人の部隊が10名ほど、ぬかるんだ道を進んでいる。
一行の中でひときわ生気の無い人物がいた。逃隠サケルである。顔はやつれ、目にはクマができ、暗い紫色になっている。
(お前にはガッカリだ……)
未だに身体の言葉が頭から離れない逃隠。
(あァ、あんなに真摯に特訓に付き合ってくれた身体副隊長……その副隊長に……遂に見捨てられてしまっタ……)
トボトボと隊の最後尾を歩く。一方で、主人公。少し汗を掻きながら、前から3人目辺りを進む。
(K県にこんなところがあったなんて……まるでジャングルみたいだ。サケル君ちもそうだったけど、意外と自然で溢れている所が多いんだな……)
そう考え事をしながら歩く。
ふと、前を歩く爆破に話し掛ける。
「スマシさん。もう1時間近く歩いていますが、本当にここにゾムビーは居るのでしょうか?」
前を向き、歩きながら爆破が答える。
「分からん。……だが、調べてみる価値はあるんだ。前も言った通り、ゾムビー達は湿った場所を好みとするとされている。更には、ヘドロや腐敗物があったり、プランクトンがいる場所にも発生しやすいとされている。この前ゾムビーが発生した、ツトムの学校にある排水口も、その理由で徹底的に洗浄、殺菌を狩人で行っている。話は逸れたが、ここの沼地付近の地域に、過去8件のゾムビー発生事件があった。」
「そんなに集中しているのですか!」
主人公は驚く。
「ああ、だからこの沼地には何かあると踏んでいるんだ。……おや?」
爆破が何かに気付く。そこには大きな一本の木が立っていた。
「全員、止まれ!」
爆破の号令により、隊は立ち止った。
「全員、この木の周りに集まれ」
続けて爆破は言う。
「フム、丁度いいところに、こんな大きな木があったな。これより、探索の効率を上げるため、3つに隊を分ける! この木から見て、北東、南東、真西の方向へ進んで行く事とする! 北東へ隊員5名! 南東へは、副隊長! ツトム! サケル! 隊員1名! 真西には私一人で向かおう」
「ハイ‼」
一同が返事をする。
「コンパスは所持しているな⁉ それでは、散!」
隊は3方向に分かれ、進みだした。酷くぬかるんだ道無き道、草木生い茂る沼地を進む。
――隊が分かれてから2時間半後、南東組が目印の木のある場所へ戻ってきた。
「南東の端まで行ったけど特に変わった様子は無し。北東組と、スマシさんはまだ居ませんね」
主人公がこぼす。
「…………」
無言の身体。
「ほげェ――――」
相変わらず生気を失った状態の逃隠。
隊員が発言する。
「身体副隊長! ここは更に二手に分かれて、皆の後を追って行った方が……」
身体が答える。
「いや……二手に分かれる必要はない」
「!」
身体の言葉に虚を突かれる隊員。
「隊長は……爆破隊長はお強い。お一人で充分だ。問題は北東に向かった5名……何か、嫌な予感がする。ここにいる全員で、北東に向かうぞ……!」
「ハッ」
隊員は力強く返事をした。
――そこから1時間後、南東組は目印の木から北東の方角に、奥へ奥へと進んでいる。
と、身体が何かに気付く。
「……これは」
地面に落ちていた物を拾い上げる身体。コンパスである。辺りを見渡す。その周辺は、5つの水溜まりの様なものが点在しており、少しひらけた場所になっていた。
(あの水溜まり……臭うな……)
身体が警戒する。
「どうしたんですか? 副隊長」
主人公が後ろから顔を覗かせる。
「ツトム、それ以上前には……」
身体が主人公に注意を促した、その瞬間、
「バッシャアアアア」
「バシャアア」
「ドバシャアアア」
5つの水溜まりから5体のゾムビーが飛び出してきた。
「やはりか! 迎え撃つぞ」身体が身構える。一同、ゾムビーと対峙する。
「リジェクトォ!」
「ドシャァ」
主人公は向かって一番左端に居たゾムビーを撃破する。
「流石だ、ツトム。次も行くぞ!」
「ハイ!」
身体と主人公は会話を交わす。
「よし、次だ」
一歩踏み出す主人公。すると、
「ベチャ」
「え?」
踏み出した足に、違和感を覚える主人公。地面を見る。地面は主人公が思っていた以上にぬかるんでいた。
「わわっ」
踏み出した右足を引き上げようとする主人公。しかし、右足は地面にへばりついて離れない。
「このっ!」
左足で踏ん張り、右足を引っこ抜こうとする。が、踏み込んだ左足もまた、ぬかるんだ地面に足をついてしまう。
「ヤバい!」
みるみるうちにぬかるんだ地面に飲み込まれていく両足。
「くっ!」
必死の思いで腕だけはしっかりとした地面に触れることができた。
「フン!」
「バシャアア」
そうこうしているうちに身体は1体のゾムビーを、正拳突きで粉砕していた。
「タタタタタタタタタタ」
狩人の隊員もまた、装備していた銃器で向かって右端のゾムビーを射撃、ハチの巣にする。
「ふう、次だ」
「ガチャ」
隊員が次の標的に標準を合わせようとする。と、
「ベチャ」
「ん?」
主人公と同様、ぬかるんだ足場に、片足を引き込まれた。
「何だ……これは!」
完全にバランスを崩す隊員、片方の手を地面につく。
「ベチャ」
が、そこもぬかるんでおり、引き込まれてしまう。
「クッ……何たる不覚!」
身動きが取れなくなってしまう主人公と隊員。
「二人とも! 何をしているんだ! 早くゾムビー達を倒すぞ‼」
二人を叱咤する身体。ゾムビーがいる方向に振り返る。
「ベチャ」
「なっ⁉」
身体までもが、ぬかるみに足を取られた。
「グッ」
少し片足を動かそうとする身体。だが、余計に足を深く飲み込まれる。
(落ち着け、余り無暗に動かない方がいい。脱出するのは後でいい。今は敵を倒す事のみを考えろ)
ジッと目の前のゾムビーを見つめる身体。
「ゾ……ゾ……」
近寄ってくるゾムビー。
(1体程度、片足が無かろうと相手できる)
冷静に構える身体。迫り来るゾムビーが、体液を浴びせられる射程圏内に入った!




