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第十三節 苦戦

「何でだ⁉ 確かにリジェクトは命中した。他のゾムビーは倒せたのに!」


 困惑する主人公。


「ゾ? ……ゾゾ」


 背中にリジェクトの衝撃を感じたゾムビーは、振り返り、主人公を確認した。


「ゾ……」


 その後、再び逃隠の方を少し見たが、ゾムビーはぷいっと逃隠から視線を逸らし、主人公に標的を変えた。


(畜生、攻撃が効かないどころカ、相手にすらされてないのカ……)


 痛みを堪えながら、今ある状況を悔しがる逃隠。


「ゾ……ゾ……」


 不気味に主人公に近寄るゾムビー。主人公は思う。


(マズい、まだリジェクトが打てない。調子も悪いせいで、1発あたり15秒はかかる!)


 じりじりと忍び寄るゾムビー。


(こうなったら……! 回避の術で攻撃と体液を避けて時間を稼ぎながら戦ってやる!)


 覚悟を決める主人公。


「ゾム!」


 殴りかかってくるゾムビー。


「回避の術! 避け‼」


「ブン!」


 回避の術を使い、ゾムビーの拳を左に避ける主人公。ゾムビーの右手が空を切る。


「ゾム!」


 今度は左腕を振るうゾムビー。


「はっ!」


 再びゾムビーの拳を避け、今度は右へ跳ぶ主人公。刹那、主人公は思う。




(大丈夫だ。他のゾムビーよりもややスピードはあるけど、回避の術の前ではスローモーションだ!)




「ゾ!」


 再度ゾムビーが右腕を振るう。


「回転避け!」


 主人公は叫びながら右手の手袋でゾムビーの拳をいなす。と同時に右足を一歩斜め前へ踏み出す主人公。体を回転させ、ゾムビーの後ろを取る。




(今だ!)


「リジェクトォオオ‼」




 近距離でリジェクトを放つ主人公。しかし、




「ドムゥン」




 またしてもゾムビーは衝撃を吸収、破壊されない。


「そ……んな……」


 自信を喪失する主人公。


「ゾ‼」


 振り向いたゾムビーは主人公の腹に一撃を喰らわす。


「ゴッ」


「ぐあああ‼」


 吹き飛ばされる主人公。逃隠の隣まで飛んで行った。


「ジュウ――」


 主人公の学ランは、腹部が溶け始めている。


「うわあああ!」


 急いで学ランを脱ぎ捨ててTシャツ姿になる主人公。


「ジュウゥウウウ」


 投げ捨てられた学ランは殆ど溶けてしまった。


「よウ……ツトム……」


「!」


 仰向けで倒れている逃隠が主人公に話し掛ける。


「時間稼ギ、ありがとヨ……ダメージも大分、軽くなってきタ」


 むくっと起き上がる逃隠。


「さテ、ほいじゃア行きますカ」


「行くって……無理だよ……アイツは他のゾムビーとは違う。スーツによる攻撃も、リジェクトも効かないんだよ?」


 主人公はそう言って不安がる。逃隠が少し間をおいて口を開く。


「ツトム……俺ハ、全世界のゾムビーを駆逐すると声高に言っていたガ、本当はゾムビーが恐ろしくて仕方なかったんダ。だガ、身体副隊長に出会っテ、一緒に修行を積んだお陰デ、今はゾムビーと戦えるようになっタ。身体副隊長からハ、どんな時モ……どんな事にモ、恐れずに諦めない事を学んだんダ……今、この瞬間だってそうダ……絶対ニ……最後まで諦めるナ、ツトム…………行くぞォオオオ‼」


 走り出す逃隠。


「サケル君! 待って!」


 叫ぶ主人公。走りながら逃隠は言う。


「ツトム! 俺が時間を稼グ! お前は力を溜めテ、色々な方法でリジェクトを放つんダ! どんな方法でもいイ! 片っ端からやってくゾ‼」




「ダッ……ガッ! ガッ!」




 ゾムビーに飛びかかり、右拳、次いで左拳をぶつけていく逃隠。


「ゾ……ゾゾ‼」


 攻撃に対し、微動だにしないゾムビーが反撃する。右拳が飛んでくる。


「サッ」


 体を低くして避ける逃隠。


「喰らエ!」


 そこからアッパー。ゾムビーの顎にヒット。


「ゾ?」


 効いていない。


「ゾー‼」


 裏拳が飛んでくる。


「なんノ!」


「ガッ‼」


 スーツの部分である両腕でガードする逃隠。


「ズサー」


 少し飛ばされるが、両脚で持ちこたえながら着地する。ゾムビーと逃隠の攻防は続く。




 一方で、主人公。


(どんな方法でもいいから……そうだ! このゾムビーに対しては、背中側からの攻撃しかしてない。正面からの攻撃なら……何か変わるかも……!)


 走り出す主人公。ゾムビーの正面、リジェクトの射程圏内に入る。


「行くよ! サケル君!」


「待ってたゼ! ツトム!」


 阿吽の呼吸で横へ跳びながら移動し、ゾムビーの正面を主人公に向けさせる逃隠。


(行くぞ!)


「リジェクトォオオ‼」


 リジェクトを放つ主人公。ゾムビーの正面にヒットする。




「ドムゥンドムゥンドムゥン‼」




 背中側に当てた時とは明らかに違う反応を見せるゾムビー。


(やった! 効いてる!)安堵する主人公。




「ドムゥン……ドムン……ピタ……」




 先程とは違う反応を見せたものの、やはり衝撃を吸収するゾムビー。「そんな……」一転、絶望の表情を浮かべる主人公。




「まだダ‼」




 ゾムビーに飛びかかっていく逃隠。


「ツトム! 次の手を試セ! 次が打てるまデ、何秒ダ⁉」


 攻撃しながら逃隠が叫ぶ。


「きょ……今日は、15秒くらい! 調子も悪いんだ!」


 返す主人公。


「ヘッ! 15秒の時間稼ぎだナ。余裕だゼ‼」


 強気な逃隠。敵の攻撃を回避の術で避けつつ、殴打、蹴りを当てていく。一方で必死の主人公。




(考えろ……考えるんだ。他に、何か手は……)




「もうそろそろだゼ! ツトム‼ 行ケ‼」


 バッとゾムビーから離れる逃隠。


「(ええい! 一か八か……)リジェクト!」


 咄嗟に主人公は、ゾムビーの片足を狙い、リジェクトを放つ。




「バシュッ‼」




 ゾムビーの片足は弾け飛んだ。


「やった! 今度こそ、効いた!」


「よっしゃア!」


 歓喜する二人。


「ズズズ」


 崩れ落ちるゾムビー。


「行くゾ! 畳みかけるんダ! ツトム」


 逃隠は言う。しかし、ゾムビーの様子がおかしい。

 



「ゾゾ――――――‼」




 しばらくうずくまっていたが、急に叫び出すゾムビー。


「何だ⁉」


「ゾ……ゾ‼」




「ボコボコボコボコ」




 ゾムビーの片足の欠けた部分から泡が吹き出るように細胞が現れ始めた。




「⁉」




「ゾ……ゾ――‼」


「ボコボコボコボコ……シュ――」


 増えだした細胞は、完全な足の形となって露わとなった。足からは煙が立ち込めている。


「う……うそ……でしょ……?」


 呆然と立ち尽くす主人公。


「チィ! ……ツトム! まだダ‼ 絶対に諦めるナ‼」


 またしても果敢にゾムビーに立ち向っていく逃隠。




(無理だよ……サケル君……背中側への攻撃も正面への攻撃も効かない。足への攻撃は効いたけど……回復されてしまう……)




 完全に希望を見失う主人公。


「ガッ! ガッ!」


 攻撃の手を止めない逃隠。ゾムビーの拳を避け、地面に着地する。


「スタッ……ガク」


 と、下半身の力が抜ける。


(⁉ しまっタ! もう体力ガ……)


 跪く逃隠。


「ゾム……ゾム……」


 ゾムビーが口一杯に体液を溜め込む。


(やばイ、体液カ⁉)


「ゾゾゾ‼」


 口から体液を吐こうと、目一杯顔を上に上げるゾムビー。




「サケルくぅううううん‼‼‼」

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