第五十八話「新たな決意」
屋敷の一室で目覚めてから数日が経過する。
体調が回復し、手続きも終えたのでフィッツロイ家の別宅を去り、私達はエストフルト第一兵舎に全員で帰還することになった。
背中の“翼”がどうなるか心配だったが、ラピスの言葉通り、目覚めてから一日も経たず元の姿に戻ることが出来きた。取り敢えずは一安心だ。カネサダは“逆に言えば意識が回復した状態でも元に戻るのに一日を要した”と警告していたが。
ルカ、カエデ、十郎、ジュードに別れの挨拶を告げ、私達は帰りの馬車を待っていた。
その間、今朝飛び込んで来た衝撃的なニュースについて言及する。
「マーサがアメリア隊長に殺害されたらしいですね」
「……らしいな」
私が話しかけた相手はラピスだった。
「随分酷い殺され方だったと聞く」
そう述べるラピスの視線がやや離れた場所に佇むマリアに向く。
魂が抜けたように呆然と突っ立つマリア。姉の死を知らされ、心の整理が出来ないでいるのかも知れない。
「相当恨んでいましたからね、アメリア隊長」
マーサがアメリアに惨殺されたのは昨夜の事。その事件を知らされ、衝撃とは別に「やはり、こうなってしまったか」と納得してしまう自分がいた。アメリアが見せたマーサへの恨みは相当なもので、今すぐにでも殺しに向かいそうな気迫があったのを覚えていたからだ。
「アメリア隊長、どうなりますかね。ベクスヒル本家長女を殺害して」
「さあな。既に逮捕されたのは知っているが……厳罰が下されるのかも知れないし……あるいは」
「あるいは?」
「タルボット家も騎士の名家だ。お咎めなしの可能性だってあり得る……マーサがそうなっていたようにな」
吐き捨てるようにラピスは言う。
「騎士団などそのような場所だ」
アメリアの処遇が今後どうなるのかは分からないが、もし彼女が何の罪にも問われることが無かったのだとしたら、それは皮肉な話だと思った。裁かれる事のなかったマーサの罪。そして彼女に対する殺人もまた、正当に裁かれることなく、騎士団により闇に葬り去られるなんて。
「話は変わるが、ミシェル。エリザベス王女殿下とはあの後どうなった?」
「……」
尋ねるラピス。私は黙り込んで、エリザベス王女____エリーと二人きりで話し合った時のことを思い出す。
目が覚めた日の翌日。晩の暗がり中、私と彼女は屋敷の小さな一室を借りてお話をした。
開口一番____
「エリーとお呼びください」
そう告げるエリザベス王女に私は目を丸くした。
「私の事はエリーとお呼びください、ミシェル様」
言葉を重ねるエリザベス王女。私は頬を掻き、躊躇いがちに口を開いた。
「分かりました……エリー」
「恭しい態度も不要です。どうか、ミシェル様……以前までと変わりなく私と接しては頂けませんか」
エリザベス王女____いや、エリーの瞳に浮かぶ涙を見つけ、私は慌てて彼女の手を握った。
「ご、ごめん……エリー……。でも……分かるでしょ? まだ心の整理が付かないんだ。貴方の正体が第一王女だったなんて」
「……ええ」
申し訳なさそうに顔を俯かせるエリー。
「ミシェル様には謝らなければなりませんね。身分を隠していた事。悪意はなかったんです。ただ私は……ミシェル様と普通のお友達でいたかった……」
「……エリー」
私達は親友同士でありながら、互いに隠し事を持っていた。だが、それは相手を騙すだとか、傷付けるような意図があっての事ではない。
「実はさ……私、貴方に伝えないといけない事があるんだ」
「伝えないといけない事ですか?」
「うん……私の秘密を」
この際だから、覚悟を決める。明かされたエリーの秘密。だから私も、自身の秘密を明かす。
私の性別に関して、その真実をエリーに伝えるのだ。
「私、実は____」
「知っています」
私の言葉を制して、エリーが告げる。
「知っています、ミシェル様の秘密」
エリーの言葉に私の頭の中が真っ白になる。知っている? 私の秘密を?
「探りを入れていた訳ではないのですが……その……さすがにミシェル様は有名人で……“ドンカスターの白銀の薔薇”の話は私の耳に入って来ました」
気不味そうにエリーは頬を掻く。
「勘当されたドンカスター家の一人娘……いえ、娘ではなく……ミシェル様は____男性なんですよね」
そっと、エリーの視線が私の身体を上下した。
しばしの沈黙。私ははっとなって尋ねる。
「いつから? いつ、エリーは私の秘密を知ったの?」
「ミシェル様が国家反逆罪の濡れ衣を着せられた折にです。ミシェル様の事が王宮内でも話題に上がり、私はその詳しい出自を知りました」
当然と言えば当然だが、これだけの大事になれば、私に関する情報も出回るというもの。さすがにエリーにも秘密がバレてしまう。
「……エリーはさ」
少女から少しだけ距離を取り、私は震える声で尋ねる。
「私の事……気持ち悪いとか……思わない?」
心臓の鼓動が速くなり、息も苦しくなる。全身から嫌な汗が出てきて、私は自身の額を拭った。
エリーが私のことをどう思っているのか。彼女の答え如何によっては、私は立ち直れなくなるかもしれない。
男性でありながら女性の振りをして、騎士団に紛れ込む。人によっては不気味であると感じるだろう。
裁判の判決を待つ被告人のようにじっとエリーの顔を見つめる私に____
「気持ち悪いなど、とんでもありません。ミシェル様はミシェル様です」
安心させるように優しく微笑み、私の手を握るエリー。
「本当の性別など関係ないです。確かに、初めて知った時には動揺しましたが……だからと言って、私達が共に過ごした時間が嘘になるなんてことはありません。ミシェル様が女性であろうが男性であろうが、私にとって、ミシェル様は大切な親友です」
エリーの手の温かさを感じながら、私は彼女の言葉に耳を傾ける。
「だから、私はこれまで通りミシェル様に接しますし……ミシェル様にもこれまで通り私に接して頂きたいと、そう願っています」
「……エリー」
私は何を及び腰になっていたのだろう。分かっていたではないか。エリーがそんな人間でないことぐらい。本当の性別を知った程度で、人の事を嫌いになったりしないことぐらい。
それに比べ私は……エリーの正体を知るや、よそよそしい態度を。
私は臆病者だ。
「ごめん、エリー。私が間違ってた。エリーはエリーだ。例え貴方の正体がエリザベス王女なのだとしても、私にとって大切な親友……それが全てだ」
謝罪し、懺悔するようにエリーの手を握り返す。
「ええ、改めてよろしくお願いします、ミシェル様」
「うん、よろしく、エリー」
私の言葉にエリーは安心するように微笑んだ。それから、思い出したように顔を赤らめ、私から身を引く。
「まあ、それはそうと……やはり意識してしまいますね……その……同年代の男の子と一緒にいるのは」
「う、うん」
急にもじもじとし出すエリー。彼女の態度に私の方も妙な気持ちになってしまう。
「ミシェル様は……私の事……異性として意識なさったりされるのですか?」
「え? えーと……」
突然どうした?
答え辛い質問だ。異性として意識? ないと言えば……それは嘘になるのだが……。
私は咳払いをして____別の話題を持ち出し、話を逸らすことに決めた。
「それよりもさ、エリーはどうして“エリザ”として身分を隠してまで、街に繰り出してたの?」
「え? ああ____」
虚を突かれたエリーが一拍置いて語り出す。
「市民の視線で市民の生活を観察したかったのです。王女として生まれたからには、国家と国民のために身を捧げる義務があると私は思っています。そのためにはまず、民草の事を直に知らねばならないと感じました」
意外、という訳ではないのだが思った以上に真面目な返答が返って来た。王宮の生活が窮屈で市街に逃げ出したとでも言うのかと予測していたのだが。
「“エリザ”として私は多くのものを目にしてきました。民草の生活、喜び、不満……しかし、何より目に付いたのは____騎士団の横暴です」
毅然と言い放つエリー。
「騎士である事を笠に着て市民に暴力を振るう者、理不尽な難癖をつけて罰金をせしめる者。残念な事に、その様な輩が一定数存在します。とても許しがたい事です」
騎士団の団員には貴族の出身者が多く、そう言った生まれの者の中には平民を見下し、理不尽な行いをする者もいる。私も何度かその現場を目撃したことがあった。
「ミシェル様、私はこのままではいけないと……騎士団をこのまま野放しにしておいてはいけないと、そう思っております」
義憤を露わにエリーは述べる。
「この国には……いえ、この世界には騎士団に対抗する組織が必要です。ミシェル様、それでここからが本題なのですが、私はかねてよりその準備を整えてきました」
「準備?」
「個人や集団の不正や犯罪を監視して取り締まる、魔導乙女騎士団と同等以上の権限と権威を有する組織。私は近いうちにそれを創立するつもりです。その名も____リントブルミア公安団」
「……リントブルミア公安団」
エリーの口から出たその単語を復唱する私。
「魔導乙女騎士団と同等以上の権限と権威って……そんな組織を作る事が可能なの?」
「可能です」
力強く断言するエリー。
「魔導乙女騎士団に力を与えるもの、その最たるが騎士団団長が持つ竜核です。ならば、作れば良いだけの事。魔導乙女騎士団団長が持つ竜核に勝る新たな竜核を。それを組織のトップ、公安団団長に持たせます」
それはこの国に四つ目となる竜核を作るという事なのだろう。
「竜核を新たに作るって……竜神教会はそれを認めるのかな?」
「私は竜核を持つ者なので、下位の竜核を作り出す権限を与えられています。そして、今回の一件でその大義を得ました。騎士団に蔓延る不正の一端が暴かれた今、その是正の必要性が認められる筈です。竜核を新たに作り出す理由としては十分かと」
説明する中、エリーは私の瞳をじっと見つめる。
「リントブルミア公安団。その公安団団長なのですが……ミシェル様に任せたいと、私は考えています」
「公安団団長……え……私……?」
衝撃の発言に私の身体は硬直する。
「第四の竜核を作り出し、ミシェル様にはその持ち主になって頂きたいかと」
「……本気で言ってるの?」
「勿論です」
冗談のような話だ。エリーは私に騎士団団長以上の権力を授けようとしている。実家に勘当されたみなしごの私に。
「騎士団に対抗するための組織。そのトップには心から信頼できる者を据えたいのです。ミシェル様、お願いできますか?」
「……い、いや……そんな……私なんかで良いの? 身分的にも……組織の運営の事とか、私あんまり分かんないし」
狼狽える私にエリーは諭すように告げる。
「諸々のしがらみは私が何とか致します。組織の運営の事も学んでいけば良いだけの事。ミシェル様は騎士学校時代、座学でも優秀な成績を修められていたと窺っています。きっと大丈夫な筈です」
「きっと大丈夫って……」
「それに、私は先程、近いうちに公安団を創立すると言いましたが、まずはその前身となる小規模な組織を作るところから始めようと思っています」
「小規模な組織って?」
尋ねると、エリーは傍らから一枚の紙を掴み、私に手渡す。
「リントブルミア魔導乙女騎士団公安部公安試作隊……?」
長々と綴られたその名前を口にする私。
「公安団の前身となる組織。まずは騎士団の内部に公安部なるものを創設します。私が部長を務め、その実働部隊となる公安試作隊の隊長にミシェル様を任命したいと思っています」
「……私が隊長?」
公安団団長よりは現実的な話だが、それでも一部隊の隊長を私に任せるとは。
「公安部として経験と実績を積み重ね、いずれは公安団として騎士団と並び立つ。それが私の中での計画です」
可愛らし気な顔に大きな野望を隠すエリーは私の肩に手を置き____
「ミシェル様、返答はまた後程伺います。それまでにどうか御一考を。良い返事を期待しています。ああ、それと、この話はまだ他言無用でお願いしますね」
私とエリーの会話はそれでお開きとなる。翌日、彼女は王宮に帰還し、私は一人、手渡された騎士団公安部に関する要旨に目を通し、悶々とするのであった。
「おい、ミシェル。どうした急にぼうっとして。王女殿下と何かあったのか」
「え、ああ」
回想に耽っていたようだ。ラピスの呼び掛けで、私は現実に意識を戻す。
「王女殿下……エリーとは元の関係に戻れました。彼女が一国の王女であろうと、私の親友である事に変わりはありません」
「……そうか。それは良かったな」
「はい」
頷く私は、それから____
「あのラピス副隊長……仮に、ですよ。仮に今すぐ、竜核が手に入るなんて事があったら……ラピス副隊長はどうします?」
「竜核だと?」
首を傾げるラピス。
「それはつまり、今すぐ騎士団団長になれるとしたら、という事か?」
「あ、いや……そう言う訳じゃ……えーと」
説明しようとして、私は口を噤む。エリーからは公安団の事は他言無用とされていた。だから、今の時点でラピスにその相談は出来ない。
「どうしたんだ、ミシェル」
「……すみません、何でもありません」
「……?」
私は誤魔化すようにラピスから離れ、何とはなしに一番近くにいたマリアの元へと向かった。
「気分はどう、マリア?」
「……ミシェルさん」
心ここに非ずと言った様子で私を見つめるマリア。前髪を弄り、小さな溜息を吐いた。
「お姉様が殺害されたって……本当ですかしら」
「……」
「惨い殺され方だったと伺いました。アメリアさんに身体をバラバラにされたと。そう言えば、彼女、相当頭に来ていましたわね」
言葉の節々から生気が感じられない。何処か他人事のようにマリアはポツポツと言葉を並べていた。
「マリア、大丈夫?」
「……さあ……どうなんでしょうか」
私から視線を外し、空を見上げるマリア。
「……私、悲しんでいるのでしょうか? お姉様は、有り体に言えば、良い人間でも良い姉でもありませんでした。私、彼女の事は怖かったし、大嫌いでしたわ」
呆然と紡がれるマリアの言葉を私はただじっと聞いていた。
「でも____身近な者の死と言うのは……人間の死と言うのは……どうして、こんなにも心を空虚にさせるのでしょうか」
目を瞑るマリアは、それから眠ったようにぴくりとも動かなくなった。もしかしたら、思い起こしているのかも知れない。マーサとの____姉との思い出を。それは決して楽しいものでも、良いものでもなかった筈だ。それでも、それは一人の人間との記憶であり、簡単に捨て置くことのできないものなのだろう。
「……はあ____よしッ」
沈黙を続けていたマリアだが、かっと目を見開いて、自身の頬を強く叩いた。
「いつまでもボケっとしていられませんわ。私には為すべきことがありますもの」
先程までのしんみりとした空気を吹き飛ばすように、マリアは気合を入れて述べる。
「……為すべきこと?」
「ベクスヒル家の調査ですわ。お姉様とオークの結託はベクスヒル家経由のもの。全ての元凶はベクスヒル家そのものにあります。私には義務がありますわ。ベクスヒル家が隠す一族の秘密を暴き、世に明かす。今回の一件は言ってしまえば氷山の一角に過ぎません」
決意を瞳に宿し、マリアは告げた。
「ベクスヒル家とオークの繋がりか……そう言えばさ」
私はふと、とある事を思い出し、マリアに尋ねてみる。
「ベクスヒル家って魔物研究の第一人者なんだよね」
「ええ、そうですけど」
「じゃあさ」
私の脳裏に倉庫街、そして森に現れたアサルトウルフの姿が浮かぶ。
「魔物の変異種を作る研究とかってしてたりするのかな」
「魔物の変異種ですか? ……さあ」
首を傾げたマリアはそれから____
「どうして、そのような事を?」
「……考えたんだ」
私は落ち着いた口調で語り出す。あくまでも推論の域を出ない話なのだが____
「今回、マーサはオークを利用してアメリアを陥れようとした訳だけど……もしかしたら、これが彼女の最初の計画じゃなかった可能性だってある訳だよね」
「どういう意味ですの?」
「今回の一件以前にも、マーサはアメリアを陥れようと画策して……失敗したんだ。本当はそっちの計画でアメリアを仕留めるつもりだったのに、止む無くオークの手を借りる手段を選んだ。で、その計画が何かって言うと____森に出現した巨大なアサルトウルフ」
私の言葉にマリアは目を丸くした。
「覚えてるよね? 私達アメリア隊は国有財産を売却するための馬車の護衛任務に就いていた。当初は西の街エイトナに向かうためコナン河に架かる橋を渡る予定だったんだけど、魔物による襲撃で倒壊してて、迂回することに。その際、大森林で巨大なアサルトウルフに襲われて、私達は全滅の危機に瀕した。あれは全部、マーサが計画したことなんだ」
倒壊した橋の調査にはマリア含むマーサ隊の面々が出向いていたのを覚えている。
「あの時にも皆の前で言ったんだけど、橋は魔物の襲撃で破壊された訳じゃない。発破で……つまり、人の手により破壊させられていた。今なら確信をもって言える。あの橋はマーサ……いや、マーサ隊の騎士達により破壊されたんだ」
私は己の推測をまとめる。
「マーサの計画はこうだ。コナン河に架かる橋を破壊し、アメリア隊に迂回経路を取らせる。そして、その際に通過することになる大森林で巨大なアサルトウルフをけしかけ、アメリア含むアメリア隊の皆を殺害する。森に入る際、橋の方から赤い狼煙が見えたんだけど、多分マーサが合図を送ってたんだ。無事、アメリア達がそっちに向かったから、アサルトウルフをけしかけろって」
私の推測にマリアは考え込む。
「あの日の事はよく覚えていますわ。巨大なアサルトウルフの襲撃により、貴方達は全滅の危機に陥った。そして……あの日の朝、確かにマーサ隊の皆の様子がおかしかった」
見つめ合う私とマリア。
「それで、話は戻るんだけど。もしこの推測が正しければ……マーサは……いや、ベクスヒル家は巨大なアサルトウルフを作り出し、何らかの方法で操る術を持っていたと考えられる。倉庫街に現れたアサルトウルフもきっと……。ベクスヒル家は魔物の変異種を作りだしているんだ。一体全体、何のためなのか分からないけど」
「……ベクスヒル家が」
眉間にしわを寄せ、マリアは唸る。
「……どうやら、お姉様の一件は本当に氷山の一角なのかも知れませんわね」
額の汗を拭うマリア。
「ミシェルさん、ベクスヒル家の事、兎に角、調査してみますわ。オークとの繋がりだけではありません。きっと魔物の変異種のことも……一族が関係していると思われます」
運命なのかも知れない。
私がカネサダに出会ったあの日。あの瞬間から、私の闘いは始まっていた。
倉庫街に現れた一匹のアサルトウルフ。あの不気味な変異種は、きっと大きな闘いの先触れだったのだ。
今回、私はマーサとの闘いに勝利した。
しかし、まだ“本当の闘い”には勝利していない。
カネサダを手に取ったあの日から始まった闘いには。
私の復讐の刃は、トカゲの尻尾を断ち斬っただけで、敵の懐には掠りもしていないのだ。
だが、必ず勝って見せる。私の敵を断ち斬ってやる。
兵舎への帰還の馬車を待つ中、私は新たな決意をするのであった。
私は____“騎士団を壊す者”になる。
第二幕・完