第5章〜相談結果〜
更新が遅くなってしまい、申し訳ございません。今回は、前回ファンティーヌとヴァンアティレーネが話し合って決めた内容をジュリーネルティアに告げる回です。
誤字や脱字があった場合、指摘してくださると有難いです。
「ジュリーネルティア。先日の相談について話があるの。今空いているかしら?」
教材を抱えながらフランチェル学院の廊下を歩いていると、ヴァンアティレーネ様にお声をかけられました。そのことに対し、周りの学院生たちがざわついています。…どう対応すべきかしらね…。
「なんでしょうか。ヴァンアティレーネ様。」
ここはそつなく対応すべきでしょうか?そつなく対応するのであれば、お祖母様とお呼びする方が正しかったかもしれません。ですが、ここはあくまでも公の場ですもの。気軽にお祖母様とお呼びするわけにはいきませんわ。
「先日の相談について、ファンティーヌ様とお話ししてきましたの。私の部屋までついてきてちょうだい。」
…ヴァンアティレーネ様の居室。それは、ここ、フランチェリナに建っている私の実家にあります。この間相談に伺った際にも、そちらに伺いましたもの。
「かしこまりました。ヴァンアティレーネ様。今からヴァンアティレーネ様の居室へと伺えばよろしいでしょうか?」
ヴァンアティレーネ様は柔らかく微笑み、軽く頷かれました。
「えぇ。今から来てちょうだい。それほど急ぐ話ではないけれど、結果をすぐに知りたいのではなくて?」
私は少しばかりの間逡巡し、返答致しました。
「かしこまりました。私としても、結果は少しでも早く知りたいですわ。」
するとヴァンアティレーネ様は、そっと瞳を伏せました。私とよく似た白銀のまつげが、透き通った銀色の瞳を半ばまで覆います。…儚いとは、ヴァンアティレーネ様のような方のことを示すのですね…。
「やはりそう言うと思っていましたわ。さぁ、こちらへいらっしゃい。」
「はい。かしこまりました。ヴァンアティレーネ様。」
…執務のお話…どうなるか不安ですわ。ですがこれも、今よりもより良いティンディーヌ帝国にするために言ったことですものね…。
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「ジュリーネルティア。単刀直入に言いますわね。貴女が今年から執務をすることは…。」
…ごくり。思わず息を詰めてしまいますわ…。
「…そんなに気張らなくても大丈夫よ。ジュリーネルティア。…貴女が今年から執務をすることは、特例という形で認められましたわ。」
ほぅ…と、私は思わずため息をつきました。
「ジュリーネルティア。…ため息をついてはなりませんわよ。けれど…今日ばっかりは許しますわ。日頃から努力していることはよく知っていますもの。それに今は、祖母と呼んでも構いませんわ。」
「お祖母様…。ありがとう…ございます。もしや、お祖母様がファンティーヌ様を説得してくださったのでしょうか…?だとしたら、とても申し訳ないです…。」
私がそう言うと、お祖母様はゆっくりと首を横に振りました。
「いいえ。違うわよ。貴女の頑張りが…貴女の能力が、ファンティーヌの心を変えたの。…意味、分かるかしら?」
私は、はっと目を瞠りました。
「もしや…。私が今までしてきた事が認められた…ということでしょうか?お祖母様。」
「そうよ。良かったわね。ジュリーネルティア…。」
お祖母様はそう仰ると、私の頭を撫でて下さいました。…そう…。まるで、私が幼い頃のように…。
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お祖母様は私の髪型を崩さず、丁寧な手つきで私の頭を撫でてくださった後、こう言いました。
「ジュリーネルティア。貴女はよく頑張っているわ。」
……このように、手放しに褒められたのはいつぶりなのでしょうか…?私のお母様はとても厳格な方ですから、成果を出さねば認めてくださらないのです。最近は、次期帝王に内定したため以前よりは優しく接してくださいますが…。
「ジュリーネルティア。もしや、ここ最近誰にも褒められていないのですか?」
私は、ひゅっと息を呑みました。…何故、見抜かれてしまったのでしょうか?必死に考えます。
「いえね…ジュリーネルティアはまるで、昔を懐かしむような表情をしていたでしょう?気づくに決まっているじゃない。」
……お祖母様…。思わず涙がこみ上げそうになるのを必死で堪えます。…淑女が人目のあるところで泣くなど、言語道断ですもの。
「涙を無理に堪えずともいいのよ。この場には、貴女と私しかいませんもの。…ジュリーネルティア。私の、大事な大事な孫娘……。」
最後の一言で、涙腺がとうとう決壊してしまったようです…。私はお祖母様にしがみつくと、まるで幼子のように泣きじゃくりました。
「…お祖母様っ…!!…っ…ひっく……ひっく……辛…かったの…!お母様は厳…厳しくて、お祖母様は…会えなかった…から……お父様は入り婿だからと、お母様に遠慮して……何も言ってくださらなくって……寂し…かったのです……。」
私は、今までずっと感じていたこと、思っていたことをお祖母様に告げました。
「そうだったのね…。それにしても何故、あの子はあんなにも厳格な性格なのかしらねぇ…。厳しくしすぎるのは寧ろ逆効果ですのに…。」
「分からないです…。でも、フィーティルンは、そんなお母様にとても懐いていますのよ…?それこそ疑問なのですが…。」
「そうねぇ。私にも分かりませんが…ジュリーネルティア。フィーティルンは、どんな性格をしていますか?」
私は少し考え込んでしまった。どうして?と言われたとしたらきっと、フィーティルンとはあまり関わりがないからだ、と言うだろう。
「フィーティルンはどちらかと言うと厳格な性格をしていますね。その性格を買われて、次期学園長に決定しているのでしょうし…。」
「そうなのですね。だからこそ、ティリーネミュリナに懐いたのかもしれませんよ。」
「つまり…性格がよく似ていたから懐きやすかったということでしょうか?」
「えぇ。その可能性は非常に高いわね。だって、ジュリーネルティア自身は、ティリーネミュリナのことが苦手なのでしょう?それに、フィーティルンも苦手だったりしないかしら?」
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