第4章〜2人の話〜
今回は、ジュリーネルティアのはとこにあたる子が出てきます。フィリーアーツェルという名前です。
誤字・脱字、違和感などがございましたら、遠慮なく言ってくださいませ。
コン、コン、コン。私はファンティーヌのいる部屋の扉をノック致しました。…ついさっき、ジュリーネルティアが相談してきた事を伝えるために。
「…誰なのです?名を名乗ってから入ってくださいませ。」
ファンティーヌの声の後、私は名乗ります。これもまた、礼儀作法なのです。
「ファンティーヌ様。ヴァンアティレーネですわ。内密のお話があって参りました。」
「…あなた達は、私がいいと言うまで入ってきてはなりません。お姉様と内密の話をするのですから。」
ファンティーヌの声が聞こえてきます。…公の場であっても、ファンティーヌは私に、妹として接しますから…。
「お姉様。他の方は退出させました。どうぞお入りくださいませ。」
私はふっと微笑むと、
「分かりましたわ。ファンティーヌ。では、失礼致しますわね。」
と言い、木製の扉を開けました。
「ようこそおいでくださいました。お姉様。内密のお話とは何でしょうか?」
ファンティーヌはそう言って、幼い頃の面影の残る柔らかな笑みを浮かべました。
「ジュリーネルティアから受けた相談なのですけれど、今年からでもあの子に執務をさせたらどうかしら?」
ファンティーヌはそっと目を伏せ、
「ですが…それは法を破る事になりますわ…」
と言いました。
…それは百も承知ですわ。
「それに関しては、ジュリーネルティアの優秀さを示せば良いのではないか、と考えています。あの子はとても賢く、飲み込みも早いのですから。」
ファンティーヌは微かに目を瞠りました。…なんて珍しいこと。
「お姉様の孫だから…ですか?熱心なのは…。」
…身贔屓は致しませんよ。
「いいえ。違いますわよ。あの子の能力をよく知っているのは確かですが、私が身贔屓しないことは貴女が一番よく知っているのではなくて?」
ファンティーヌは少しばかり考え込み、
「確かに、お姉様は身贔屓しませんわね。…特例で、と言うことならば可能かと。」
と、凛とした光を宿した瞳でそう言いました。
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コン、コン、コン。と、木製の扉をノックする音が聞こえました。…誰なのでしょうか?
「誰なのです?名を名乗ってから入ってくださいませ。」
これは、この国で基本となる礼儀作法です。親子であっても、人の部屋に入る時はこのやり取りを致します。
「ファンティーヌ様。ヴァンアティレーネですわ。内密のお話があって参りました。」
…お姉様との内密のお話?どのようなことなのでしょうか?…もしや、ジュリーネルティアの事についてかしら?ならば、ここにいる者達を退室させねばなりませんわね。
「…あなた達は、私がいいと言うまで入ってきてはなりません。お姉様と内密の話をするのですから。」
私はそう言って使用人達を専用の出入り口から外に出てもらうと、内側から鍵をかけました。…これでもう大丈夫です。
「お姉様。他の方は退出させました。どうぞお入りくださいませ。」
私は扉の向こう側に向かってそう告げました。するとお姉様は、
「分かりましたわ。ファンティーヌ。では、失礼致しますわね。」
と言って、私の目の前にある扉を開きました。すっと息を吸います。
「ようこそおいでくださいました。お姉様。内密のお話とは何でしょうか?」
僅かばかり笑みを浮かべて聞くと、
「ジュリーネルティアから受けた相談なのですけれど、今年からでもあの子に執務をさせたらどうかしら?」
と言いました。…執務…?今年から…ですか?成人は19歳で、執務が行えるのは最低でも18歳からですのに…?
私はそっと目を伏せ、こう告げます。
「ですが…それは法を破る事になりますわ…。」
と。するとお姉様は、ごくごく当然の事のように、
「それに関しては、ジュリーネルティアの優秀さを示せば良いのではないか、と考えています。あの子はとても賢く、飲み込みも早いのですから。」
と言い放ちました。…賢いのは、私自身もよく知っています。それにしても、お姉様がこの様に私を説得しようとしているのは珍しいですわね。そう思ったのもあり、私は微かに目を瞠りました。
「お姉様の孫だから…ですか?熱心なのは…。」
思わず口からこぼれてしまった言葉は、今、私が思っている事をそのまま形にしたかの様に思えました。…お姉様はジュリーネルティアを溺愛していますものね。
ですがお姉様は否定のお言葉を言われました。
「いいえ。違いますわよ。あの子の能力をよく知っているのは確かですが、私が身贔屓しないことは貴女が一番よく知っているのではなくて?」
と。…確かに知っていますわ。ですが、孫は可愛いでしょう…?私だって、フィリーアーツェルの事はとても可愛いのですから。でも…事実ですもの。身贔屓をしないお姉様がこれ程までに認めている能力…今から伸ばす事が最良の手段ですわ。そう決心し、告げました。
「確かに、お姉様は身贔屓しませんわね。…特例で、と言うことならば可能かと。」
と。
ここまで読んでいただきありがとうございます。いかがだったでしょうか?面白いと思っていただけていれば幸いです。
また、今回は、前半はヴァンアティレーネ視点、後半はファンティーヌ視点で書きました。