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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第四章 激甚の島
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第二十三話 こっから

俺は全速力で駆け出す。龍の死体を乗り越え、女性を跨ぎ疾走する。大きく開いた扉の中へ踏み入る。そこでは惨劇が繰り広げられていた。



『さて、邪魔者も排除した。貴様らもここで死ね』



龍帝と思われし巨大な龍が右手を振り上げた。ヘリスが何を思ったのか、いやミールを助ける為にミールを左に突き飛ばした。

脳も思考も完全に停止し、体だけが何の指令もなく動き始めた。


世界がスローモーションになる。ヘリスがゆっくりと目を瞑り、龍帝の爪がコマ送りとなって落ちて━━━━━



ズバッと言う音と共に俺の左腕が吹き飛んだ。左腕はそのまま地面にワンバンして上に飛んで行く。押し飛ばされたヘリスの元へと綺麗に飛んで行き胸に収まった。



「悪いヘリス。その手、少しの間持っていてくれないか?」



鮮血が千切れた場所から止めどなく流れ、痛みが何重にも重なって波のように襲って来る。身体中の骨を折られたり、腕吹き飛ばされたり……いい加減平和な日常を送りたいものだ。



「ごめんな、助けるのが遅くなって。でも、安心してくれ。お前は改変者として俺が守る」



俺はそう宣言し、龍帝の方へ向き直る。視界の端でヴァンらしき大きな犬が寝転んでいるのがわかる。多分無理をしたのだろう。ミールとヘリスは多分大丈夫だろう。何とか全員死んではいない。あとは俺がやるのみ。



「大神 ライだ、龍帝」


「今日はえらく来客が多い日だな。今度は誰だ?我に楯突くとはいい度胸だな」


「言ってろ、邪智暴虐の王め。その胸に風穴開けてやろうじゃねぇか!」



俺はハクロウを取り出し、龍帝の後ろの壁に一発、龍帝に一発撃ち込む。団長にやった魔法が帝にはどれだけ通じるか。答えはあまりにも簡単だった。



「小癪な」



龍帝は魔法弾を手で叩き潰した。が、魔法は触れることによって発動する。雷の黄色い線が龍帝を通して一直線に走り去る。龍帝はまるで蚊に刺されただけのように何もなく終わった。



「バケモノかよ……」


「右手一本のお前でなんになる?」



仕方ない。ここまで家臣と王に差があるとは思ってもいなかった。



「━━━━作戦βで行こう。ヴァン!」


「瀕死のペットにまだ働けと言うか」



ライは服の中から一つのペンダントを取り出す。倒れていたケルベロスはゆっくりと起き上がり、ヘリスとミールを咥えて颯爽と部屋から出て行った。ヴァンが部屋の外へ出た瞬間、扉の場所に魔法が張られた。



「さて、龍帝とやら。こっからは『俺達』が相手だ。覚悟しやがれ!」


「羽虫如きが」


「改変《Alteration 》自己強化」



自分の足元に魔法弾を放ち、右に大きく飛ぶ。飛んだ方向の壁に新たな魔法弾を放ち、体を反転させ壁を思いっきり蹴る。瞬間でレボルバーを回し弾を回す。高速で移動しながら龍帝に確実に弾丸を当てて行く。



「改変した所で貴様の魔法はただの猿真似。極める事すらもできない。そんな奴の魔法で我が屈するとでも思っていたのか?」


「俺の魔法はただの猿真似とは違うぜ?俺の魔法は、近代兵器だ」



今の俺の体は脳がライで体が雷の状態となっている。人間と言う種族の頂点に達せる体に、感度良好の不信感を持つ精神。隙など一切見せない上、他人の行動には敏感になる。いくら龍帝が最強の龍であろうと物理限界のスピードで動かれたら攻撃が当たる筈がない。だが、それでも帝相手だとただの撹乱に過ぎない。だから、その為の二一世紀兵器だ。



「逃げてばかりか?」


「逃げる?俺が?んなもん男がサシの戦いで逃げるわけねぇだろ!これで、王手だ!!」



龍帝の前に着地し、ハクロウを向ける。龍帝には俺の魔法を感知する事はできるが、何をしようとしているのかはわからない。なぜなら、見た事も聞いた事も無いから。



「改変《Alteration 》電磁投射砲!」



引き金を引く。ハクロウの銃口から出たたった十グラム弱の鉛玉は物理の力を経て、約8km/sの速さに至る。



「現代兵器ナメるなよ?」



龍帝の左右に二本の雷の線が生まれ、そのど真ん中を弾丸が通る瞬間、弾丸の速さは文字通り桁違いに変化した。そして真っ直ぐ龍帝の元へ轟音を立てながら発射される。



「笑わせるな」



発射されたと同時に炎の壁が龍帝の前に立ち上がり、減速し威力が落ちる。だが、元々の力のお陰で龍帝の元までは行ったが、長い尻尾で叩き潰された。その長い尾は弾丸を下敷きのように伸ばした後、ライの元へと襲い掛かった。防ごうにも、逃げようにも時間が足りない。ライはそのまま真っ直ぐ壁に叩き飛ばされた。



「ガフッッ!!」


「貴様のような下等種族が我に勝てるとでも思っていたのか?魔法の改変ができるからと勝手に有頂天になり、結局ただの傲慢で終わる。惨めだな、改変者よ」



一々うるさいな。近所のじじいかよ。はぁ……あいつらちゃんと逃げれたかな?ヴァンにちゃんと言ってるし問題ないか。



俺は壁から自力で地面に降りる。体に付いた砂や石を払って龍帝にハクロウを向けた。



「━━━━まぁ慌てんなよ。本番はこっからだろ?」



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