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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第四章 激甚の島
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第二十二話 立ち塞がる者

終焉の竜は新たなる二人の少女を歓迎した。



「ようこそ、我が城へ。我の名はレヴィルム。竜族の頂に立つ者だ」


「ッ…………………」



二人はレヴィルムの万物を震え上がらせるたたずまいに恐れをなす。今まで会ってきた人物とはオーラが、圧迫感が、威圧感が、格も段も桁も完膚なきまでに違っていた。



「貴様ら弱小種『人間』が我に何の用だ?」


「………こ、この国に革命を起こす為に来た!」



ヘリスがちっぽけでみすぼらしい程の勇気を振り絞り、声を震え上がらせながら叫んだ。誰が何と思うが目の前に立てばわかる。

この圧倒的な力の差━━━


ふとヘリスの視界の端に灰色の大きな何かが映った。灰色の大きな何かはゆっくりとだが動いている。突然、その灰色の大きな何かは動き出した。四本足で風になびく灰色の毛、龍帝に負けじとある魔力、そして三つの首。



「ヴァンさん………?」



クエリルの精霊で自分達をサポートしてきた闇の精霊。しかし、その体は傷だらけで血が溢れでていた。ケルベロスはそのまま龍帝に噛みつこうと疾走するが、龍化したレヴィルムからしたら造作もない敵に等しい。尻尾で鞭のように叩きつけられヴァンは壁に吹き飛ばされた。



「いつまでも過去の栄光に縋るのは見苦しいな、灰色の番犬よ?そこの人間どもを守るためか?案ずるな、人間どもは惨めな亡骸にはせぬ。一発で灰にしてやろう」



龍帝はそう告げると、こちらを向いて紅蓮の焔を口の中に宿した。足がすくんで逃げる事も躱すこともできない。二人はただ茫然と自分の死を受け入れる準備をするのみ。レヴィルムの口から炎が吹き荒れ放たれる瞬間、颯爽と真っ黒の黒龍がレヴィルムに体当たりした。レヴィルムはその反動で後ろに二、三歩後ずさりズレた場所に火炎放射が飛び交う。黒龍は次は俺が相手だ、とでも言っているかのように吠えた。



「ッーーーーーーーーー!!!!!」


「あークソ。今度は誰だ?」


「ミ…………ツ………?」



ミールが絞り出した声でそう言った。ミツが龍化した所なんて見た事もないが、この状況の中で龍帝を相手に助けてくれる龍はミツぐらいだろう。

ただ、一つ言いたい。普通、ここで助けに来るのって主人公の仕事じゃないの?



「誰かと思えば我が息子か。とうとう龍化すらも完成させてしまうとは怖いものだ。しかし貴様は反逆の罪で息子という肩書きももう終わりだ。生まれてきたことを悔やむほど無惨に殺してやる」


「ッーーーーーーーーー!!!!!」



レヴィルムは標的をヘリス達からミツへと変え、暴れ始めた。レヴィルムとミツの体格の大きさで言うと断然ミツの方が小さい。生きている歳月が違うから当たり前なのかもしれないが、差も何もかもが歴然だ。


だが、ミツは恐怖しない。いくら敵が親であろうと最強の戦士だろうと関係ない。自分の望みを叶える為に爪を振るう。強欲だと言われてもそれが自分を変える為、国を変える為なら手段は選ばない。


ミツは魔法陣を自身の周りと壁に展開した。四方八方からレヴィルムに照準が設定され、雨のようにいや、嵐のように風の魔法が放たれた。強風が吹き荒れ壁の岩が宙を舞い、ヘリスとミールは今にも飛ばされてしまいそうになる。だが二匹の龍は難なく魔法を発動させる。レヴィルムは炎の魔法で瞬時に暴風を打破し、ミツに業火を放つ。



「ッーーーーーーーーー!!!!!」


「さっきから吠える事しかできないのか?」



咆哮で威圧するミツを単なる子供騙しとしか思っていない。レヴィルムは魔法で中距離戦を強いるミツに突撃し近距離戦で対峙する。レヴィルムの爪はミツの硬い鱗を易々と引き裂き、鋭く尖った牙は楽々とミツの体に穴を開けた。一瞬のうちに瀕死に追いやられミツは扉の方へ尻尾で投げ飛ばされた。扉が強引に突き破られ奥の壁にぶつかる音がする。



「さて、邪魔者は排除した。貴様らもここで死ぬ」



レヴィルムは右手を振り上げる。ヘリスはとっさの判断でミールを左に押し飛ばした。なぜ体がこう動いたのかはわからない。けど、あの家での惨劇を、誰かが目の前で死ぬのをもう見たくなかった。ミールは腑抜けた顔でコッチ見て手を伸ばすが、時すでに遅い。ヘリスの真上から爪が、刃が斬り裂こうとしていた。



────体が左に飛んだ。



痛みがない。もう痛みが無いくらい酷い怪我なのだろうか。痛みが酷すぎて神経がやられたとか?それもあり得るかも。頰に生暖かい水?が付いた。あ、これ多分血だ。同じ物を昔も浴びたからよくわかる。



ごめんね、ラー君。ごめんね、イリス様。ごめんね、シャロ。ごめんね、ロイテさん。

私、死んじゃったよ。今までありがとう。



ドサッと地面に体が当たり、体に痛みが走る。痛みは感じる。けれど裂かれた場所の痛みはない。そんな困惑して、仰向けに倒れているヘリスの上に何か細長いものが上から落ちてきた。


────人の手だ。



茫然としていると不意に声がかけられた。



「悪いヘリス。その手、少しの間持っていてくれないか?」



声の主はライだ。オオガミ ライ。第四貴族騎士であり、改変者でもある少年。そして、ヘリスの最愛の人物。



「ごめんな、助けるのが遅くなって。でも、安心してくれ。お前は改変者として俺が守る」



砂煙の中から、龍帝の前に一人の少年が立ち上がった。その人物は先程までの声の主であり、ヘリスの為に身を呈して助けた張本人でもあり、この絶望的な状況を唯一打破できる人物───



「大神 ライだ、龍帝」



黒髪黒瞳の少年が、改変者が、第四貴族騎士が、龍帝の前に立ち塞がった。

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