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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第四章 激甚の島
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第十九話 招かれざる敵

洞窟内を爆発音が駆け巡る。ヘリス、ミールは今さっき洞窟内へ入り敵を一蹴したところだ。



「あいつ、まだ私達が入ってなかったらどうするつもりだったのよ」


「うーん、多分ラー君は私達が遅れる事を考えに入れてないと思うよ」


「………それって作戦って言えるの?」


「まぁ、ちゃんと入れてるから『結果おーらい』ってヤツだよ」



ミールは苦笑してヘリスを見る。実際、二人だけで中に入れているのだから問題は無いのだ。が、運任せと言うか確実性がない所が問題だとミールは思う。



「ヘリスもライもなんか変わってるわね」


「ラー君と一緒にされると少し傷つくよー」


「え!?あ、ごめん!あいつの事嫌いだったの?」


「いやいや!大好きだよ!けど、なんと言うか……ラー君と一緒にされると物凄く変わっている人って思われるから少し………」


(あー、そっちね。うん、それはよくわかる)



ヘリスの顔は今も真っ赤で、自分が言った言葉を嬉しそうに繰り返している。ミールはやれやれと肩をすくめてながら、恋する乙女を見守っている。



「さ、休憩も終わりね。奥へ進むわよ」


「そうだね。早くラー君達と合流しないと」



二人はゆっくりと立ち上がり、洞窟の奥を目指して走った。洞窟は一本道、何が先に待っていようが出ることは絶対にできない。


洞窟を抜けると螺旋状の階段を中央に設置した大きく縦に開いた空間があった。轟音が今も響いている。下を覗くと一番下で黒龍と蒼龍が対峙していた。ヴァンとライの姿はない。



「あ、あれが龍化………」


「……想像以上に脅威ね」



下で戦っている二匹の龍。どう考えても自分一人では相手にならない。それ程の攻撃の威力であり、威圧感なのである。



「そろそろ行こうか」


「あ、うん。今行くわ」



二人は階段を登り、最上階にそびえ立つ馬鹿でかい扉の前に立った。そしてゆっくりと扉を開け、中を恐る恐る覗く。だが、その部屋に待っていたのは龍帝でもなく、竜でもない。フードを被った一人の人間だった。背格好だけなら自分達と変わらない。


血のような真っ赤な髪に、黒と白の服装、フードで顔は伺えないが綺麗な風貌である。違う点を挙げるとするのならば──────



「あ、新しい娘ぉ♪今度ぁどんなふぅに可愛がってぇあげようかなぁ〜」



尋常な程の狂気と歪んだ感情を前面に出している事だ。


彼女が両手を上に挙げると、部屋内の明かりが全て点灯した。視界が一気に明るくなり目に手を当てる。目が慣れ始め、手を外すと自分達の足元、壁、彼女の体、色々な場所が真紅の色に染まっていた。



「ッ!?」


「なに……これ……」



部屋の中のどこを見渡そうと血痕しか見えない。壁から滴り落ち、ジワジワと広がって行く血溜まり、ポタポタと落ちてくる血。



「上から……」


「………酷い」



天井にはバラバラに分解された竜の体が吊るされていた。首、体、尻尾、翼。綺麗にバッサリと解体されていた。



「もう観察は済んだぁ〜?私もぉ限界〜♪あなた達二人もぉおんなじようにぃ〜してあげるぅ♪」


「ミール!アレは竜族じゃない!」


「そうみたいね。なら、洗いざらい話してもらわないとね」



彼女はフードを勢いよく外す。その顔は美貌、綺麗と文句無しに表せるモノだった。誰もを魅了するその顔に二人は一瞬戸惑う。だが、彼女のおぞましい狂喜に再度奮起する。

二人は抜刀し、駆け出す。ヘリスは魔力を宿した剣で、ミールはレイピアで得体の知れない魔女に襲い掛かる。



「ハァァァァァアアア!!」


「ヤァァァアアアアア!!!」


「あぁ♪好戦的なのもぉ悪くないねぇ〜♪ウズウズするよぉ!」



ミールは上、ヘリスは下から狂女に攻撃を仕掛ける。が、狂女はヘリスの振り上げを軌道から少ししたズレた所で躱し、ミールの突きを全て見切った状態で躱した。そのまま通り過ぎ滴り落ちる血を口を開けて舐める。



「おいしい〜♪最高だよぉ」



狂女は平然と血を舐め回しているが、二人は唖然としている。普通に考えても答えは出ない。ならば何か別の考えで無理矢理結論付けるしかない。



「ヘリス、あいつの作戦だと龍人達は殺したらダメなのよね?」


「うん、確かそうだったと思う」


「ってことは龍人以外なら仕方ないよね?」


「そうなるね。なら、手加減は無しだね」



今作戦の絶対条件のその三『龍人を殺してはならない』。これは絶対条件だ。逸脱しては

ならない。だが、その条件に適さない物は破っても構わないというわけだ。



「本気で行くわよ、ヘリス!」


「了解!」


「あららぁ?そっちもぉ、真面目にぃなりましたかぁ。ならぁ、私もぉやりますよぉ〜。魔帝序列五十六位グーモリー。貴様らを敵とみなし抹殺する」



最後だけどこか機械のような無感情の声だったが、その後の狂気の笑みに塗りつぶされた。


————人と竜の戦いに新たなる敵が入り混じる。



ーー??


「何百年ぶりだ、竜帝?」


「さぁな。俺もまだその時はガキの時だから全く覚えてねぇよ。それで?今回は何しに来た?」


「俺の現王がお前を殺せと命じたから、命を貰いに来た」



竜帝と呼ばれる男は今の発言を聞き、眉間に大きくしわを寄せた。翼が大きく広がり、血がドクドクと脈打っているのがわかる。



「————あまり調子に乗るなよ、この番犬が!!」



地面が震撼し、壁が破壊され、山全体が生きているかのように動き出す。最後には全てを破壊する凶暴な竜の姿へと変貌した。







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