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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第三章 過激なフェスティバル
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第二十一話 死に………

「・・・・」


意識が何も無い無の空間に置いてかれる。視覚が無いから何も見えない。口も手も足も無いから動くこと、喋ることすらできない。ただボーッとする事しか許されない空間。

仕方なしに、ぼんやりと自分がここに来てしまった理由を考える。


自殺。ふと、その単語が脳裏に浮かんだ。

神帝の思い通りにならないように、もしかしたら起きる可能性があった惨劇を回避する為にとった行動は、最終的にこのような結果になった。

もし、あの場面でYESを答えていたらクリフォト王国は死を免れただろう。だが、あそこでYESを選んでなんのメリットがあった?

神帝の思い通りに物事が進み「僕は神だ!」と図に乗らせるだけだろう。俺は神は嫌いだ。何もしない、したとしてもこんな傍迷惑な行動をとる。いい加減ウザったらしい。


なら、NOを答えていたらどうだ?

神帝の鬱陶しさの中には「自分は最強だ、自分の意見は絶対だ」と言う傲慢さが海のように深くある。態々そこを刺激して自らと共に知人を殺されるのも酷な話だ。イワンが相手だろうが誰が相手だろうが関係ない。自身の欲望が満たされなかった所為で国一つに八つ当たり、タチの悪い子供だな。



ーーだったらあの場での俺の選択は間違ってはいないだろう。

被害を最小限に抑え、あの野郎の心をへし折る。自分が自殺されるまで嫌われてるんだ。どれだけ傲慢な心の持ち主でも折れる時は簡単に折れる。


今俺がどこにいて何をさせられているのかは見当もつかない。ただ死ぬのなら地獄行きはわかる。どこまで行くかわからないが焦熱地獄辺りまでは簡単に行ってしまいそうだ色々とやって来たからな。



「ハハ、とうとう念願の自殺が成功したのか?」



不意に声をかけられた。声がする方向へ意識を向ける。

誰の声かは初めの笑い声を聞いた瞬間わかった。今のは俺の声だ。大神 雷の声、何年も嫌という程聞かされた声。誰がその声の主かなんて一目瞭然だ。『あいつ』だ。

亜人戦争の際に俺に交代を命じ好き勝手暴れたあいつ。



『久しぶりだな。お前も死んだのか?』


「笑わせんな。俺とお前は文字通り一心同体だろ?テメェが死ぬんなら俺も死ぬんだよ」


『ハッ、何カッコいいこと抜かしてんだ。命を狩ることしか能がないくせに』


「おいおい、辛辣な評価だなそれは。三十年近くも二人でやって来たんだぜ?もうちょい素直になれよ。思春期か、この野郎?」



俺は口は動いていないが脳内に言葉を浮かばせてコミュニケーションをとる。耳に聞こえず直接脳内に伝わって来るんだ、それぐらいは察せる。



『そういや初めてだな。お前とこんなに喋るの』


「ハハ、毎回毎回お前は俺に殺しの依頼しかしないからな。そりゃそうなる」



そんな無駄話をしていると、意識が焼けるように熱くなった。いや、熱いと言う表現は果たして合っているのかわからないが、今までに感じた事のないような辛さを覚えた。



「お?とうとう閻魔様のお迎えが来たのか?」


『馬鹿言うなよ……閻魔様はな、結構優しいキャラ設定なんだぜ?こんなッ!……酷いお迎えの仕方はしねぇよ』


「じゃあまさか、天国からのお呼び出しか?」


『それはねぇだろ。俺が何人そこに送り込んだと思ってんだ?』


「ハハ!それもそうだな。なら……アレか。魔法の所為で生き返るってヤツか?」


『お前もわかってるんだろ?……死にぞこなったんだろ、どうせ』



段々と痛みの波が速くなってき意識を保つのが限界になって来る。意識が掠れてき頭痛が酷くなる。



『そろそろだ。最後に伝えとくぜ?……今度からもっと俺に従順に働きやがれ!』


「ハッ、俺を誰だと思ってるんだ?お前自身だぜ?他人の言う事なんて聞くわけねぇだろ」



ライの意識はそれだけ聞いて消えて行った。




ーー



「……………ぁ」


「あ、起きたみたいだねライ。まさか自殺を選ぶとは思ってもみなかったよ。この駆け引きは僕の負けだね」



目が覚めて早々、一番会いたくない人物と会う羽目になった。もう一回自殺していい?



「あ、自殺はダメだよ!あの後どうなったと思ってるの?」


「知るかよ、俺は目覚めて早々お前に会ったことが不愉快なんだよ!」


「酷いな〜、僕だって一応は女の子だよ?もっと優しく扱わないと」


「こんな野蛮なボクっ娘をどう愛でろと?」



野蛮もここまでくれば戦闘民族だ。騎士を半殺しにしケラケラ笑ってる女の子がどこにいんだよ。



「それで?何して下さったんだ?あと、ここどこ?!」


「ホント面白いなライは。……その答えはもう直ぐわかるよ!」


「あ?もう直ぐって………」



カロはそう言って扉を指差す。俺は腑抜けた顔でそちらを見やると扉が開き外からイリスが入って来た。



「お前……神かよ。あ、神か」


「えっへん!これで認めてくれたでしょ?」


「・・・・」


「?どうしたんだ、お前?便秘?」



俺の冗談交じりの煽りを聞いてイリスはプルプルと体を震わす。そして、急に顔を上げたと思ったらいきなり雷の魔法を撃ってきた。



「え……ちょっと待っ!!ギャン!・・・・あれ?」



動けないと踏んで身構えたが彼女の魔法は俺の所に飛んで来なかった。手の間からイリスの方を除くとイリスが放った魔法は、俺の目の前でブラックホールのように異空間に吸収されていった。



「僕のお婿さんに何をするんだ!」


「あんたねぇ!私達がどれだけ心配したと思ってるの!!絶対後悔させるんだから!」


「待てってイリス!俺が何も考えずに死ぬと思ったのか?ちゃんと策はあるっての」



勿論全く考えてない。あんなタイミングでポイポイ作戦が浮かんで来るような、素晴らしい策を立てられる策士じゃない。何とかここだけでも乗り切らないと、俺のエンジョイ異世界ライフが破滅の危機に瀕する。


って………カロのギャグ?は無視なのか?



「なら!なら、どうやって戻って来るつもりだったのよ!!」


「あー、それはオフレコだ。手の内を帝様の前で公開したら俺ちゃん殺されてしまうよ」


「あ!僕をダシにッ!?」


「テメェは黙ってろ」



口を塞がれたカロは何とか外そうとするが離さない。離す=死亡だ。死にかけるのはもう勘弁だしな。



「後で教えなさいよね!ほら、みんなも心配してるから顔を出しに行きなさいよね!」



イリスはそう言って部屋を出て行った。俺は深いため息を吐きながらカロの口を押さえていた手を離してやった。



「プハー!あぁ、死ぬかと思った」


「死ぬわけねぇだろ。はぁ…、何となくはわかった。お前が瀕死の俺を王国まで運んで来てくれたんだな。そこだけは感謝する」


「そらそうだよ。僕のお婿さんなんだから!それに君にはまだ聞きたい事もあるからね」


「マジかよ………まだ聞きたい事あんの?俺、傷が痛いから寝てていい?」


「ダーメ。それに傷なんて僕が上級の回復魔法で治したから傷は塞がってるよ」



俺はチラッと服を上げ腹の傷を見る。腹には一つも傷がなく刺す前の状態に戻っていた。



「わーったよ。で?何が聞きたいんだ?因みに聞いてやるのは三つまでだ」


「そうだね。先ずは『君がこの世界で何をするつもりなのか』って事だね」



白髪の彼女はまるで、新しいゲームを買って貰った子供のような瞳で質問を開始した。


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