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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第三章 過激なフェスティバル
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第九話 テロップはちゃんと仕事している

「ッ!?消されるか消されないかは置いといて、お前なんで俺が魔法の改変をしたと言えるんだ?イリス達にも言ってないぞ?」


「簡単な事だ。今日の競技でお前は二度も使っただろ?確か一回目は風と火の混合魔法に改変を加えて自動照準で自動攻撃に設定されていただろ?二回目は闇魔法弾に煙幕。面白いものを作るものだな」


「お前…マジかよ。影分身の方はずっと出てから仕方ないとしても、煙弾の方は一瞬だっただろ。お前ホントにただの精霊か?」



魔法の改変。俺がこれをできる、いや、理解できたのは亜人戦争から一ヶ月が経った頃だった。


ラシエルやイリスが魔法についての勉強をしている時に、使えはしないが知識として知っておこうと俺も混ぜてもらった。その内容は『無詠唱で魔法を発動させる際の長所、短所』と言うものだった。見た目は難しそうでも中身は案外簡単で『その魔法の特徴、形状をイメージする事で発動させる』と言う事だった。


つまり、イメージをする事によって魔法を自由に変化させる事が可能と言う事だ。これができれば一発の魔法弾を装甲弾に、散弾に、貫通弾に、はたまたロケットランチャーにでも変化させれる。


だから俺の弾にも同じ事が当てはめれるのでは?と思い俺は実験を繰り返した。が、実験自体はそう上手くは行かなかった。

何が悪いのかはすぐにわかる。俺のは魔石を使用しての魔法だ。先の話のように自分の魔力を直接使っているわけではない。言わば俺のは間接的魔法なのだ。


その事実に気づき、俺は今までとは見る視点を変え魔法をイメージによって変化させるのではなく『魔法自体を変化させる』ことに重点を置いた。



「まぁ、それがまさかの正解で展開された魔法陣を少し弄っただけで効果が出たんだよな」


「そうだろうな。普通の人間ならその行動には出ないからそんな事にはならないんだが、お前は頭のネジが飛んでるらしいな」


「特別な存在って言って!!飛んでないから!」



イリスが展開した魔法陣を吸収し別の場所で展開する時、いくら魔石を使っているとしても魔法陣は現れる。だからその魔法陣の文字をバツして違う文字をそこに入れる。たったそれだけの事だ。


因みに、日本語も入れてみたけど何も起こらなかった。あと、あ文字や亜文字の全ての文字がそうやって何らかの変化を起こすわけではない。文字によったら何も起こらないものもある。例えば、炎の魔法弾の魔法陣にある亜文字の『炎』を『煙』に変えると炎の魔法弾はスモーク弾に変化する。



「それで?なんで俺が消さられる羽目になるんだ?」


「普通の人間ならば、神聖な魔法陣に下手な事はしないんだ。が、遠い昔にある一人の人間がそれを行い帝を一人で喰いまくった奴がいた」


「おいおい…。アレってそんなに最強なのかよ。適当に文字変えただけだろ」


「そこが問題だ。『誰でも改変ができる』これがどんな意味を持つかわかるか?」



ヴァンが言っている事。つまり、文字が理解できる奴ならば誰でも帝をも超える神に等しい力が手に入るって意味だ。そら、帝さんも危険視するわな。親殺されてるし。



「なるほどね。それはヤバいな。この力はもしもの時にしか使わないって事でいいか?」


「全くってのは…無理そうだな」



ヴァンが全てを言う前にライは花火弾を月夜の空を目掛け一発撃ち込んだ。赤と黄色の綺麗な一輪の花が夜空に咲いた。



「無理だな。俺は束縛されるのは嫌いなんだよ。自由に生きさして貰うぜ」



俺はそれだけ言って関門の上から飛び降りる。そして、さっきからジーッとこっちを見てくるミールの方へ走って行った。



「自由に生きるか…。昔のお前とそっくりだな。なぁ、そうは思わないかヘンリー?」



ヴァンの寂寥を拭うための一言は素早く、静かに消えて行った。




ーー



「この腐れ野郎!あんた、量考えた?あの後私がどうなったかわかってるの?!」


「朝っぱらからギャーギャーうるせぇな。なんだよ?そんなにまたやって欲しいのか?このタバスコ姫さん?」



俺が煽りを込めて朝から不機嫌のイリスに言ってやると、プチって音が聞こえた。



「ライ、あんた今日の競技には出ないよね?」


「あぁ、出ないよ。確か今日はラシエルじゃなかったか?」



今日の競技は『踊り』である。俺もイリスもダンスはできないし今回はパスした。



「じゃあ暇だよね?」


「うーん、暇では…ないかな…うん」



彼女のオーラが段々金色に近づいている。俺はゆっくりと後ずさりながら部屋の出口を目指す。



「あれ?ライ、どこ行くの?あぁ、外ね!私も一緒に連れてってよ」


「え、いや別に外じゃな…いよ。か、カルロスの所に行くんだ!そう!昨日のお前へのイタズラ成功回で呼ばれてるんだよね」



悪いなカルロス。お前も道連れだ。俺一人ではどうにもできない。



「ふーん。カルロスか…あいつなら本望だよね」


「えっと…イリスさん?何が本望なんですか??」


「?そら、ライと一緒に半殺しにされることよ♡」



あ、これは逃げないと死ぬヤツだ。


俺の脳はすぐにそれを理解した。早く、一秒でも早くこの場所から逃げないと俺はイリスに殺される。俺の脳がそれを理解した途端、俺の体は廊下を全力ダッシュしていた。



「待てやコラァ!!」


「待ったら俺死んじゃうから!」



止まったら死ぬ。転ければ即死。捕まれば惨殺。走る事以外許されない。



「カルロスは確か…王室にいるはず!あそこなら流石のイリスも入っては来れないだろ。…入って来ないよな?」



階段を一段飛ばしで登り三階まで上がる。この階をまっすぐ行った突き当たりの部屋が王室である。ライは周りの人など一切考えずに全力疾走で駆け抜ける。



「おい!カルロス!入るぞ!」


「もう入ってるよ?入ってから言ってどうすんのさ」



部屋の中にはカルロスがのんびりしながら本を読んでいた。これが王様のする事なのだろうか?そんな疑問が湧くが今は捨て置く。



「それで?どうしたんだい?そんなに慌てて?側から見たら暗殺者から逃げてる人だよ?」


「いや、まさにその通り!…ハァ…違うところは暗殺者じゃなくて主人だって事。ハァ…ハァ…」


「ハハハ、イリスにまた何かしたんだね?ホントにライ…早くやられなよ」


「だからさ、助けて…。今なんて?」



ん?今こいつなんて言った?早く死ねよ的な事を言ってたよな。え…最後の望みが。



「早くやられろって言ったんだよ?ライ、君は僕と約束したよね?なのにそれを放棄して仲良く遊んでいると?」


「違う!違わないけど違う!今、俺を助けてくれたら礼は弾む。それにお前も一緒に殺されるぞ!」


「なんで僕が一緒に殺されなければならないんだよ?」


「そら、俺がお前も共犯だって言ったから…」


「そうか…。なら、僕も追われるんだね!」



あ、こいつ天性のドMか。よし、これからずっとこのパターンで行こう。何かしたら全てカルロスの所為って事で。



「そ、そうなんだよ!お前も追われるんだ!」


「やったね!さぁ!逃げようか!」


「お、おう…」



こいつ何か勘違いしてないか?捕まれば殺されるんだぜ?リアル鬼ごっこだぞ?



俺が逆に呆れているとバンッ!!と扉が開いた。髪が逆立っていて、雷の魔法のせいでオーラが金色になイリスが堂々と入って来た。



「とうとうスー○ーサ○ヤ人になりやがった…」


「やっと追いついた♡」


「ら、ライ…どうするんだい?」


「イワン、俺にしっかり掴まってろよ」



俺はそれだけ言ってイワンを抱き上げ、窓から外に飛び出した。屋根を伝い近くの木の中へ飛び込む。チラッと飛び出した窓を見やると凄い形相でコッチを睨むイリスと目が合った。



「カルロス早く逃げた方が賢明だな。って聞いてる??」


「ふふふ、イリスに追いかけられた!」


「あ、ダメだこいつ」



こいつもしかしたらダメ人間なんじゃないだろうか?

木から降りながらそう思った。いや、思い知らされた。が、馬鹿は使える。それはダメ人間でも同じだ。使えるものは擦り切れるまで使うのが俺の主義だ。それで何とかなるだろ。



「カルロス、今から言う作戦を実行してくれ。俺は上から指示を出す」


「わかった。何をすればいいんだ?」



こいつ、ホントに王様かよ…。今のはどう考えても「俺は上から眺めとくからテメェは働け」って言ってるのと同じだろ。これで一国の王が勤まんのか?



それからは言うまでもなく悲惨だった。

※ライ本人は何もしてません。


先ずはどのくらい怒っているのかを確かめる為に謝る。一発で許されればそれはOKだが、許されるわけがない。殴られて噴水にぶち込まれた。

※ライは何もしてません。


謝るだけでは許されないので次はモノで釣る作戦に出る。が、逆に機嫌を逆撫でしてしまったようで壁に埋めこまれた。

※ライは何もしてません。


謝るのでもダメ、モノでもダメ、なら次は逆ギレしてコッチが怒る。それもダメで顔面パンチで吹き飛ばされ、通路の反対側の壁を破って外に放り出された。

※ライはホントに何もしてません。


今度は甘えに出る。向こうは怒っているのだから優しく慰める。が、聞く耳も持たないまま魔法で十字に貼り付けられた。

※ライは上から見てただけです。


仕方なく最後の手段に出た。血が身体中からダラダラ出ている状況を利用して、驚かしてそこを颯爽と助けると言う作戦を実行した。が、無残に惨敗。「きゃー」とも「わー」とも言わずワンパンKOを打たれ撃沈した。

※ライは寝てました。



夕食時になり、必殺の手段に出る。『もう一回同じ事をやろう!』作戦だ。今はそれの作戦会議中。



「さて、今作戦だが今回が今日のラストチャンスだ。これ以上遅くなれば襲いに来たと勘違いされ今までより痛い目を見る。わかるか?」


「何で僕ばっかりやられないといけないんだよ!?ライもやれよ!!」


「え…だって嬉しそうだったじゃん。ほら、踏まれてる時とか」


「そ、それはまぁ…ね」



今回の作戦の理由は至って簡単。昨日の夜、イリスは大量のタバスコを料理に盛られ悲惨な目に遭った。つまり、イリスは今日の夕食は何もして来ないと思っている。だからその裏を突く作戦だ。


ん?反省する気?

そんなのあるわけねぇだろ。今までの行い見て来ただろ?

※ライは何もしてません。


「さっきからうるせぇよ!テロップ!何もしてなくないから!ちゃんと指示飛ばしてたから!」



ライがテロップと喧嘩している内に御本人が会場に登場した。いつも通りの綺麗なドレスを身に纏い、堂々とした様子で歩いている。ここまでは昨日や一昨日と同じ。違うのは彼女のオーラが透き通った青色になっているという事である。



「S#GSSになっちまったー!!!ゴッドはどこ行ったんだよ!!」



『ヒロインが戦闘民族になって青いオーラを身に纏っていると言う件について』ってスレを立てたい。これホントに大丈夫なの?いろんな意味で。



「どうしたんだいライ!顔色が凄い事になってるけど」


「仕方ないだろ…あれ見ろよ。スーパー○○○人ゴッドを通り越してあんなんになっちまった…。もうダメだ。あれは強過ぎる」


「だ、大丈夫だよ…多分。ほら、今回はライがやるんだろ?頼んだぞ」


「あぁ!やってやろうじゃねぇか!!」



手に握られた真っ赤な香辛料を握りしめ、俺は堂々と歩き出した。会場がイリスの絶対零度より冷たい怒りによって静まり返っている。俺はゆっくりと歩を進め、イリスから二つ離れたテーブルで止まった。


落ち着けよ。ここからが正念場だ。ターゲットの隙を突いて一気に行動を取る。潜入ゲームで培った力、思い知らしてやる!


彼女がキョロキョロしだし誰かを探し始めた。シャロやヘリスは厨房のお手伝いが有るとか無いとかで今はいないはず。なら、ラシエルか?いや、それも無い。彼女はそこにいる。しかも何回もイリスと目が合っている。

よって探しているのは…俺だ。


全身に寒気が走る。今まで色んな恐怖を体験して来たがこれ以上はないだろう。全身の毛がここまでピンっと逆立つのは初めてだ。



「さて、どうする?何かアクシデントが無いと…」



すると、会場の明かりがガタンッと言う音とともに消えた。多分、何かイベントがあるのだろう。それは直ぐに察した。


ちょっと待て。これってもしかしてチャンスじゃね?視界は悪く、人は多い。これが最大のチャンスだ。


俺は椅子から立ち上がり、スッと彼女がいるテーブルの近くまで行く。そして彼女の料理に袋に入ったタバスコを全て掛けようとした瞬間、誰かの手が俺の手を掴んだ。



「ッ!?だ、誰だ!」


「ふぅー。やっと捕まえれた♡ライも結構酷いよね。女の子が追っかけているのに止まってくれないなんて」


「えっと…その…あのイリスさん??お、俺の手が今にも千切れそうな勢いで捻られているんですが…」


「え?そんな簡単には千切れないでしょ?あの亜人戦争を一週間で納めた英雄でしょ?」



こ、こいつ痛い所ばっか狙いやがって。そんだけの事を言うなら反撃されても文句は言えねぇよな?


俺は左手のタバスコを軽く振ってイリスの口の中へ注ぎ込む。



「ッ!?んー!!!ん、ん!!!!!」


「ザマァ見やがれこのタバスコ姫さん!」



俺は倒れゆくイリスをしっかりキャッチしてお姫様だっこで会場を後にした。会場から出てイリスの自室に向かっていると、俺は目の前の出来事によって絶句した。



「ヴァン…かわいそうに」


「よ、よくも僕の家族を!!」


「ちょっと待てお前ら。ってことはこいつは…。」



アンチ魔法石を取り出し顔に当ててみる。すると、案の定金髪碧眼の美少女は大きなミツ首の獣へと変貌した。



「あ、ワン吉。お、おひさ」


「う、舌が…」


「っと言うわけでライ。わかってるわよね?」


「今回は勝ったと思ったのにー!!!!」



この後、今までの行いを全てパーにするほど殴られました。


※ライは殴られただけです。




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