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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第三章 過激なフェスティバル
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第四話 哀しい恋

「ふわぁ…眠た。ん、もう六時か…早く帰んないと」



俺はトボトボと歩きながら図書室から出る。あの本からはそこそこ良い情報を手に入れれたので今日のところは満足がいった。


フラフラと歩きながらタクシー兼馬車を呼ぶ。乗り物代は騎士団にツケておく。これもイリス達の護衛に必要な事なのである。もちろん誰にも内緒だ。


何が、護衛の人間には給料は出ないだ!ふざけんな!あのツンデレ領主が小遣いをくれると?あの高音ボイスめ、絶対に許さん!


騎士団に喧嘩を売ることを決意し、進む馬車の中で一人の時間を楽しむ。綺麗な夜空や人気が出てきた居酒屋など、移り行く景色の中にも美しいモノが存在している。

ライはどこか感傷的な気持ちになりながら馬車に乗っていると年老いた運転手から声をかけられた。



「お兄さん、ひょっとしてあんた『黒染めのライ』さんですか?」


「あ?何だその名前?」



いくつになっても厨二病ってヤツは発症するんだな。見てて痛くなってくる。現実と二次元の違いをその道の先行者として教えてあげなければ。



「いえ、私の勘なんですが新聞に載っていた亜人戦争を僅か一週間で終結させた『ライ』って言う人と似ているような気がしたもんで。ハハ、歳は取りたくないですね」



すみません。その変な名前の人は俺です…。誰だよ俺に変な二つ名つけた奴!あぁ…これが黒歴史と言うやつか。異世界で初の黒歴史がよりによってコレとは…。


図書館にいる時に遠くの方で俺を指差しながらヒソヒソと話しているのは知っていたが、まさかこんな有名になっているなんて…。


転移する前の服を着ていたら「何で傀儡がいるんだ!」ってなるのに、騎士の制服を着ていたら「あ!騎士様だ!」と変化する矛盾をどうすればいい。

服が「解せぬ」と言ってるのが眼に浮かぶ。



「爺さん…。あんたは正しいと思うよ。俺から言えるのはそれだけだ」



到着の頃合いを見計らってライは運転手にそう助言する。もっとも本人の顔が真っ赤でないのであれば問題なしだったのだが。



「あ、カルロス。何だ?門番か?」


「何で国王が門番をしてるんだよ!?はぁ。ライ、君を待っていたんだよ!早く来て!みんなの冗談が過ぎる前にね!」



冗談?みんな?

スマホを取り出し時間を確認する。今は六時半を回ったところ。夕食は七時からだろ?もしかして、待てなかったのかな?


カルロスが足早に駆けているのを見て、もしかして!と思ったが女子部屋に着いた途端、その幻想はぶち壊された。



「ほらほら、シャロちゃん?早く踊りなさいよ。勝負に負けたんだから敗者の決まりは守りなさいよね」


「うぅ…。こんな格好恥ずかしいよ…」


「この腐れオンナァ!!」


「ラシエルちゃん!そんな言葉を使ってはいけませんよ!幼女は幼女らしくいなさい!」


「だ、ダレェがようじょぅだぁ!?」



・・・・・・・・・。


・・・・・・・・・・・。


俺はこの目の前で行われている惨事を理解するまで、いや理解できなかった。毎日彼女達を見ているがここまで狂ったのは初めて見た。


扉を開けた途端、目に飛び込んで来たのは、

今にも中が見えそうな膝上三十センチ程の短いスカートと露出度が多い服を着て踊っているシャロと、それを高笑いしながら見ているイリス。部分獣化しつつ暴言を吐いているラシエルにそれを焚き付けつつも目がマジなヘリス。


俺が言葉を、いや息を吸う事すらも忘れている状況の中、隣でカルロスが申し訳なさそうにこう言った。



「すまない、ライ。彼女達はジュースを頼んでいたんだが、こちらの間違ってお酒が行ってしまったんだ。そ、そのせいでイリス達は…」


「・・・・・・・・・・・・。」



何となくだが理由はわかった。

・・・お、お酒が悪いんだよな。うん。そうだ。あいつらの根があんなのじゃなくて酔いが悪いんだ。


すると、俺が来たことに気づいたイリスが近づいて来て耳元でそっととんでもない事を言い出した。



「あ!ライじゃーん!!おかえり!用事は済んだみたいね。・・・ねぇ、今日の夜は空いてる?」



驚愕するカルロス。今の彼女は男を堕とす技としては優秀だ。が、する相手が間違っている。


彼の耳には聞こえてしまったのだろう。彼の恋心は致し方ない理由で犠牲になってしまった。

え、俺は悪くないぞ?



「も、もうライなんか信用するかーー!!」



カルロスは涙を拭いながら廊下を走り去って行った。確かに側から見てたらそう思うかも知れないけど、こいつ酔ってるから!ねぇ!



「ほら、邪魔者もいなくなった事だし。空いてるの?あ、シャロ!何休んでんのよ!」



好きな人から邪魔者扱いとか…。俺ならもう死んでもいいレベルだな。ご愁傷様です。

カルロスの仇だ、仕方ない。この馬鹿どもをどうにかさせるか。

ってか、あの保護者のジジイはどこに行きやがった!!絶対逃げただろ!



「はぁ…。お酒とタバコは二十歳になってからって習わなかったのか?まぁ、それは今言ってもしょうがないか…。それより、お前ら酒癖悪すぎだろ!」



サッと動いて全員を一蹴し気絶させる。さすがに酔○は使えないようで軽く遇らう事ができた。


さて、こいつらをどうしようかな。

もちろん、イリスがさっき言ってたことは絶対にしないから心配するな。


全員をそれぞれの部屋のベッドで寝かせ、俺は夕食を済ませに行く。一人でゆっくりと夕食を食べれると思っていたら先客がいた。



「おいコラ、ジジイ!テメェわかってて逃げただろ!!あの後どうなったのか知ってんのか?!」


「いえいえ、私のような老いぼれが行っても何もできませんからね。白羽の矢が立つ前に少し買い物をしに行ってました」


「それを逃げたって言ってんだろうが!」


「ああ言うのは若い者に任せるべきですよ?」


「テメェのせいで一人の若者の恋心が殺されて死んだんだよ!?」


「それはそれは、その方に言ってあげて下さい。『彼女達は嫁にはやらん』とね」


「さらに追い討ちをかけますか!?死んじゃうから!物理的な意味で死んじゃうから!」



カルロス…。お前、どうする。状況的に詰みだぞ。何か打開策を用意しないとお前の青い春はゴールデンウィークよりも早く終わってしまう。俺は男友達としてお前を全力で応援する!




この事件はライによってトルエノ邸での彼の問題の隠蔽に使われる事になった。








翌朝、イリス達は二日酔いによって、カルロスは昨夜のイリスの行いによって精神的に死んでいた。


俺?俺は呑気に朝ごはんを食べてたよ。

だって関係ないもん。



彼、彼女達が元に戻るのは他の貴族達が全員が到着した昼過ぎ頃だった。しかし、その頃には開会式は終わっており肩身の狭い思いをした五人だった。


俺とロイテは男二人でトルエノ家を名乗って並んでいた。

周りからの目が痛かった二時間であった。






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