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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第三章 過激なフェスティバル
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第三話 世界の地図と歴史

「よし、確認も完了!それじゃあ、行きますか!」



全てのトラップが作動することを確認して、馬車に乗車する。

馬車は二台。女性陣が乗る花園馬車と俺と爺さんと言うあまりにも悲しい馬車が一台。


俺もあっちが良かった…。



「ライ殿もそう残念そうにせずに。私も乗車しますから」


「馬車の中を見ろよ!俺とモノしか乗ってないんだぞ!いくら俺がボッチだったとしても酷すぎるだろうが!」


「モノとの馬車旅行をお楽しみ下さい。何かありましたら前の扉を叩いて下さい。いつでも話し相手になってあげましょう」



ロイテはそう言って馬の手綱を引いた。馬車はゆっくりと加速を始めながら王都を目指して走り出した。







「あぁ…長かった…」


「「「「楽しかったねー!」」」」


「王都までがこんなにも長く感じたのは初めてだ…」


「「「「王都までってこんなに早く着くんだねー!」」」」


「テメェら、わざわざ被せてくるんじゃねぇよ!?何?嫌味?」


「嫌味ですが何か?」


「この野郎…」



イジメが発生してます。誰か、助けて下さい。俺のヒットポイントがゼロに達しそうです。


ライの惨めな怒りは、イリスによって粉々に打ち砕かれる。ライは颯爽と言い争いに白旗を上げて負けを認める。



「やぁー!ライにイリス!あ!それにみんなも来ているのかい!?」



相変わらずの大きな声。髪質の良さそうな赤茶色の髪。いつの日かにトルエノ邸を訪れた王様。もとい、うるさい天然。もとい、バカ王子が手を振りながら走って来る。



「よう!バカお…、ゴホン!カルロス?」


「今、バカ王子って言おうとしたでしょ」


「い、いや、そんな事ないぞ…多分」



イリスに図星を突かれ俺はぐうの音も出ない。幸い本人には聞こえていなかったらしく、「どうかしたのかい?」と平気な顔でいる。


こいつが王様でホントに大丈夫なのか?俺でもこいつを欺くのは簡単だぞ…。



「そ、そんな事より、どうだ?祭りの準備は順調に進んでるか?」


「もちろん!僕の初陣なんだ、適当にはできないよ」



父親から代を受け継ぎ王となったカルロスだが、まだうら若い青年である。年はまだ十九歳と成人すらしていないのに王様となり、国のトップで先陣を切る事になったのだ。


俺なら仮病を使って休むね。



「お前も大変なんだな。何かあったら手伝うよ。手伝えるのは明日からだけど」


「はは、ライにそのセリフを言われるとは思ってなかったよ」


「そんじゃ、俺はこれから用事があるからそろそろ行く。頑張れよ、準備!」


「おう!」



多分、同情なのだろう。自分の先程の行いを振り返りながらそう感じる。


俺も他人の気持ちにがわかって来たものだ。

いや、元からわかっていたのだろう。しかし、全てに蓋をしていたせいで気付く気がなかったのだ。



「ーーーらー!ライってば!」



後頭部に痛みが走り俺はうずくまる。後ろを見ると「あ、やっと気づいた」と言っているイリスが目に入る。


力加減ってのを知らんのかこの娘は。



「あんた今日は無理だってカルロスに言ってたけど、何で無理なの?」


「ん?少し行きたい場所があるんだよ」


「誰か付き添わせようか?」



俺は横に首を振り拒否する。理由と言う理由は無い。単に一人の方が集中しやすいからである。


そう、俺が今から行こうとしているのは図書館である。それも国立の。


日本では東京の上野にある旧帝国図書館や国立図書館がそれに当たる。簡単に言えば大事な書類から子供用の教育本まで殆ど全てが揃っている図書館だ。



「場所は国立図書館。何かあったら連絡くれ。決して自分達で解決しようとしないように!オーケー?」


「お、おーけー」



イリスにもしもの為の連絡をしておく。俺の予想ではこんな初日からは来ないだろうが、予想はあくまでも予想である。警戒に越したことはない。


俺はそのまま王宮を出て一台の馬車に乗る。

この街にはタクシーのような馬車があるため、街中での移動も楽に済ませる事ができる。周りの国と比較するとこの国はとても発展しているとラシエルから聞いた事がある。


馬車に乗りコミ症を発動させながら、目的地を言って馬を走らせてもらう。


知らない人と喋るのが怖いという病気は治らないのかな…。






目的地の国立図書館に到着した。お金を支払い馬車から降りて中へと入る。国立図書館はどちらかと言うと本の博物館のようであった。現代の国立図書館に行ったことは無いが、こんなものなのだろうか。


先ず、1ブロックにある本の冊数の多さである。これは床から四、五メートルほどまで高さがあり横は三メートルもある。この面積の中にビッシリと本が詰まっているのである。本が嫌いな人が見れば地獄を超えた地獄の景色だ。


そんな熱帯雨林のような本棚に驚きを隠せないでいると、お目当の本の種類の棚が見つかった。俺が読みたかった本はこの国の歴史・地理の本だ。別に誰が何をしただとか、こんな制度がありましたとかは興味ない。俺が知りたいのはこの国の地理とこの国ができた時の世界の様子である。


手短に一冊取って読もうとしたが本が重いのとデカイのとで立ち読みができない。


これが立ち読み防止の策か…。


視界に入ったテーブル席まで移動し本を置いて座る。本は図鑑並みの大きさで厚さも広辞○ほどである。


俺がここに来たもう一つの理由はトルエノ邸には本があまりなかったと言うことだ。確かに小さな図書室はあったが、その中の本は物語や説明文のようなモノが多く読んでも意味がなかったのである。つまり、今まで色々あったせいでできていなかった情報集めを再開しようと言う事だ。


この二、三ヶ月の間、結構イリスやヘリスにしごかれ、何とか文字が書けるまでには行き着いた。読む方には何も問題はない。



「さて、読んでみますか」






ーーー読み始めてから約三時間。何とか読み終える事ができた。内容を簡単にまとめたプリントを見る。


地理からだ。

この世界は三つの大陸に分かれているらしい。一つ目は俺ら人間や亜人などが住んでいるグレーン大陸、二つ目は魔大陸(暗黒界)と呼ばれる悪魔等が住み着く世界が一つ。三つ目は神や天使が住み集うディオルス大陸(天神界)と呼ばれる三つの大陸があるらしい。

それが大きな大陸である。が、グレーン大陸には数々の島があるらしい。クリフォト王国のずっと東には『世界の終焉』と呼ばれる大きな崖や溝のような場所があるらしい。つまり、それ以上先には陸は無いと言うわけである。が、浮島と呼ばれる謎の浮遊国がいくつか存在しているとの事である。

浮遊国、それらの名前は書かれていなかった。多分、備考の欄に書かれていた『詳しくは世界の地図を見よ』と言うのがヒントなのだろう。

まぁ、それは後のことにする。

そして、その浮遊国には全身が鉄で覆われている人間や、背中から漆黒の羽が生えている人間などがいると書かれていた。


ゴーレムとカラス天狗のようなものだろうか?詳しくは自分の目で確かめるしか無いようだ。


次は歴史についてだ。

さっきの地理でも出てきた沢山の大陸や島々。その大陸や島々には各々のエンペラー、つまり帝王が存在しているらしい。

魔大陸には魔の帝王、グレーン大陸には人の帝王、ディオルス大陸には神々の帝王がいる。その他には龍帝や機帝、堕の帝王がいるらしい。

何世紀か前にそれぞれが順列をつける為に戦争をしたそうだが、全員が巴で戦争をすれば世界は崩壊すると気づいたらしく、国土の大きさで順位を決めたらしい。よって人族は三番目に地位をつけた。しかし、国土という大陸組が優位な立場の判断なので不満が続出し今も睨み合いが続いているらしい。


もっとわかりやすく言うと帝王がいるらしく、しかもその帝王達は一人一人が世界を滅ぼす力を持っていて、お互いがお互いを毛嫌いしていると言うわけである。


その後、サマエルの傀儡と題されているページを発見した。彼らの事についも色々と研究されていたらしい。傀儡の奴らの大元いわゆるボスは未だ発見されておらず犯行動機、出現場所などは全くと言っていいほど不明らしい。わかっていることは傀儡の中でも上のランクのモノは特別な能力を持っていると書かれていた。




うん。こいつら俺よりチートだね。読むんじゃなかったー!!これ、もうフラグじゃねぇか!?ビンビンのフラグ立ててしまった!!!






ライはまとめたプリントを改めて見て実感する。この世界、案外攻略しなくても何とか平和に過ごせるだろうと思っていた。が、それは不可能だと己の本能が、理性が再認識した。



「俺、もう引きこもりたい」



ライの小さな嘆きは誰の耳にも入らないまま段々と小さくなり消滅した。


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