第四話 トレジャーハント
真っ暗でなにも見えない。意識はあるが感覚がない。意識だけがはっきりしていて水中にいるような感じ。すると目の前にある暗闇がゆっくりと光始める。視覚はあるのかと認識する。すると光始めた場所はスクリーンのようになり、映像が投写される。
あぁ、また始まる。幾度も見てきた真実が始まる━━━━━━
「君は素晴らしい!!何て才能なんだ!幼稚園児にして学者並みの知能!そして、スポーツ選手並みの運動能力!なぁ坊や、僕がいいことを教えてあげるよ。君の才能が役立つところへ━━━━━」
「ねぇ、何であなたにそんなことができるの!うちの子だって頑張って努力してるのに、あなたはそれを絶対に上回る。ねぇ!なんで!教えなさいよ!ねぇ!!━━━━」
「おかえり雷君。あれ?何でそんな顔してるの?ふふふ、君は私の愛情を理由もなしに粉々にした。だから私は同じように君が愛情を注いでるものを壊していくよ!大丈夫だよ、君は絶対に壊さないから♡」
止めろ。止めろ、止めろ止めろ止めろ!俺は何もしてない。俺は自分から遠ざけただけなのに、なのに……………
意識が次第に薄れていく。少しずつあの映像を脳裏に残すようにして消え━━━━━━━
ーー
目が覚める。昨日の夜と変わらない天井。カーテンの隙間から朝の光が差し込み、いせかいでの朝焼けを教えてくれる。ゆっくりと体を起こし、半分ほどまだ寝ている体を起こす。さっきの夢のせいか体が少し汗で濡れていてとても気持ち悪い。そんな事を思っていると、ベッドの横で見知らぬ少女が座っていた。
「あ、あの!おはようございます。私はシャロ・アルザと申します。ここで使用人をやらしてもらってる女の子です。え、えっと昨日の夕食のを作ったのは私何ですが………どうでしたか?お口に合いましたか?」
なんともぎこちない自己紹介を始める赤髪でルビー色の目をしたシャロと名乗る少女。俺は座りなおし、シャロの方へ体を向けた。
「あぁ、おはよう。ええっと、シャロさん?でいいのかな?昨日の夕食か、とても美味しいかったよ。また今度も作って欲しい」
素直な感想を伝え、美味しかったよと褒めたらシャロは顔を少し赤らめ嬉しそうにする。うん、この反応が普通の女の子だ。どっかの誰かと違って、褒められたらちゃんと嬉しそうにする!これ重要!
そう優しい仮面を付けた表情で会話をしていると、コンコンと言うノックの音と共に昨日からお世話になっている例の方が姿を見せた。
「ラーイー、そろそろ起きなさいよ!いつまで寝てるのよ。起きないならとそのまま一生寝てなさい!」
「何でお前に永眠宣言されなきゃならんのだ。つか、テメェも寝起きじゃねぇか」
「そうですよーイリス様。そんなに羞恥な姿をライ様に見て欲しかったんですか?いや、そうですね。ホント趣味が悪い」
えっ?シャロちゃんてそんな子なの!?もっとお淑やかな子だと思ってたのに……。やはり現実と二次元を一緒に見たらダメだ。
「ち、違うわよ!そんなんじゃない!!偶々こいつの部屋の近くを通ったから寄っただけよ!」
「えーけどイリス様の部屋からどこに行こうと、ここは通りませんよ〜。やっぱり会いたかったんじゃないんですか〜」
怖い怖い!シャロさん怖い!女の子はお淑やかさが重要だよ!そ、そんな……あぁヒートアップしてる。
「うるさいわよシャロ!そうよ!昨日のことで疲れてないかってわざわざ見に来たのよ!」
「「あっ開き直った」」
カーーッとイリスの顔が真っ赤に染まる。おいおい、何急に照れてんの?ツンデレ属性なの貴女?みんな知ってるけど。
「んで、用はそんだけか?」
「いえ、朝食の準備ができたってヘリスからの伝言よ。さぁ早く来なさい!」
「はいはいっと。じゃあシャロさんは戻っていいよ。俺もすぐ行くから。」
「はい。けど、大丈夫ですか?凄く魘されてましたけど」
「ん、ああ大丈夫。ちょっと嫌な夢を見ただけだから。気にしなくて構わねぇよ」
イリスとシャロが部屋から出るのを確認して、ベッドから降りる。そして、新しく用意されていた服を着て廊下へと足を踏み出した。
ーー
「ふぅ、なんとか迷子にならず到着できたな。サッサとこの館を把握しねぇと」
着いたのはいいがやっぱり不機嫌な顔でこっちを見てくるイリスがいた。プンプンに顔を膨らまし、針で刺したら張り裂けそうな顔になっている。今度刺してみようかな。
「遅いわよ!何で家の中で迷子になるの?バカの?」
「食いしん坊は朝もなのかよ……お前のお婿さんが可哀想だ。超完璧人じゃないと務まらねぇな」
「うるさいわね、ここの食事は美味しいでしょ?早く食べたいのよ。それに……私は結婚しないし」
この人お年頃の少女なのに、私結婚しませんなんて言ってるぜ。巷のJKに見してやりたいわ。あ、やっぱやめとこ。ロイテの爺さんが号泣してる。
「にしても、する事がねぇ。ネトゲはないし、スマホも圏外。………王道に探検でも行くか。この辺の地図はある?」
「それは一応あるわ。ロイテ悪いけど取ってきてくれないかしら」
ロイテは「わかりました」とだけいって、廊下に出る。シャロは次から次へと皿を片付けたり、持ってきたりしていた。ヘリス、と言っていた人は出てこなかったが、いつか会うだろうと思って気にせず朝食を食べた。数分ぐらいしてフレンチトーストのようなのを食べていると、ロイテが一本の筒のような物を持って帰って来る。そしてどうぞ、とだけ言ってテーブルの真ん中に広げた。一般家庭じゃ見れない、こんな長テーブルだからこそできる技だなぁと感心しながら地図を見る。
「ここが王都で、こっちがこの屋敷がある場所。ちょっと離れているけど、馬車で一二時間ってところかしら」
「へぇーなるほど。あんまり王都とは離れてないんだな。ん?なぁイリスここはなんだ?なぜか違う色で記されてるとこ。俺文字読めないからわかんねぇ」
「文字が読め……ない?は?何でそんな歳まで生きてんの?あんたが馬鹿なのは知っていたけど、ここまで馬鹿だとは……」
「おい、今俺の存在をディスっただろ。それに前に言ったろ?俺は遠くから来た旅人さんだって。今は奴隷だけど」
「じゃあ文字もわからない奴隷さんに優しく教えてあげるわ。ここは宝があるって言われてる洞窟よ。けどね、絶対行くとか言わないでよ。何人もの探検家がそこに行ったけど、誰一人として帰って来てないんだから。絶対よ!」
あいわかった。お前の意図はよくわかった。そんなに言って欲しいなら素直に言えばいいのにって思うぐらいわかった。
「よし!今からそこに行こう!すげー楽しそうだ」
もうイリスさん、あんなに沢山やってって言ってたのにそんなギャグ漫画みたいな顔してどうしたんですか?ほら、シャロさんとか見てよ…………あれ?異世界ってこのネタ通じないの?
「は?今の私の話聞いてなかったの?何人もの人が挑んでだれ一人としてお宝すら見ずにそこで死んだのよ?わかってる?」
「それだからに決まってんだろ。冒険は男のロマンだからな!んで、俺一人で行っても帰ってこれないから誰か一緒に行かね?」
「なら、シャロはイリス様を推薦します。シャロ達は屋敷を開けられません。それにイリス様なら戦力にもなりそうですしね」
「OK決まりだな。よし、行こうイリス!」
イリスは頭の上で交わされる会話に百面相で割って入ろうとするが、シャロさんと俺の絶妙なコンビネーションでサラッとお供イリスのゴールが入れられた。
ーー
「よし!じゃあ行ってくる!留守番よろしくな!」
居候とは思えない言葉でいってきますを言って、イヤイヤどころか半分以上オコなイリスを連れてトルエノ邸を後にする。
「あーー!なんで私なのよ!シャロが行けばいいのにー!」
「さっきからうるさいなー。置いてくぞ!ほら、い!く!ぞ!」
良くも悪くも、こんな感じで俺とイリスのダンジョン制覇の冒険がスタートした。
ーー
━━━━━そして時は経ち今に至る。
「多分この辺であってるんだが……どこだ?」
「ねぇ、なんでこんなに魔獣が湧いてくるのよ!私はちゃんと魔力量調整してるのに……あ、ねぇライ?あなた魔力の調整とかできるの?」
「何魔力って?MPゲージも呪文唱えても何も起きなかったぞ?メラ………ほらな?」
「って事は………魔獣が湧いてる理由って」
「えっ何、俺のせい?!つか!俺は魔法なんてないとこから来たんだぜ?そんな少年マンガみたいにポンポン魔法が撃てると思うなよ!」
「なんで逆ギレされないといけないのよ!」
とかグダグタと喋りつつ、猪?みたいな魔獣を木の枝で目潰しして蹴り飛ばす。この世界で生類憐みの令が出てないことを祈りながら俺は文句を言うイリスと共に先へと進んだ。
「あんたってホントに人間?亜人とかじゃないの?」
「バカ言え、俺は根っからの人間だ。ちょっと色んな人種が混ざってるけどな」
「なにそれ?……まぁいいわ。あ、あそこの洞窟がそうなんじゃないの?」
「関心薄すぎだろ、カルピスか。えっと……あっほんとだ。当たりじゃねぇの?とりま行こうか!」
左の草むらから大きく口を開けた狼か犬かの魔獣が俺に襲いかかってくるが、木の棒の代わりに持っていた大きめの石を口の中に突っ込み尻尾を持って投げ飛ばす。そのまま洞窟へと入ろうとしたが、俺達を餌だと思った大型な熊が行く手を塞いだ。
「ライ!危ないわよ!下がって!!」
イリスはライに注意し、中距離戦に移行しようとする。彼女は後方に下がって即座に魔法陣の展開に力を入れようとするが、俺はそのまま直進する。熊は大きな爪と長いリーチをめいいっぱいに使っての横薙ぎにフルスイングし、ライの体を捉え━━━━━━
「遅ぇ!」
余裕を持って熊の一撃を躱し、顔にグーパンチをお見舞いする。アッサリとカウンターを返された熊はそのままヨロケ後ろに後ずさり距離を置こうとするが、右手を掴まれ馬鹿みたいな怪力で一本背負いを決められた。
「フンッ!」
まだ熊の息はあったが、脊髄の粉砕骨折とイリスの魔法での串刺しによって血溜まりを作りながら息を引き取った。
「いやぁ、久しぶりに動いた」
「体術だけなら騎士レベルね」
「何それ。騎士様強すぎじゃね?」
「そらそうよ。ここの騎士団は教える人が良いからね。他の国と比べると段違いだわ」
釈然としないお褒めの言葉に俺は眉を寄せるが、イリスはスタスタと洞窟の中へと入って行くので返す言葉も見つからないまま俺は小走りに彼女の後を追った。
今回はイリスです!
名前 イリス・トルエノ
年 17
髪、瞳の色 金髪、碧眼
身長 160ぐらい
誕生日 4月20日
顔面偏差値 68〜72 (ライによる独断)
その他 ライ情報によると、胸はC〜Dぐらい。
スタイルはいい方。