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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第二章 亜人と人間
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第十七話 鬼の覚醒

ここは大会議室。亜人族の各族長、ゴラド王国の王が円形のテーブルの席に着いている。彼らの目線の先は二人の少女に向いていた。



「あなた方の作戦は全て傀儡の奴らが図ったことです!!ですから!もう一度お考え下さい!!」


「彼女が言うことは正しいです。今彼女の仲間が傀儡の者と交戦しています。今回の作戦はクリフォト王国の聖神がここに来た時点で失敗しています!」



彼女達二人がそう言うと族長は眉間にしわを寄せ押し黙った。するとくライオンの獣人が低い声で話し始めた。



「なら問う。お前達の言う事が正しいのならあの事件も傀儡の仕業である、と言うことか?」


「証拠はありませんがそうだと判断します。」


「それはお前ら人間が傀儡の奴らに責任転嫁しただけなのではないのか?あいつらのせいにすれば俺達が信じると思ってそう言っているのか?」


「いえ、私達が国を出る時点ではそのような話ではありませんでした。ここで傀儡の奴らと遭遇した時にその考えに行き着きました」


「鬼のお前の意見は理解した。さて、ラシエル・ソロ。お前はどう言う意味だ?」


「私はあの傀儡どもの会話を裏で聞いていました。そこで、これまでの犯行が全て奴らの行いだったこと、奴らは私達を根絶やしにしようとしていると理解しました」



ラシエル・ソロと呼ばれた少女は敬服の印に立て膝で屈みその時の状況を説明した。シャロはそれを聞いてライに感服した。


ライはアレス団長から事情を聞いた時、もしくはケイル隊長から話を聞いた時点から気づいていたのかもしれない。彼はいつも本当に人間が襲ったのか?この戦争に意味があるのか?と。


ラシエルが話している事は彼からしたら答え合わせのようなものだ。ここにライがいたらなんて思うだろか。それはシャロにはわからない。


戦争の引き金となった事件は傀儡の奴が犯行し、そして亜人族と人類との関係が悪くなると判断し亜人族にゴラド王国と手を組めと唆す。その結果、亜人とゴラド王国は同盟を組みクリフォト王国へ戦争を仕掛ける。



「ここらは私ラシエル・ソロの憶測ですが、この戦争でどちらが勝利しようと双方衰弱します。その衰弱している間を隙とし傀儡は攻め込み国取りを行なったと推測します」


「なるほど、筋は通っている。ならば何故我ら族長に報告しなかった?我らがここで反乱したのら傀儡の奴らへは奇襲になると思うが?」


「それは私の勝手な判断です。味方の数を減らすよりは敵の数を減らした方がもしもの時に吉になると思いました」


「わかった、お前達二人の話を信じよう。和平交渉を行う!!今回は我ら族長も行く!早急に準備しろ!!武器はいらぬ!!!!」



二人はホッとして力が抜け地面に座り込む。何回も交渉などを行ってても国の存続がかかった交渉は手に汗握る。



「・・・・ねぇ。あなたの仲間に加勢は行かなくても大丈夫?」



ラシエルにそう言われシャロは我に帰る。スッカリ自分のことでいっぱいになっていた。急いで立ち上がる。


ライとイワンがどれだけ強いかは知っている。二人が負ける姿など想像できない。けれどもしもの場合もある。ここは加勢に行った方が正しいと判断し、二人が走って行った方へ行こうとしたが立ち止まる。


交渉に行く前にライに言われた事をシャロは思い出した。



『シャロ、後は頼んだぞ!!』



自分はライに頼まれたのだ。後のことをは宜しくと、ならばその務めは最後まで果たさなければならない。



「大丈夫!二人は自分達で何とかするから!シャロはシャロの務めを果たす!だから助けには行かない!」


「信頼してるんだね」


「もちろん!」



二人は急いで族長達の後を追って走り出した。







「オラァァ!!」


「フンッッ!!!!」



剣と大斧がぶつかり合う。その衝撃で周りの空気が振動する。火花が散り鋭い金属音が鳴りあう。


ライの宣言で第二ラウンドが始まってからはライが優勢である。ライの自称パクリ技により少しずつ男は傷ついていた。



「よっ!どうしたおっさん?さっきから防戦一方だぞ」


「フン、ならば本気を出そう!!」


「あ?まだ本気じゃなかったのか?全力だと思ってたのに」


「強気なのもここまでだ。鬼をナメるなよ!!」



男がそう言うと武器を手放した。すると、男の体からは真っ黒のオーラが溢れ出る。そして額の二本角は今までの二倍以上に長くなり明らかにパワーアップしているのが目に見えた。



「それが鬼の本当の姿ってわけか…」


「あぁ。鬼の中でも上位の鬼しか解放できない力だ。今までお前が戦ってきた鬼はこの解放はできない。族長もできるか怪しいところだな」


「そうか。だが!ただ魔力が上がったってだけなら無駄だぜ?」



そう言って俺はハクロウを出す。このアンチ魔法弾はどんな魔法でも無効化できるチート武器だ。

いくら魔力量が上がろうとも関係ない。



「そうだろうな。俺の本気を受けてみるがいい!!!」



男がそう言うと俺は身構えた。男の左足が後ろに下がり走ってくると判断した時にはもう遅かった。


男の右手が俺の顎に当たっていた。そしてその反動で俺は後ろに吹き飛ばされ壁に突っ込む。


俺は何があったのか理解できなかった。いや、理解させて貰えなかった。物理限界を無視した攻撃は俺だけではなく周囲の壁にも力が発動された。


ソニックブーム。高速で動く物体の周りに生じる力である。しかし、その力はマッハなどの値まで加速しなければ生じない。



「ガフッ!…ハァ…アリかよ。物理の限界ぐらい守りやがれ!」


「これが鬼の限界だ。人間やその他の亜人では到底成せない技だ。」


「成せないって…成せたらいけないんだよ!」



いくら俺が作られた人間だとしても物理の限界を超えることはできない。あいつは慣性も加速も完全無視である。



「クソが!!」



俺は壁から体を起こし地面に降りる。多分顎の骨はヒビが入ってる。意識が飛ばなかっただけマシだ。



「今のは単なる準備運動のつもりだったのだが?」


「準備運動で物理限界を超えれたらそれは準備運動って言わないんだよ…」


「まだまだ行くぞ!!!」



また男の体が消える。そして今度は俺の腹に物理限界を超えたパンチが入る。そしてジェトコースター並みの速さで俺は壁に打ち込まれた。


吐血し視界がボヤける。いくら肉弾戦だからと言っても物理限界を超えた攻撃は真正面からロケットランチャーを喰らっているようなものだ。骨は折れるし下手すれば粉砕される。


ボヤけた視界で男を見ると男はコッチを見て姿を消した。そして俺の正面まで跳び拳の雨を浴びせた。


肋骨が折れ、腕や肩の骨にヒビが入るのがわかる。段々痛みが無くなってきた。




ーーーーーーヤバい死ぬかも…。



全く認識できないし、攻撃をまともに喰らって動くことすら辛い。指先一つの感覚も無くなってきた。



『なぁ、いつまでそんな腑抜けた事したんだ?テメェのターンは終了だ。俺がお前だ。』



今この状況で一番聞きたくない声が聞こえた。その声の主は俺が最も嫌っている人間であり、命の恩人でもあり、一番自分に近い人間である。




男は一度攻撃を辞め地面に降りた。もう俺が死んだと思ったのだろうか。多分何もしなかったら死ぬだろう。


が、俺はまだ死ねない。無事で帰って来ると約束し、勝ってくると宣言し、こいつの相手を任されたのだから。




その為なら俺はどんな手段でも使う。それが一番嫌いな方法であったとしても。





「おい、クズ野郎!・・・・・『変われ』」





「?まだ息があったのか、そこで寝てたら楽だったのにな。・・・・死ね!」



男はさっきと同じように消える。そして俺の目の前で姿を現わす。そして今度は俺の顔面にストレートを打ってきた。俺はさっきと同じようにその拳に殴り飛ばされ・・・・・なかった。




大神雷はその拳を軽く避け男の腕を斬り落とした。




「おいおい?お前の腕は豆腐かよ?」




















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