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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第二章 亜人と人間
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第十六話 鬼と死神と聖神とチーター

刀と大斧がぶつかり合い火花が激しく散る。お互いに魔法は打ち消されると理解しているので全て武器を使った白兵戦である。


ガキン!と音が鳴り響く。今ので何合目だろうか、百回は軽く越したと思う。鍔迫り合いの状態になり両者一歩も引かない状況である。すると男が詠唱しライの後方で魔法陣が展開された。



「『我が闇の彗星よ 獲物の命絶つまで 急追せん』」


「チッ!いい性格してやがる!」



ライは蹴りで男を牽制し距離を取る。そして、背後から飛来する黒い炎を纏った五つの隕石を前方に走って落下地点から離れる。隕石は五つとも地面に落下し大きな穴が空く。


反撃としてライがハクロウを抜こうとした瞬間、大穴から五つ全部の隕石がライ目掛け突っ込んで来た。



「ホーミング機能付かよ!アレじゃあ当たったら即死だな」


「それだけじゃないぞ!!」



男は横から大斧を振りかぶり走って来た。前方からは隕石が、横からは男が走って来る。前後左右どの方向に避けてもどちらかとぶつかることになる。



「舐めんな!!」



隕石にアンチ魔法弾を撃ち込み全て霧散される。そして横から襲いかかって来た男を刀で受け止める。ガキン!と鋭い音が鳴りギチギチと音が鳴る。


このままでは拉致があかない。そう判断したライは後ろに後退し刀を逆手に持ち変えた。男はライの行動に疑問を抱いたそぶりを見せるが、深く考えず大斧に魔法を纏わせ突進して来た。



「我流・・・・技名考えてなかった!」


「舐め腐りやがって!!」


「それはテメェだ。」



男の大斧の攻撃を刀のカーブで緩やかに右に流す。そして、空いた男の右半身を斬り裂く。肉が裂け鮮血が飛び散った。




俺はこんな体のせいでアホみたいに何回も襲われた。こんな状態だといつ死ぬかわからない。だから俺は武道を必死に習った。けれど、そんな技も大人と子供では体格が違うため通用しなかった。


つまり俺はどれだけ武術を学ぼうとこんなチッポケな体のウチはただのボディガードにすら勝てなかった。柔道の投げ技をしようとも重すぎて上げることができなく、殴ったり蹴ったりしても急所に入らない限り相手は崩れない。


そんな中である日ふと思った。アニメやマンガの世界の技を丸パクリすれば何とかなるのでは?と。


アレらを現実でできるのであれば確実にチート能力だろう。自分よりデカイ怪物を斬り倒したり蹴り技で吹き飛ばしたりと体術だけでも敵を殺すことができる。


それからはマンガを片手に、アニメを見ながら同じ動きができるように反復練習した。


そして、俺は殆どの技を習得し使いこなせるまで行き着いた。そこからはもう何も怖くなくなった。目線読み、足さばき、体捌き、斬鉄剣、色技。ここまでできれば相手が鉄パイプだろうが拳銃だろうが全て対処できた。


さっきの技も誰かの技を現実でも使えるように変化させたものである。そして、これらの技は異世界では無い技ばかりである。





「第二ラウンドとしようぜ!鬼さんよ!!」


「クッ!」



ライは順手に持ち変え納刀し、居合の構えをとった。






意識はもう散り散りとしている。先程から薄汚い高笑いが聞こえるが悠長に聞いてはいられない。


口からは血が漏れ出し、背中からはおびただしい血の量が溢れ出ている。




ーーーー母さんはこの男に殺されたんだ。


僕が騎士団に入る前、寝たきりの父からその言葉が告げられた。父はベッドの横にある引き出しから一枚の写真を取り出し僕に見せた。


黒髪、黒目で首に荒い傷跡があり、長身で体は痩せていた。母が殺されたのは僕がまだ乳児だった頃、父は国の会議に出席していた為おらず母と二人だったそうだ。


母は剣術では右に出るものはいないと言われていた剣の使い手でとても強かったそうだ。しかし、母は殺された。


その時はどんな状況だったのか、と父に聞いた所母は僕を守るために戦い、そして敗れたと言われた。


その話を聞いた時の僕はどんな顔をしていたのかは知らない。けど、その時の気持ちは今でも覚えている。



ーーーーこの男を殺す。無惨に、酷く醜く、母を殺した罪を償わせる為に。




「・・・僕はお前を殺す!!この為だけに剣を振ってきたんだ!」


「ギャハハ!笑わせるぜ!その血まみれの体で俺を殺すだ?気絶してた方がよかったんじゃねぇの?」



タバールは軽快に笑う。自分の首を体と合体させデュラハンの状態から人間の状態へと戻った。



「関係ない…。一太刀で…終わらせる!」


「ギャハハ!やってみやがれ!死に損ないが!」



タバールの周りに飛び散っていた血が右腕に集まる。そして、グニャグニャとかき混ぜられ一本の巨大な鎌へと変貌した。



「俺はデュラハンだ。つまり死神、死を予言する者。お前の死を宣告してやるよ!お前はここで死ぬ。せいぜい今までの行いを悔いるがいい!!」


「僕はここでは死なない。ライが、シャロさんが、あの子がまだ戦っているからね。さぁ、最後にしよう死神!」



タバールは巨大な鎌を振りかぶりながら突進して来る。僕は剣に力を込める。すると、剣からは眩い青白い光が光り輝き剣を包む。タバールは一瞬驚くが気にせず走って来る。



「死にやがれ!!お前達親子は俺が殺す!!!」


「死ぬのは君だ!ハァァァァァアアア!!!」



タバールは空中に飛び上がり上から振り下ろそうと大きく振りかぶる。イワンは眩い閃光を放つ剣を下から振り上げた。



死神の鎌と聖神の剣がぶつかり合った。


禍々しい漆黒と神々しい純白がぶつかり合い周囲が震えだす。地面が割れ、壁にヒビが入り空間全体が揺らめきだす。



「ハァァァァァアアア!!!!!」


「死ねーーーーーーー!!!!!」



すると、鎌の先端が少し、また少しとヒビが入り始めた。そのヒビは段々と進み始め反対側まで行ったと同時に鎌は二つに割れた。



「な、んだと!?」



タバールは驚愕し、思考が止まる。慌ててまだ残っている棒で反撃しようとするがイワンの攻撃の方が早い。



「終わりだーーーーーーー!!!」



イワンの剣はタバールの体を斜め上に斬り裂き、首も斜めに切断される。



「グゥああああああああああ!!!!」



タバールの断末魔が響き渡る。


体から、顔から大量の鮮血が噴き出し、肉が溢れ出て内臓が見える。その血肉辺りを真っ赤に染めた。


イワンは剣を払って血を落とし背中の鞘に納めた。



「母さん…僕…母さんの仇を討ったよ…」



イワンはそう言い終わるとばたりとうつ伏せに倒れた。


















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