第十三話 可憐なる少女
黒いフードを被った男は部屋の外に出る。数十分前、ゴラド王国の国王が会議室に来て会議は開始された。会議中男は一言も話していない。つまり男は戦争に参加はしない。武器を流すことと情報を与える事が男の役目だ。
「旦那ー!会議はどうでしか?マトモな策を考えてる奴はいたんですかい?」
後ろから黒髪の男がヘラヘラしながら話しかけて来る。フードの男は振り返らずに答える。
「さぁな。俺は話を聞いていない。ただ席に着いていただけだ。お前は今までどこにいた?」
「俺ッスか?俺は王国で遊んでましたー!今回の戦争って正直意味あるんですか?これなら俺達が全員で攻め込んだ方が早いかするんスけど?」
「別に今回の俺達の目的は国取りではない。ただの戦力の確認だ。」
「ギャハハ!旦那も硬いんですねー!あんな雑魚俺一人で十分ッスよ!それよりも上から侵入して来てる奴らはどうします?片しましょうか?」
「いや、いい。三人程度ならここの奴らが自力でなんとかしてくれる。相手はクリフォトの奴らだ。優雅に見てやろうじゃないか。」
「ギャハハ!そうッスね!俺も今回は見ておくだけにしておきますわ!」
二人の男は階段を登り展望台へ向かった。その二人を壁からチラチラと見る影が一つあった。
「オラァァァ!!ドケや!ゴラァァ!!」
ライは盛大に刀を振って敵を孕ませる。今は三層目、何層まであるのかはわからないが早く着かないと逃げられてしまう。
「ライ!階段だ!」
イワンの言葉を聞いて前を向くと目の前に大きめの家のような大きさの手が落ちて来る。その手をジャンプで後ろに躱す。が、躱した先には獣人が武器を構えて待ち構えていた。
「ハァ!!ライ君!」
「あ?気にすんな!先に行け!」
俺はハクロウで牽制し着地点を作る。俺は完全に包囲された。敵は巨人、獣人だけだが舐めてはいられない。
「おい。一つだけ聞いていいか?お前らは俺に喧嘩売ってんのか?値段は俺が指定してもいいよな?」
「「「ふざけんなよ!この傀儡風情が!!」」」
向こうは殺る気まんまんらしくキッチリ売って来る。普通に考えればこんな状況無双ゲーム以外なら即死だ。サバゲーでこの状況だとただのイジメである。けれど、ここはゲームの中ではない。
ここは現実なのだ。つまり、相手は入力されたコマンドをただ正確に動くロボットではない。それが指し示すのは。
「センス、体の使い方そして恐怖だ。」
俺は居合で敵の腹を斬り開く。盛大に血が噴き出し視界が真っ赤に染まるが無視する。巨人三体が上から俺を潰そうと足で踏み殺しに来たが躱して一体の足の腱を斬る。バランスが取れなくなり倒れかける巨人を踏み台にし残りの左にいた巨人の顔に乱射する。
「怖いだろ?恐るだろ?これが現実だ。これが恐怖だ!テメェらとの遊びは飽きた。死にたがりは勝手に腹切って死んどけ。」
俺が殺気を全開に出してそう言い放つと全員が畏怖した。納刀し急いでシャロ達に合流する。
「さて、次は四層目か…。面倒臭いな。」
「仕方がないだろ。地道に進んで行かなければ到達できないんだし。」
「いや、俺にいい提案がある。」
階段を降りて四層に着く。すると、今度は完全に武装された集団が出口で迎撃態勢が整っていた。
「そうだな。まぁ、邪魔だから人質一人出して全員回れ右して帰れ!」
「いや…ライ君。流石にそれは…。」
「ふざけんなよ!この傀儡!絶対に殺してやる!!」
「だから!お・・・・」
「・・・ライ君を傀儡呼ばわりですか?全員シャロが丁寧にあの世に送ってあげます!!」
「え?ちょっと!・・・・一人だけ残しておいてね!」
何故か俺より傀儡の部分に反応したシャロは大鎌を振りかぶり襲いにかかる。一人、また一人と首や四肢が飛んで行っている。
もうアレだな。死神だなアイツ。鎌持って血塗れで笑顔って絵面が大変なことになっている。
シャロは片腕が無くなった状態の犬の獣人を俺らの前に差し出した。舌を出して「テヘ♪」って顔しても顔が血塗れでだから可愛くない。
「まぁ、いいや。おい、お前!テメェらの親玉はどこにいる?早めに教えた方が身のためだぞ?俺は拷問が苦手なんだ。死ぬかもしれない。」
「ヒ!ヒィ!ろ、六層です!!い、命だけは助けて下さい!!」
「六層ね。オッケー。いいぞお前、無駄なシーンが無くて。いつも命乞いの為に長々とシーンが書かれている話は嫌いだからな。シャロ、止血だけしてやれ。」
「了解でーす!」
シャロが魔法で止血をする。血は僅か数秒で止まり、この犬の獣人は落ち着いて涙を流している。
まぁ、色々思うことがあるんだろうな。
シャロとイワンが次は?って顔をしているので
サッサと次の作業に移る。俺はいつものように弾を変え球を作る。今回は二階分穴を開けるので今までのサッカーボールからバランスボール程度まで大きくする。
因みに大きさは五段階程あり、一段階目はテニスボールで二段階目はバレーボール、三段階目がサッカーボール。そして四段階目がバランスボール、五段階目が大玉ころがしの大玉ぐらいである。最高まで行くと誰かの必殺技程まで行く。まぁ、そこまで大きいと国一つ滅ぼせるが使う機会は無いだろう。
「ね、ねぇライ君。その球さっきの倍ほど大きいんだけど…。」
「?そらそうだろ。四段階目なんだし。お前、そいつらがいるのは真下か?」
「え、は、はい!真下です!」
「んじゃ少し逸れるが仕方ないな。」
俺はハクロウを少し先を着弾点に設定し引き金を引く。さっきよりも凄い轟音と閃光が響き敵は何が何だかわかっていない状態である。
「あー目が痛え。サングラス作らなきゃいけないな。また、借りるか工房。おい、行くぞ?」
「ライ、その技は凄いが味方への被害も考えてくれ。全体がいる前でその技をされたらひとたまりもないよ。」
「あぁあああ!目が痛い!!」
「大丈夫か?シャロ。それとイワン。今のはフリか?フリなら大歓迎で行ってやるぞ?」
「絶対にやらないでくれ!特に貴族の皆さんの前とかでは絶対!!」
「わーったよ。やるしかないな。」
俺のボヤきは誰の耳にも届かなかった。一気に六層まで穴が貫通したので飛び降りてボス戦開始である。
「ねぇ、何かがコッチに来るよ?」
「あ?敵襲か?岩でも落としとけ」
「え、けど女の子だよ?それも小さい…」
「おい、シャロ場所変われ!ロリだと!この世界にもロリ戦士がいるのか!?」
「ライ、もしかして小さな子が好きなのかい?」
「い、いや断じて違うから!」
そんなバカな事を言い合っていると穴から銀髪の髪を肩まで伸ばし頭に耳が付いている小さな女の子が飛び出してきた。




