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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第一章 黒髪黒瞳の憂鬱
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第二話 初陣

突然の爆発。広場にいたほとんどの人達は何が起こったのか全くわかっていない。わかっているのは、敵に魔法を放っている少女と深くフードを被って建物の端で観戦に徹底している彼の二人のみ。



「・・・・!!、・・・・!!」



金髪の少女は両手から魔法を発動させ、一人で襲いくる6人の黒髪の集団を相手している。1対6と圧倒的に女の方が不利なのだが、どちらかというと少女の方が優勢な状況であった。双方魔法を放って慣れているような手つきで相手を殺そうとしている。が、襲って来た方は一人、また一人と徐々に数が減っている。



「へぇー、この世界には魔法があるのか。やっぱ魔法は大事だよなー。助太刀は今んとこ大丈夫そうだけど……てかあいつら日本人?」



と深くフードをした彼は呑気な事を言っているが確かに的を得ている。最後の敵を少女が青白い光で射抜き、戦闘は一時終了する。が、奥から新手の敵が一人だけ現れる。少女は両手に魔法陣を構築し、有無も言わさず新手に魔法を放つ。青白い電撃が走り新手の大柄な体を破壊せんと直進する。体に当たり、血を撒き散らしながら倒れ━━━━━━



「ん?何だ今の?」



━━━━━だが彼は倒れなかった。いや、一切の傷も無く仁王立ちしている。彼と少女は今の一瞬の出来事になにがあったのかわからず考えを巡らす。しかしその時間を許さないとする男は前に前進し、次から次へと魔法陣を展開する。そしてそれらの魔法陣から灼熱の赤色をした業火球が現れ、立ち尽くす彼女の方へ襲いかかった。少女はそれを迎撃せんと魔法陣を一から展開させるが、遅い。先に業火が少女を襲い、彼女は広場の奥へと吹き飛ばされた。



「おい嬢ちゃん、何か言い残すことはあるか?」



悪役ならではのセリフを吐いて少女を脅し、また何か言おうとする。この大柄な男はいかにも悪役っと言うような顔で女に一歩、また一歩と距離を詰める。



「そんか怖い顔すんなよ。お前は俺らと同t…ガッ!?」



しかし男の言葉は、フードを被った乱入者によって続かなかった。



「おいおい、お前ナンパの仕方も知らねぇのかよ。まぁ俺はしたことねぇけど」



勢いよくフードを外し顔を露わにする。現れたのは黒い髪に黒い瞳をした少年━━━━━



「俺、参上ッ!!!」



少女は肩で息をしながら壁にもたれつつ立ち上がる。そして目の前にいる彼へ自身の警鐘をめいいっぱい鳴らした。何者なのか全くわからない。それだけの理由だが、それだけで十分過ぎる理由だ。




「おいおい飛び過ぎだろ?その体は紙でできてんのか?」



だが、彼はそんな少女の事など気にせず先程殴り飛ばした男を煽る。



「おいガキ、調子に乗ってんじゃねぇぞ!ぶっ殺してやる!」



男は怒気を含んだ声で脅し、両手に魔法陣を展開する。魔法陣から紅蓮の炎が現れ拳を包む。接近戦でカタをつけるらしい。



「あぁ、相手してやるよ。来な?」


「ウオォォォォ!!」



俺はサッと構えて、咆哮とともに走り込んでくる男を静かに待つ。男は炎を宿した右手を振り上げ、力の限りで真っ直ぐに腕を伸ばした。その炎を纏った拳が俺の体を穿つ━━━━━ことはなかった。拳は俺の頭の上を通り抜けそこで止まる。代わりに俺の右手は男の肺の場所に当たり、振動と共に男を吹き飛ばした。



「発勁。やっぱり異世界には現代武術は通用するよなぁ。覚えてて正解だったわ」



ため息を一つ零し、朽ちる男をソッと地面に倒す。ちょっと、気になったものを徴収してポケットの中にしまった。戦利品は必要だろ?



「・・・あんた一体何したのよ?」



後ろからか細い声が聞こえてくる。喋んないといけねぇーって思いながら、それを隠すように優しく爽やか(?)な声で答えた。



「あぁ、悪い忘れてた。大丈夫か?」



忘れてたは失言だったかな?スゲー睨んでくる。そらそうだろうな。人が死ぬのは忘れられた時だってお医者さんも言ってたし。



「えぇあんたのおかげでね」


「そっかなら良かった。よし、じゃあ俺はあの城に行くから。またね!」


「えっ、ちょっ!そっちは王宮よ?!」



何?王宮に行ったらダメって御触書でもあるの?別に道場破りみたいなことするんじゃないから良いだろ?ほら、よく王宮でハーレム作ってる主人公とかいるし。



「問題でもあんのか?」


「いえ、別に。………そう、借りを返せないかもしれないでしょ?」



うーんこの金髪少女、結構な堅気さんだなぁ。そんな女の子が借りとか言っちゃダメだろ。いや、コレはツンデレ特性のテンプレか。



「借りなんか別にいらねぇよ。名前だけ教えてくれよ。その、借りを返してもらうために、さ」


「私はイリス・トルエノ。この国の第四貴族よ。多分、知ってるでしょうけど」


「ごめん、知らねぇわ。あぁ俺は大神雷。旅人になろうとしてるけど、旅人になれない人みたいな?」


「何よそれ?」



彼女がツッコミを入れ俺がわざわざ答えてくれたことに苦笑していると、俺の首の周りに複数の剣が突き付けられた。



「そのまま両手を挙げろ!変な動きをしたら斬る!」



流石衛兵。斬るって言葉に重みがあるなぁ……なんて思いながら両手を挙げる。



「なぁ、一つ聞いてもいいか?何でこんなに来るのが遅かったんだ?」



素朴な疑問をリーダー格の男に聞く。爆発があってから軽く30分は経っている、幾ら今日祭があったにしても遅すぎる。俺の疑問にリーダー格はこう答えた。



「貴様には関係ない。大人しく捕まり、牢に入れ!サマエルの傀儡が!」



あ、この騎士様は少し頭が逝っていらっしゃるみたいだな。何なんだよその厨二病全開の単語は。まだ思春期抜けてないのかな?



━━━━が、凛とした声が愚兵の愚行を遮った。



「そこまでよ衛兵!この男は第四貴族のトルエノ家が連行する!!大人しく手を退きなさい!」



そう言って俺を解放させる。流石第四貴族……よくわからんが凄いんだろうか?衛兵が剣を下げ納めてる。



「さて、行きましょうか。罪人さん♪」



そう言って俺の両手に魔法で手錠をかける。何度目かのその触感に、懐かしみを覚えながら俺は答えた。



「あぁわかったよ。お嬢様」



何故か少し嫌な顔をしていたが、すぐに平素に戻して歩き始める。



ここから俺の波乱万丈の異世界生活が始まった。

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