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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第二章 亜人と人間
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第五話 忍耐力は大切

「それじゃあ、わかってんなシャロ?お前はあくまで亜人族とコミュニケーションを取るための役だ。あの何とかって言う国を滅ぼしに行く時は出番はないからな。」



一晩経ち、早朝からロイテとシャロが準備してくれたお陰で、朝に出発する事になった。今は出て行く前にシャロと打ち合わせをしている所だ。



「了解でーす!けど、ライ君の援護ぐらいならするからね。」


「それは好きにしろ。俺にその援護が当たらないようにな。」


「そこまで魔法下手ではありませーん。」


「はいはい。んじゃ行ってくる。後はよろしくなーお前ら!いつ帰ってくるかはわからんから。」


「行ってらっしゃい。・・・・絶対死なないでよね。それにシャロに怪我させたら断食一ヶ月で。」


「ま、マジかよ。断食一ヶ月とか死ぬじゃん。大丈夫だって俺もシャロも絶対に帰って来るから。心配すんなって。」


「ホントだよー。イリス様は心配し過ぎだよね。シャロとライ君が行くんだよ?こんなとかじゃ死なないよ。」


「戦闘狂…。」


「おい!聞こえてんぞヘリス!」


「・・・・耳もいいのね。まぁ、ちゃんと帰って来ること。それが約束よ。」


「わーったよ。どんだけ言うんだよ…指切りでもしたいのか?」


「?よくわかんないけど嫌よ。なんかイヤらしいわよ。」


「どこがだよ!?唯の指切りだぞ?」


「ほら!時間無いんだからちゃっちゃとする!」


「いきなり態度変わりやがって、おいおい!引っ張るなよ!」


「こちらの準備も出来たのでいつでも出発できます。」



ロイテから最終確認の終了が知らされ、シャロとイリス達に緊張の色が見られる。ライはいつものように笑ったままフラフラしている。



「なんで事の張本人がその態度なのよ……。」


「え?だって今緊張したって意味なくね?毎回思うんだけどさ、なんでイベント事の数日前に緊張しなくちゃならないの?別にまだ日はあるし、失敗とかする気ないから余裕じゃん。」


「ハハハ!ライ殿は中々にしっかりしてますな。私もまだまだ未熟です。」


「ただの国取りぐらいなら余裕だろ?そんな事より、知らない女の子を助ける方がずっと緊張するぜ?」


「え?あの時そんなに緊張してたの?」


「当たり前だろ!知らない子だぞ?女の子に話しかけるんだから緊張するに決まってんじゃん!」


「「「どこの人見知りだよ!!!」」」


「声ぴったりだな…。世の中のコミュ障どもに聞いてみろよ。みんな同じこと言うから。」



ライは呆れた態度をとりながら三人の顔を見やる。こいつらにコミュ障ってのを教えてやりたいものだな。


人との会話を一ヶ月程しなくなると大体喋れなくなる。進級してボッチにでもなってしまったら、もうお先真っ暗だな。俺は小学校の時からずっとそうだったけど。



「それじゃ、話もこれぐらいにして行くとするか。シャロ!行くぞ!」


「あ、了解ー!今行きまーす!」



今回は二人だけなのと、イリスが乗っていないので小さな馬車だ。けれど、俺とシャロだけなら十分な広さである。運転は俺にはできないからずっとシャロにお願いしているが、他の事は大体俺がやることにしている。



「「それじゃ、行って来る!バイバーイ!!」」


「「行ってらっしゃいー!」」



別れの挨拶を済ませると馬車は加速する。後ろを振り返るとあっという間にトルエノ邸が小さくなっていた。



「さて、シャロ。今回の王都での用なんだが、俺は初めの会議?みたいなのが終わったら、予定がない限りずっと鍛冶屋に引き篭もってるんで。」


「了解ー。え?今なんて言ったの?鍛冶屋?引き篭もる?」


「ん?あぁ、少し作りたい物が出来たからそれをコンラートの爺さんに作ってもらうんだよ。」


「何作ってもらおうとしてるの?ライ君?」


「まぁ。完成してからのお楽しみってやつさ!」


「ケチ…。教えてくれてもいいじゃんか。」


「悪いな。俺の趣味は人を驚いた顔を眺めることなんで。」


「悪趣味ー!さいてー。」


「冗談だってば!そんな趣味じゃないって!多分…。」


「最後まで否定しなよ!」



俺とシャロはその調子で王都まで駆け足で進んだ。













「ふぅ。着いたー!あんまり時間掛からなかったな。」


「そうだね。まさか、馬車にあんな機能がついてるなんて思ってなかったよ。」


「機能って…。ただのニンジン作戦だぜ?」



俺がやったのは、馬を休憩させている時に拾った枝と馬車の中にあった紐、臨時の食料のニンジンで作った特製ニンジン餌を二匹の馬の前に一つず

吊るしただけ。すると、まぁ驚いた事に馬が目の前のニンジンを食べようと必死になって走るからさっさと着いたってわけ。単純な話だろ?



「けど、まさかあそこまで釣られるとは思ってなかったな。どんだけ腹減ってんだよ。」


「ホントですよ!どれだけシャロが操縦を苦労したのか知ってますか?ライ君はずっと笑ってましたけど、ほとんど通ったの獣道ですからね!」


「え?そうなの?前の道とは違うなーとは思ってたけど…。」


「そうですよ!時間短縮にはなりましたが全然楽ではなかったです!」


「悪かったって…。帰りもやろうか!」


「反省する気あります?刈りましょうか?その頭?」



シャロはそう言うと大鎌を右手に召喚する。全く冗談ではないと悟りライはすぐさま飛び退く。



「はい。すみません。反省してます。もうしません。許して下さい。」


「帰りはライ君に運転してもらいますから。」


「いや、俺そんなの出来ないから!行きしよりも酷くなるよ?」


「知りませーん。シャロは別の馬車に乗るので。」


「マジでごめんなさい。深く反省してます。」


「聞こえませーん。」



俺は帰りが死亡フラグを立てたので必死に下ろそうとしいた。が、フラグは依然立ったままである。



「あれ、ライじゃないか?」



どこからか爽やかイケメンの美声が聞こえてくる。俺はそれを横目で見ながら答えた。



「何があれ?だよ。さっきから気づいてただろーが。なぁイワン?」



俺は爽やかイケメン君の出鼻を挫く。これが中々のストレス解消になるので俺の日課となっている。



「バレていたのか、僕もまだまだ修行が足りないね。」


「いや、お前みたいなのが修行して強くなったらゲームバランス壊れるから。今のままでも十分過ぎるほど強いから!」



俺の中で、イワン・アテア・ヘリオスという人間は最強と格付けされている。確かに人間性も顔も声もどれを取っても最強なのだが、戦闘面でもその最強は受け継がれているだろう。



「ライにそう言われると少し驚くよ。」


「何言ってんだよこいつ。な、シャロ?」


「ホントですよ。なんですか?自慢ですか?」


「相変わらず厳しいな…。イリス様の人達は…」


「ハハ!そうでもしなくちゃウチの姫さんをイジることなんてできないからな!」


「そうなのです!」


「いや、主従関係が崩れているような気がするのは気のせいかな?」


「あ?一応成り立ってるから問題なし。」



俺とシャロの言葉でイワンは少し顔を歪ませるが、俺ら二人は当然だろう。ヘリスとロイテは無理だろうが。



「では、シャロは馬車を預けてきます。」


「おう!ありがとな。」


「では、僕達二人は騎士団本部に行くとしよう。ロイテ殿からライに情報の文書を渡していると伝言があった。シャロ殿ライはそこにいるので終わり次第来て下さい。」


「わかりました。」


「え?文書渡すだけはダメなの?」


「当たり前だよ。君がしっかりと報告しなくては。」


「マジかよ。まぁ、しょうがないか…。一応二人の推理だしな。」



勝手に自分も調べた事に加えたが、イワンは気づいていないのでお咎めなし。まぁ、騎士団長と会うこともできるし顔を覚えてもらうには十分だな。



「それじゃあ行こうか。ライ。」


「あぁ。そうだな。」



俺とイワンは王宮とは反対方向にある騎士団本部へ向かった。




騎士団本部と言っても、お城ではない。本部自体の大きさはトルエノ邸程なのでそこまで驚かない。が、敷地は別だ。どこかの某人気遊園地並みだ。道場、鍛冶屋、訓練所、寮・・・数えればキリがない。本部を真ん中に設置し、その周りをグルリと一周大きな芝生が敷かれておりその上に、施設が建っている。



「おい…。騎士団って何人いるんだよ…。」


「確か、全員で一万五千程かな。」


「その中で確かお前って一番隊隊長とか言ってなかったか?」


「そうだよ。僕が一番隊隊長で、二番隊がシリアス。三番隊がケイルだね。騎士団は全部で十五番隊まであるんだ。」


「人隊千人換算か?けど、隊によって得意なことが違うんだろ?」


「あぁ。四番隊は医療、五番隊は工作、六番隊は潜入。そして七番隊、八番隊は共同で暗殺。それ以外は主に戦闘、街の警護だね。十五番隊は別で主に軍事費や国との予算を計算しているところだよ。」


「んで、俺は何番隊なんだよ?十五番隊以外なら活躍できる自信がある。」


「だろうね。まだ、字はかけないんだろ?心配しなくてもライはまだ、どこにも所属していない。手柄が足りないからね。それにライは形は奴隷からの成り上がりだ、そう簡単に隊には入れてもらえないよ。例えライが僕達隊長格並みの力だろうとね。」


「はぁ。辛いな。まぁ、いきなり隊長って言われるよりは100倍マシだけど。」


「そうだね。おっと、ここが隊長のアレス・ディアナさんの部屋だ。」



イワンはコンコンとドアをノックし、返事が返って来るのを待つ。僅か数秒後に返事が返ってき、中に俺を通す。


部屋の中にはまるで軍神と呼ばれそうな、強固な肉体に身を包み、吊り上がった目をした男がいた。



「ようこそ。我が王国騎士団へ。君がオオガミ ライ君だね。噂は聞いている。そこへ座りたまえ。」

















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