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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第二章 亜人と人間
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第三話 漁夫の利

少し設定を変えました。


気づいた方は結構凄いです。

俺はとっさの判断で足で音を立て鬼二人の反応を一瞬止まる。その隙にテーブルの上に置いてある愛刀のローを取る。男と女、武器は無し。大切な情報だけ脳に入れる。


音には人を驚かす力がある。が、音は殆どの場合音楽として人を楽します事などに使われる。音だけなら、相撲で使われる猫騙しなどのように人の意識を一瞬だけ逸らす事ができる。しかしその一瞬は文字通り一瞬で持って5秒だろう。


5秒あれば刀一つ取るには充分以上だ。


俺は鞘から抜き去り、真っ黒の刀身を晒す。プリヘニト戦の戦利品として手に入れた黒燐岩をメインとした刀だ。滅多な事では刃こぼれすらしない。斬れ味も抜群、非の打ち所がない刀だ。



「おい。お前らは偵察隊か?答えないならここで捕まえて拷問する。選べ。」


「中々気が立っているようだね。普通鬼を見たら逃げるやけどね?」


「あぁ。お前らの種族の所為でコッチは胸が痛いんだよ。」


「シャロのことだね。わかっている。あの子には本当に悲しい思いをさせた。」


「あ?なんでお前があいつを知っている…。」


「それは私達が彼女の家族だからです。」


「両親か?けど、なんで今なんだよ?」


「いや、俺はシャロの父親でコッチは・・・」


「姉です。」



二人は自分とシャロとの関係を話す。俺はヘリスから家族がいるとは聞いてなかった。だから、捨て子なんだと勝手に結論付けていたが違うようだ。


捨て子ではないことへの安心感に合わせて彼女を捨てた事に対する怒りが溢れてきた。



「さっきの問いの答えはもう気づいているはずです。戦争が始まる。それはあなた達人間との決別です。」


「・・・なら、お前らはあいつを連れ戻せと命令を受けたのか?その場合なら確実に殺す。覚悟しろ。」


「あなたがあの子の事を大切に思っているのは理解しています。それに、私達の用はあの子ではなくあなたです。オオガミ ライさん。」


「それはどういう事だ?敵の戦力を減らしに来たのか?」


「それも違います。私達が幾ら鬼の力を今のあなたに勝てる確率は低いでしょう。私達の用は、あなたにシャロへの伝言を頼みたいのです。」


「伝言?何故俺なんだ?他の人間じゃあダメなのか?」


「いえ、あなたは彼女の過去を知らない。だから、今から頼む伝言に対し何の偏見もなく聞いて貰える。」


「さぁな。それは内容によるだろ?確かに俺はシャロの過去は知らない。が、その内容が彼女を傷つけるのかは俺が判断する。」


「それはあなたの判断です。言う、言わないはあなたが決めて下さい。私達からの伝言は『あの日は本当に済まなかった。お前には鬼の血が流れているが心は人間だ。だから、それを誇りとして生きてくれ!俺達をまだ家族と思ってくれてありがとう!』」


「・・・・。わかった。しっかり伝えておくよ。戦争にはお前らも参加するのか?」


「あぁ。参加する。が、この戦争は全く関係ないどっかが一枚噛んでいる気がする。ま、年の甲だが。」


「そうか…。死ぬなよ。俺はあいつの元気な姿をお前らに見せたいと思ってるんだから。」



俺の言葉で二人は嬉しそうな顔をする。二人は俺に会釈をして窓から外へ出て行った。



「いい親だな。・・・・・。」



俺の独り言は静かな夜に溶けるように消えて行った。





鬼二人と別れ次はロイテの部屋に行く。今は少し気分がいい。彼女の気持ちを少しでも晴らすものが見つかったのだから。


ノックをし、返事が返って来たので室内に入る。中は書斎のように本棚ばかりの部屋だった。中央の椅子に案内され、座らされる。ロイテは俺の向かいに座って一息入れてから話し始めた。



「ライ殿。今回のような戦争は今まであった事がないです。これが意味することはわかりますか?」


「あぁ。つまりコッチは相手の実力がわからない。それは相手の戦力がわからないのと同じ。」


「そう。つまり情報が足りないのです。そして、他国との戦争は幾度かありましたが亜人族との戦争は・・・。彼らは人間ではありません。これが、私が今回の戦争で思うところです。」


「・・・。ロイテさんが言ってることは分からなくはない。あいつらは人間でも魔獣でもなぇ。それが一番の恐怖だ。」


相手が人間や魔獣なら問題ない。人間なら馬力自体の差はほとんどない。あるのは技の差のみだ。魔獣はほとんど危険はない。たかが動物、知能が低いし相手の攻撃のほとんどが噛み殺すことだ。落ち着いて捌けば問題ない。


が、亜人はそうはいかない。獣人は動物の馬力に人間のように技を使う。人間と獣を足したもの、それはどちらの長所も持っていると言うこと。

エルフなどは高度な魔法が使えたり、鬼は人間より10倍強い。巨人なんて論外だ。技がなくても唯の馬力だけでそこまで差をつけられたら手がつけられない。



「まぁ、流石の俺でも鬼10人に囲まれたら死ぬかもな。」


「ハハハ!鬼を10人も囲ましてくれるのですか!

まぁ、確かにイリス様達との模擬戦を見ていると無茶をしなければ大丈夫でしょう。ライ殿に死なれたら私との約束が破られますからね。」


「・・・。あぁ。そうだな。俺はこんなとこでは死なない。もう大切な人を泣かすのは疲れた。」


「ライ殿も過去に何かあったんですか。詳しくは聞きませんが察しておきます。」


「まぁ、少しだけな。それで?本題には入ってないだろ?さすがに呼び出しておいてこれじやあ薄すぎるぜ?」


「察しがいい人で困ります。そうです。今回の戦争は何かおかしい点が多すぎます。」


「その話か…。俺もそれには同感だが証拠がないから何とも言えないからな…。」


「それもそうです。が、その点もおかしくないですか?疑問な点は多くあるのに一つも証拠が見つからないなんて。」


「そう言われたらそうだな。」


「そしてその不可思議な点もそうです。なぜ犯人は見つからないのか、なぜ全種族が怒ったのか、なぜ騎士全員なのか。」


「どっかの第三者が漁夫の利を狙っている…。殺したのは何処かの殺し屋で、種族を焚き付ける。

そしたらコッチは相手が亜人なんだ。生半可な戦力じゃ叩きのめされる。だから、俺らは全戦力で叩きのめす。そして、そこで幾らかは戦力が下がるからそこを狙う…。」


「その可能性が一番高いですな。しかし、何処がそれを狙っているのか?」


「なに惚けたんだよ。俺にこの話を持ち込んだ時点で大体わかってるんだろ?」


「困りますな。そこまであの時点で察しておられたのですか。おっしゃる通りです。ここ数日各地を回り情報を集めてまいりました。そして、その黒幕として一番可能性が高いのが北にあるゴラド王国です。」


「北か…。どんな国なんだ?」


「武力国家。距離は遠くはなく馬車で約二日です。武力国家と言っても戦力自体ではそこまで強くなく順番だと下から数えた方が早いかと。」


「その順番って俺らの国は何番なんだよ?」


「二番ですな。しかし、一番との差は歴然でしょう。三、四番の国と手を組んでも勝てるかどうか…。」


「おいおい。それはヤバいだろ。相手は神かよ。」


「それほど強いと言うわけです。だから、この戦争をいち早く終わらすにはゴラド王国を潰す方が良いかと。」


「だろうな。行ったら上に掛け合うよ。」


「私の名前を出せば納得すると思います。そしてこれがその書類です。」


「おー!サンキューな!これで何とかなりそうだ。んじゃ、俺はもう行くよ。」


「えぇ。おやすみなさい。」


「あぁ。おやすみ。」


「・・・。最後にシャロの事なんでが、私が思うにライ殿が一番彼女を救える可能性が高いと思います。」


「・・・・。俺はあいつの過去を知らない。けど、それイコールあいつを助けれるとは限らない。俺にだってあいつと同じような過去があるしな。」



俺はそれだけ言ってロイテと別れた。


俺にはあいつの重荷を軽くすることはできるが、過去の呪縛から逃すことはできない。


俺の手は人を助けれるような綺麗な手ではない。

黒く赤く色がついた手に誰が触りたがる。


ライはフラフラと自室に帰り意識を沼に放り込んだ。






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