第四十三話 終焉
……何故三つも同じのが投稿されているのやら。
すみません、多分どれも同じです。
三つの内好きなのを選んで下さい笑(○ケモンかよ)
暗い廊下に太陽の光が差し込む。松明の光では到底表せない明るい光。それを見てここが出口なのだと理解した。
隣を歩くイリスは急ぎ足で階段を登り、出口を目指す。俺はそんな彼女の様子を後ろから微笑ましく眺めながら、ロイテに肩を貸して彼女の後を追う。
「━━━━━━━━」
外へと辿り着いたイリスは何も言わず、ただ見つめた。しかし、それが今この光景を表すには十分足りる物だろう。無論、俺もロイテも彼女と同じ態度だ。
━━━━火は地獄の如く燃え盛り、倒れる尸の数は無限に等しい。手っ取り早く「ここは地獄です」と叫んだ方が早い気さえする。それほどまでに、ここを人間が住む地だとは言えない現状だった。
あちこちで人の雄叫びが聞こえる。その雄叫びも残すのは血と動くことのない肉の塊のみ。
笑えて来る。ここまでして何が世界を治めるだ。ただの虐殺王にしか成り下がらない。神と言う名の悪魔がやろうとしているのは、正に虐殺。神からの虐殺だ。
「人の事言える口じゃねぇが、あの野郎相当イかれて来やがったな」
「ん、そうみたいね。……ライ、私の騎士らしく盛大に綺麗にこの戦いを終わらせなさい」
彼女は、イリス・トルエノはそう命を出す。
久しぶりに命令された気がした。否、多分そうだろう。彼女は貴族だが、人の上に立つ事が嫌いだ。彼女が奴隷を、騎士を持たなかったのはそれが理由だ。
なぜ嫌うか。そんなのは後で当人の口から聞けばいいだけのこと。俺と似たり寄ったりの道を通って来たんだろう。答えた道は全く違うかったとしても、そこへ辿る過程は似ている。
「━━━━━承りました、イリス様。これより騎士オオガミライ、命を賭してこの戦いを終わらせに参ります」
なぜか異様なまでに体がムズムズする。心意気は変わっても、やはり恥ずかしさとやらは抜けきれないらしい。スゲー気持ち悪い。
「はい。いってらっしゃい」
「おう、行ってくる」
少年は洞窟の中から足を一歩踏み出す。目前の門を両手で開け、戦場へと参った。
焦げた物の匂いが終始続いている。何が焦げたのか、そんな事を考えている暇はない。敵の場所は、嬉しいほどにデカデカと見えている。『神の軍勢』、その全軍の大きさは大名行列の比でないほどの長さと量だ。
今正にこらから虐殺を始めようとする頃だろう。ベリアがどれだけ持ち堪えていれるか、望みとしてはそれが最後になる。
そして俺は乾いた地面を蹴った。
ーー
屋根瓦を蹴り、速度を緩めないまま音を、気配を消して前へと進む。瞬間、光の球が目の前で弾けた。
攻撃、にしては目眩しの割に光が弱い。その上、攻撃もして来ない。流れ弾か?考えがそっちの方へ行った辺りで声が聞こえて来た。
「やぁ、オオガミライ。私の事覚えてる?」
現れたのは一人の女性。少女と呼ぶには少し大人で、おばさんと呼ぶには若い微妙な年齢の女性━━━━リリィだ。
紫っぽい髪をクルクルと指で弄りながら、リリィは不敵な笑みを浮かべる。
「覚えてる、とだけは言っておこうか」
正直な感想では、リリィは中々疑わしい部類に入る。カロほどではないが、詐欺師としては多分俺の中で上位に入るだろう。
どこから騙されているかわからない。ベリアではなく、リリィが堕帝って線も浮上するぐらいだ。そして、俺を生き返らせたかもしれない人物として堂々の一位に入る。
「そんな怖い目で見ないでよ。今は戦争中でしょ?ほら、大将首が目の前に……」
「わーってるよ、んなことは。だから警戒してんだろーが、お前が今この場で俺の前に現れるから」
「私がこの場に現れた理由なんて簡単な事。山場でネタばらしをするような趣味じゃないし、手短に応援とでも言っておこうかな?」
何のネタばらしなのかを聞きたいのだが、多分問い詰めても求めている答えは帰って来ないだろう。
そこまで俺の思考を読み取った上で、リリィは優しい笑みを浮かべながら手を差し出した。その華奢な手に握られるのは小さな石が一つ。青と赤にユラユラと模様が揺れる石だ。
「……んだ、これ?」
「さぁ?自分で考えるのも大事だよ?」
「最後の最後まで使えねぇな、おい!」
「私の力は随時君に使われてるから。これは軽いハンデみたいなものよ」
使えねぇのか使えるのかわからない。なぜこんなに中性的な奴が多いんだよ、ホント。
だがまぁ、このタイミングで渡してくる物だ。そう安々とゴミになる物じゃないだろ。信用ねぇけど。
「とりあえずは感謝する」
「そんな礼でいいの〜?後で後悔するかもよ?」
「はっ!後悔なんざ山のように積んでるってんだよ!!今更テメェへの後悔ぐらいでグダグタやってられっかよ」
寧ろ今後悔なんてし始めれば、多分あと一年くらいはあの洞窟に籠らないといけなくなる。そん時にはもう地上は滅びてるってんだよ。
「……んじゃまぁ、あんたの夫を助けに行ってくるよ」
「ん、ありがと」
彼女は照れ臭そうにそう答えた。ちょっと、ほんのちょっとだけ彼女が恋多き少女に見えた。気がした。
少年は足早にこの場を去って行った。あとは彼に任せれば全ては終わるだろう。彼は刀を抜き、構える。
あぁ、あの子が彼を思う気持ちが少しばかりわかった気がする。あの背中、ホントそっくりだ。いつもはちゃらんぽらんな彼らも、あぁやって戦う場となった時の頼もしさ。
「やっと君を理解できた気がするよ、改変者」
ーー
地面を蹴り、宙に浮きローボを振り下ろす。
真っ二つとはいかないが、神の手首は血で濡れた。
神にも真っ赤な血が流れているのか、などと感心していると左回し蹴りが俺の頭を掠める。
「ッ!!ラァァァイッッッ!!!」
「おいおい、とうとうヤンデレ方面に行っちゃったのお前?!」
いや、今のカロに今までのカロという存在はいない。操られている、とは少し違う。どちらかと言うと暴走に似た形だ。
そう、暴走。誰かさんもした暴走だ。
「ようやく来たみたいだな、改変者」
「来たのは良いけど、今すぐ帰りたいんですが?」
「いいね、そうしようか。僕は帰るから後は任せたよ」
「おい、なんで帰るのがお前なんだよ」
寧ろ二人とも帰った方がいいんじゃないか?まぁ、帰った瞬間アイツが追っかけてくるのは目に見えているんだが。リリィから貰った石をハクロウの魔石と交換する。
あとはリリィを恨むか拝むかのどっちかだ。
「さて、じゃあ後はアイツを倒すだけか。その魔石さえ当てればコッチの勝ちだ」
「んじゃまぁ、やりますか!」
ベリアは自身に魔法をかけ、そして魔法で鎌を作る。俺は左手にハクロウをいつでも撃てるようにセットし、右手に黒刀『ネ・グローボ』を持つ。
正真正銘、これが最後だ。
そう自分に言い聞かせ、地を蹴った。
初手はベリアの鎌の一撃、二撃目は俺の剣撃。ベリアの鎌はアッサリと躱されるも、反撃を食らう前にナイフを生成し、顔に軽い切り傷をつけた。
俺の攻撃は全て躱され、最後の蹴りさえも余裕と言わんばかりに躱される。
そこへベリアが全く別の魔法を唱える。
「━━━━虚飾魔術」
魔法とは違う何かだ。何かの呪文が終わると同時に、草木から真っ黒い鎖が線を引く。
その鎖らは手当たり次第に繋がりはじめ、結果としてカロを捉えた。
「今だッ!!」
「わーってるよッ!!」
頭へ狙いを定め、引き金を引く。いつも通りだ。寧ろいつもより狙いが定まっていたと思う。魔法の弾丸は真っ直ぐに進み、彼女の頭に直撃した。
彼女の動きが止まる。先程までの咆哮も、暴れる様子も全て。
これで全てが終わった。
この戦いは終わったのだ。
やっと、長い戦い━━━━━━が
刹那、横っ腹に激しい熱を感じる。
腹痛?な訳ない。チカチカと点滅する視界で眺めると、俺の右の腹は千切れていた。ベリアは右腕を。俺は左脇腹を。あの神は食い千切った。
そしてカロは全速力で俺の方へ駆け走る。
「ッ!!まだ終わらねぇよ!━━━━━改変ッッ!!!」
はは、もうこれで効かなければ終わりだ。
魔法の改変は、この世から逸脱される物。禁忌に触れるものだ。
禁忌、つまり聖なる者には毒となる異物。それを直撃且つ、リリィから貰ったこの魔石に埋め込んだとすれば━━━━チェックメイトだ。
走り込むカロの眉間を弾丸は貫通する。
この一発の弾丸を持ち、戦いは終結した━━━━━
これにて本編は終了しました。
約一年間ですかね?長い間ありがとうございました!本編は終了しましたが、エピローグの存在を忘れていたので残りは明日のエピローグへと回させていただきます。
今まで長い間ありがとうございました!




