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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第七章 真実と嘘でできた世界
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第十三話 少女は恐怖に溺れ行く

前回はなぜかバレてしまったけど、今回は流石にバレないだろ。


どっちにも期待して投稿!

 悲しむ時間も、怒る時間も、どれもこれも俺には足りなかった。

 ヘクールの体が奴の声を最後にグッタリと動かなくなると、俺はその場から急いで撤退した。

 魔法による幻術なのか。それとも奴の権能なのか、そんな考察など馬鹿馬鹿しい。今は一刻も早くイリス達への救援に向かわなければならない。


 ラミ一人で全員を守れるわけがない。全員防衛手段は持ち合わせているが、貴族騎士が倒されるほどのモノ。

 ラミとロイテ以外での単騎決戦は分が悪い。なるべく端的に情報を整理し、俺は夜中の森を駆け抜けた。






 ーー



 湿った夜風が頰を撫でた。

 ふと、窓の外を見ると幾つもの光る目が此方を向いている。アレは獣の目だろうか。それとも人間の目なのだろうか。


 心身共に疲弊しかけているイリスには、その程度しか脳が回らなかった。

 度々聞こえる爆発音は彼女を恐怖の淵に引っ張り続け、未だ来ない彼によって不安はドンドンと積もって行く。

 外ではラミが、ロイテが、ラシエルが、シャロが、命を賭して戦っていると言うのに自分は安全な場所でただただ怯えるだけ。それが余計に彼女の心を抉り続けた。


 猛獣の甲高い咆哮が夜の平原に響き渡った。

 すると、隣に立つヘリスがピクッと動き安堵の息を漏らした。



「イリス様、ラー君が残したとらっぷ?が作動しました!これで少しは保つと思う!」


「とらっぷ……?」


「はい、貴族騎士ぐらいの強さの猛獣だ!ってライが言ってた気がする」


「そ、そうなの……」



 いつになく彼女の心は閉ざされていた。

 朗報が来ても喜びを感じない。焼け石に水だ、そう考えてしまってそこからの進展は見られない。


 が、その声も数秒後には止んだ。唐突になんの前触れもなく。

 途端、外ではなく屋敷の中が急に騒がしくなった。声ではない。足音で、だ。



「イリス様ッ!逃げるよ!アイツはヤバイッ!!」


「彼は間に合いません!否が応でも連れて行きますぞ!!」


「ど、どう言う━━━━━━━」



 ドタドタと大きな足音を立てながら、シャロとロイテが入って来た。確か彼らは裏側の警戒をしていたはずだ。ならば裏側には彼らが怯えるだけの敵が現れた事になる。



「アレは本当に強い。多分ライ君でも勝てない気がする。あの召喚された魔獣をあんなに簡単に倒せるなんて人間技じゃない」



 彼女は悔しそうな顔でそう言う。

 それだけで彼女の恐怖は十二分に伝わった。その人間はライより強い。それは私達の中でソイツを倒せる人間が居ない事の証明だった。



「ッ……!来る!早くッ!!早く逃げるよ!!ここで待ってたって死ぬのは確定してる!」



 ロイテが私を持ち上げ、窓を破って勢いよく飛び出した。

 数メートルはあった高さを楽々と着地し、足が付くと同時に全力でロイテは地面を蹴った。その速さは馬車よりも早かったと思う。周り景色が止まることを知らなかった。


 だが、それも長くは続かない。

 前方を囲まれ、後方を塞がれて退路を断たれた。完全なる詰みだ。前に立ちはだかる魔獣どもを駆逐するのは用意だろう。

 しかし、それに気を取られていると後ろから来る怪物に背中を向ける事になる。


 ラミ達を連れて来たシャロやヘリスも同じように周囲を囲まれ身動きが取れない状況となった。

 今までにない失態だ。恐怖に溺れる事で、ここまで判断力が鈍るとは。



「━━━━━━━どうも、大神雷の愉快な仲間達の皆さん!僕は……うーん、彼の同類って立場の人間さ」



 屋敷の屋根の上に立つ人間は、嬉々としてそう声をあげた。

 隠す事のない殺気から、彼がシャロ達の言うライより強い奴なのだと察する。

 全身から寒気がし、手足が恐怖で震え、闘志がみるみる消えていく。



 残ったのは『死』を悟った脳のみだった。



「うんうん、中々に怖がってるね。悪くない悪くない。でもアレだな。外野がうるさい」



 彼は指を出し、パチンッと音を鳴らす。

 すると、イリスやシャロ達の周りにいた魔獣達は一瞬のウチに地面に倒れ、唸り声も吠える事もしなくなった。

 そう、まるで死んでしまったかのように。



「ふん、獣風情が。吠える事と生殖活動にしか脳がない屑どもめ。一々手間をかけさせるな」



 あの数十万はいただろう魔獣を一瞬の、ほんの一瞬の動作だけで全員殺したのだ。

 悪魔、いやアレは死神に等しい。一体、あの人間は誰なんだ。彼らにはそれが一切わからなかった。



「お前は誰だって顔してるね。……フフ、じゃあコレを見せたらわかるんじゃない?」



 その人間は楽しそうな声をあげ、少し手を前に出した。そして、口を開いてこう唱える。

 何度も何度も隣で聞いた呪文だ。忘れる事はない。



「━━━━━━━━改変」














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