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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第七章 真実と嘘でできた世界
179/213

第十一話 少年はいつも静かである。

 燃え盛る火球は、業火を纏いながら一直線に向かってくる。

 陽炎が揺れ、景色がユラユラとボヤけると同時に耳元で声が聞こえた。



「イリス様ッ!!」



 ヘリスに押され、イリスの体は奥のタンスへ飛ばされる。

 時の進みは時が刻むと共に遅く遅く━━━━━、



「━━━━━━この程度の火花で、我が主人の家を燃やせる気か、ニンゲン?」



 ふと、少女の声が聞こえた。

 その声はとても怒りに満ちていて、とても歓喜に満ちていて。まるで獣のように、まるで人間のように、その少女は笑みを浮かべた。



「ラ……ミ……!」


「んー?あ、イリス!ここ危ないよー!早くどっかに逃げてね。これ以上はもう━━━━━血が欲しいッ!!」



 瞬間、開けた窓から見えた彼女は人間でもなければ、獣ですらない。


 今宵、彼女は吸血鬼と再化した。








 ーー



 少年は一人、ゆっくりと豪邸の中へと入った。部屋の中は冷んやりとしていて、夜の月が綺麗な灯りとなっている。

 その静かな廊下は、少年の一歩がこの屋敷の全ての音となっている。



「これが貴族の屋敷、か」



 ポツリと呟いてそう感慨に浸っていると、先程少年が入った扉から少年より幼い子供が顔を出した。



「ヘクール。これがお前の主人の屋敷か?」



 少年は手短に目の前の扉を開け、中の様子を確認しながら後から入って来る子供に問うた。



「はい。貴族らしい大きさ、建物の構造。一流の建築士が作った物だと聞いてます」


「違ぇ。俺が聞きたいのは『その貴族の屋敷はこんなに静かなのか?』」



 少年は再度問う。

 その問いにヘクールは、顔を青白くさせながら答えた。



「いえ。違います。本来ならこの家に五十人もの人間が住んでいました」


「五十……見せしめに殺すには数が惜しい、か」


「ッ!!も、もう殺されたんですか?!」


「俺が奴らの立場なら足りないと見る。それだけだ」



 酷く残酷に、冷徹に少年は質問に答える。

 扉から入る隙間風が、この静けさを少しずつ恐怖の道へと誘い込む。



「地下室はあるか?それか脱出用経路」


「地下室ならあります」


「じゃあ多分そこだろうな」



 未熟かながらも天賦の才を持つ少年は、隣で鋭く言う青年に恐怖の念を覚えた。

『なぜこんなにも、この人は静かなんだろう』と。






 ーー


 二人はそのまま屋敷の奥へと向かい、階段を降りて地下室へと辿り着いた。

 誰にも会うことは無ければ、静けさは入って来た時と一切変わらない。


 地下室は明かりは愚か、月光すら入って来ない真っ暗な部屋だった。静まり返るその部屋に、一歩ずつゆっくりと歩いて向かって行く。

 コツコツと靴音を反響させながら歩いていると、ある所から靴音がならずペチャペチャと水を踏む音へと変わった。



「地下水か?」


「地下水なんてこの近くに流れてませんよ?」



 少年は懐から銃を出し、シリンダーを二回回す。そのまま慣れた手つきで銃を構え、まっすぐ前に向かって発砲した。

 甲高い銃声が当たり一杯に音を鳴らし、弾丸が壁に当たり軽い爆発を起こす。


 床が燃え、壁が燃え、真っ暗だった地下室が火の光により明るさを保ち始める。




 そしてそこに映るのは━━━━━━━━━



「やぁ、大神雷君。僕は君をずっと待っていたよ」



 一人の少女が、目を光らせながら俺の名を呼んだ。






次回日取りより謝辞を先に。


今回、またあの地獄のテスト週間がやってまいりました。

つまりですね。勉強しないとまた同じ勉強を受けることになるので、今回は二週間ぐらい更新ができないかもしれません。

ですが、もしかすると投稿するのでお楽しみに!

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