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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第六章 ある冬の思い出
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第二十六話 賭けのチップ

「札をかける?それはチップをかけるって意味で受け取ればいいのか?」


「賭け事、と言う意味なら構わない。私は君に賭けて人生最大の博打を打とうと思っている!」


「俺をチップに?何の為にだよ」


「世界の平和と世界を掌握する為、とさっき言ったが?」


「全く話が見えてこねぇ……」



チラッとイリスの方を見るが、向こうは向こうであのリリィと呼ばれる女性と何やら話をしていて、コッチの話は耳に入っていない。世界平和と世界制服の為ならば、あっと言う間にコイツならできるはずだ。何せこの目の前にいる老人は曲がりもない強者だ。ミツやアルトや他の帝達と肩を並べ、世界を直接支配できる化け物。



「そんな奴がわざわざ俺なんかを後ろ盾にするってか?馬鹿馬鹿しい。それに世界平和と世界制服じゃ完全に矛盾してるじゃねぇか」


「……まぁそうなるよね。うーん、どう言えばいいんだろう」


「まどろっこしいなぁ。簡潔に言えよ。テメェは何を知っていやがる」


「━━━━━━この世界の未来。いや、行く末、かな?」


「は?」


「千里眼……まぁ、未来を見る事に特化した能力さ。初代がなぜあの戦争を一人で生き残れたか、それはこれが答えだ。あの男は復讐と破壊の鬼と変貌した改変者に全てを賭けたのさ。『命』から『世界』までの全てを」



聞き捨てならない話がポンポン出てくるが、とにかく情報を整理しなければならない。いや、そうしなければコイツとの会話について行けない。



「ま、待てって!じゃあ初代はあの戦争を一人で戦ったのか?!他にも敵がうじゃうじゃいるってのに!?」


「その通りだとも。ま、全ての敵と一々やりあってたんじゃないだろうね。未来視、これができるんだから楽々と危険は回避できただろう。けど、━━━━━━━絶対に避けて通れない戦いがあった」


「改変者……」


「そう。改変者が狩った順は、人、石、血、龍、堕、獣、機、魔、神の順。その時点で四人もの帝を食い殺してるんだから、淡い期待を浮かべたのかもしれない」


「じ、じゃあそいつはまだ後に四人も残っているって言うのにその改変者に賭けたって言うのか?!馬鹿なんじゃねぇか!」


「ま、普通はそうなるよね。けど彼には未来視がある。その未来が確かかどうかはわからないけど、可能性が少しでもあるんだ。賭けない手はないだろ?」



つまり、その初代堕帝は全てを知っていたと言うことになる。あの戦争の行く末を。ならば俺はそいつに聞きたい事はただ一つだ。



「━━━━━━━なんで。なんで知ってたのに敵対した?」


「・・・・・」


「おい、答えろよ。知ってんだろ?その理由を!」


「……なぁ改変者。君、なんでそんなに熱くなってるの?」


「は?」



熱くなっている?そんな事はない。俺の思考は至って冷静で、平常運転で、ちゃんと周りも見えている。自我を忘れてはいないし、おかしな行動を取っているわけでもない。俺は一切熱くなっていないはずだ。



「お前、何言ってんだ?」


「君、前の改変者の話をした途端、頭に血が上っていたよ?あー正確には先代が助けれたハズの改変者の話、かな?」


「どっちでも一緒だ」



大神雷は気づいている。自身の奥底にある焦燥を。上っ面だけで押さえ込んでいる瞋恚を。そして、それら全てを虚の仮面で押さえつけている自身の浅はかさを。理由はわからない。だが事実なのは事実だ。一歩下がって見つめ直そうとしても、その背中には黒いモヤがかかって何一つ見直せない。



「・・・・・・・」


「君がそこまで違うと言い張るのなら違うのだろう。聞かなかった事にしてくれ」


「………そうか」



俺の素っ気ない返事を聞き、ベリアは軽く嘆息する。そして舌で唇を舐めて麗してから、もう一度口を開いた。



「あぁ、そうそう。僕にも堕帝の権能として未来視を持っている。もちろん、それはあそこにいる僕の妻━━━リリィもそうだ」


「それを知った所で、お前は俺に未来を言えねぇんだろ?」


「中々に話が早いね。そうとも、君の推測は正しい。けれどまぁ、一から十の全てが言えなないわけではない。断片的な、そうだね……マイナス1ぐらいなら語ってさしあげよう」


「起源ってわけか。お前が見えてる世界が仮に世界崩壊だとしたら、教えてくれるのは引き金の引き金ってわけか?」



そう合ってるような間違っているような解釈をそのまま口に出すと、ベリアは「そうそう!」と大きく頷きながら手を叩いた。これが彼なりの正解を意味するのか、単なる煽りなのかは今は議論しない事にする。



「うん、この未来が見えたのは君が名を広げる数年前だ。初めはただの夢幻だろう程度の考えだったけど、日が近づく旅にその未来が強く見えるよつになって来たんだ。つまり、起こりうるであろう厄災の引き金の引き金は君にあるって事だよ、『改変者 オオガミライ』君」



その言葉は、どこか迷惑そうで、どこか寂寥感に浸されていて、どこか怒りを秘めていて、どこか憐れみを含んでいて、どこか優しく包むような言葉だった。彼はまぁねっと続けて、どこか遠い場所に目をやりながらまた口を開いた。



「この未来が、この未だ来ない時間が、いつどこで来るのかはわからない。もしかしたら明日かもしれないし、もしかすれば来年、再来年になるのかもしれない。だけどこれだけは覚えていて欲しい。━━━━━━━━この絶望《未来》はいずれ必ずやって来る」


「なら……教えてくれ。お前が見るその未来に、幸せは見えているか?」



端的な話、俺自身はこの世界がどうなろうが興味すら起こらない。破滅の方向へと進むのなら、俺は残りの時間をイリス達と堪能するだろうし、もし俺が戦わないといけないのなら俺は彼女達を守る為に身を粉にして守りきる。だから、俺は聴きたい。どの道に進むとしても、その先に幸せはあるのだろうか、と。



「幸せ。それは一人一人で見える景色が違う。けどまぁ……僕から見れば幸せなんじゃないかな?」


「そうか。お前の幸せへの価値観が高いことを期待してるよ」


「そのご期待に応えれるかどうかは、いずれ来る未来に目を向けた時にでも」



暗くなる空気が俺とベリアの周りを漂う。やはり未来とは、良いものではない。確かに良い未来もあるのかもしれない。だが、それ以外の全ては『何もない』か、『不幸』の未来だ。それなら俺は真っ暗闇の中を両手を動かしながら少しずつ歩いて行くだろう。



━━━━怖がりなのかもしれない。


━━━━スリラーなのかもしれない。


━━━━ただ未来と言う現実を直視できないからなのかもしれない。




だが、決断はしなければならない。俺は一つ大きく息を吐き、一度大きく息を吸って堕帝ベリアの目を見て口を開いた。



「わかった。テメェの賭けのチップになってやろうじゃねぇか。もちろんサレンダーは無し、勝手に逃げる事は許さねぇ」


「ふふふ、君って本当に面白いなぁ!あぁ、良いとも!!君の幸せの為、僕の勝利の為。━━━━━賭けをしようじゃないか」



















むっちゃ久し振りにこんなに大量に書いた気がする……!


最近リアルっと言うか、年末に向けてドタバタしていて腰を据えて書けてませんでした。すみません。多分、これからもそう言う日が続くと思いますがお許しください。


次回は明後日の夜九時です!お楽しみにー!

Happy merry Christmas!!非リアな僕と同志達へ。

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