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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第六章 ある冬の思い出
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第二十二話 人と街

開いた扉に足を踏み入れ、堕帝の領土に侵入する。二人ともが門を潜り終わると、今度もまた自動的に扉が閉まった。



「閉じ込められた、か」


「空からなら……ッまさかこれ結界?」



イリスが唯一の脱出手段と示した空からの逃走は、青紫色の空を見て遠く沈んだ。門を入る前つまりミツによって空高くを飛んでいる時は、青い空と白い雲に四方を囲まれていて文句なしの昼間だった。だが、門を潜り抜けこの島の中に入った途端、空は黒色の夜空に変わり、点々と星のようなモノが輝く世界へと変貌した。



「いや、多分違う。あれは『天窓』だ。夜の景色に見立てたな」


「なら外から見えてたあの岩肌はなんだったの?」


「それは本物だ。見ろよ、外から見えてた岩肌と中から見た岩肌じゃ違いはほとんどないハズだ。つまりアレはマジックミラーの発展版みたいなもんだろうな」


「まじっくみらー?」


「そ。外からは中の様子がクッキリ見えるけど、中からは黒く塗られた鏡にしか見えないって言う優れ物」



だがまぁ、そんな天窓の仕組みを理解した所でこの島が永久に夜が続く、ぐらいしかわからないのだから基本的に無意味な事だ。門の周囲には草原と岩場の二つの地帯しか見えず、龍焉島のように目立った城が見えるわけでもない。それ以前に、街が、いや家一つすら発見できていないのだ。



「そういや、堕帝って何から堕ちたんだ?堕落した人間なのか?」


「私に聞かないでよ。恋におちたって事で良いんじゃないの?」


「恋か。恋ねぇ……軽い嫌味だなそれ。この島はリア充達の宝庫かよ。爆散しやがれ」


「爆散したら私達まであの世行きよ?あんたと心中なんて死んでもゴメンだわ」


「死んでからゴメンって言われても心中成功してるじゃん」


「う、うるさい!!死ぬ前からゴメンよ!」


「そんだけゴメンゴメン言われたら許してあげようかな?ま、そんな馬鹿な話より━━━━━この先どうする?」



そう。一番の難所は住む場所をどうするかって話だ。何日かかるかわからない堕帝との話し合いだ。寝る場所の一つも持ってない俺達では、途中で猛獣やら魔獣に喰われる危険もある。わざわざここまで大変な思いをしてきたのに、そんなしょうもない『獣に喰われ死亡』なんて死に方は馬鹿馬鹿しいにも程がある。外で待つミツ達を何日も待たせるわけにはいかないのも事実。今回は手短に終わらせなければいけないのだが。



「先ずは村人Aを探すか。いるか知らんけど。つか、村人Aですら堕落してんじゃねぇの?」


「そうね。なら早速行動に移しましょ。時間はかけていられないわ」


「あぁ。とりあえず舗装されている道探しから始めるか!」



彼女にそう促し、俺は腕を大きく振って歩き始めた。どこへ行き着くのかはわからない。が、旅にはそう言った瞬間の一つや二つがあっても良いんじゃないだろうか。少し旅人と言う人間に共感を持てた気がする。


















ーー




「アレは……村……!?」


「ぇ……ホント?……ホントに村があったの……?」



死にかけの声で村の有無を聞きたがるのは、足が棒になり首が伸びに伸びきり、身も心もすり減っているイリスの声だ。いやいや、俺が何かしたんじゃないからね?一緒に歩いてただけだからね?



「おう。人はいるんじゃねぇかな?いなかったら色々物を盗むだけだけど」


「……なに物騒な事言ってるのよ。行きましょ!さぁ、早く!ものすごく水が飲みたいから!!」


「はぁ……結局はお前の水の為かよ」



そんな悪態をつきながらも、仕方なしと腹をくくり俺は彼女とともにその街へと進んで行った。その街に何が住んでいるのかなんて、今の俺達は知るよしもない。
















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