第二十話 空の旅は愚痴と発狂でできている。
相変わらずの肌に刺さる冷たい空気。今いる標高のせいか、段々と苦しくなる呼吸。上空約五千メートル程度を俺達はなんの装備も無しに身一つで滑空している。
「寒い……」
「空気が……」
「道中で死ぬとか笑い話にもならないのだけど……!」
各々で愚痴をこぼしにこぼし、今では誰を責めているのか本人達ですらわかっていない状況だ。やはりこう言った未知なる旅行には下調べは重要なのだろう。格好やらルートやらその地域の気候など、例を挙げればキリがない。その辺は自分達の落ち度として反省するしかないのだが。
「ごめんね、こうしないと君達人間の体だと保たないだろうから」
「わーってる。仕方ねぇことだ。ミツは気にせず飛んでくれ。あの食料泥棒どもにはいい反省の機会だ」
「まだ怒ってるんだ……」
「ったりめぇだ。あいつら結局何皿食べたと思ってんだよ?四人で大皿十皿!しかも力士四人じゃなくて、うら若い女の子四人だぜ?それに比べて俺なんか……俺なんかなぁ!」
「えっと……小皿一皿だっけ?」
「ふざけんなよマジで!それにその皿に何が乗ってたと思う?ほぼ食いさしだぞ!俺は残飯処理係かっての」
俺やみんなを支える黒龍は、少し口を開けて苦笑を見せた。首の辺りに乗って会話をする俺と、胴体の所で密集しながら文句を言うその他大勢。時折、その愚痴がここまで聞こえてきてミツが悲しそうな声をあげる。寒いだの苦しいだの言いながらも、仕方ないと割り切って我慢しているのだから言うだけは認めてあげよう。
「そういやさ、お前って機帝のヤツと揉めてなかったっけ?ほら、俺らが始めて龍焉島に行った時とか」
「あー揉めてたね。まぁ、あの時は父さんが馬鹿みたいにちょっかい出してたせいだけど」
「じゃあ今は和解したのか」
「そうなるね。けど……そう長く続くかはわからない」
「?どう言う意味だ?」
「なに、ちょっとした僕の独り言だよ。気にしないで」
「変なフラグ立てんなよ?俺の特性にフラグ回収ってスキルが付いてるって最近わかったんだから」
「よくわかんないや。けど、僕に任せといて。友達として、いや親友として君に無理はさせない」
親友、と強調し彼は低く唸った。ミツと言う龍は隠す事はあっても嘘はつかない。それは約半年間の彼との関わりを通してわかった事だ。俺とは違う、いや真逆に等しいその志は時に仇となり、時に絶対に折れない一本の槍となる。それを知っているから、俺は軽く彼の頭を撫でて感謝を述べた。
「あぁ、頼りにしてる。仲間として、この世界で初めてできた親友として━━━━━━」
「うん。どんどん頼ってくれて大丈夫だよ。それが僕の君への恩返しさ」
「それならもう十分に返って来たと思うんだけどな」
「返す人が返したって思わない限り恩は返ってないよ」
「鶴の恩返しってヤツか。いや、龍の恩返しかな?」
「龍からの恩返しは大切にするんだよ〜?」
「怖ぇこと言うなっての」
ミツは大きく翼を羽ばたかせ、速度を少し上げる。冷たい風が一層増し、首に付けていたマフラーが勢いよく後ろになびいた。後ろからはギャーだのうわぁーだのと、女の子があげていいのかと思うような悲鳴が聞こえるが、まぁそれは放っておいても大丈夫だろう。俺は少しミツの暖かい背中に体をくっつけて寒さを凌いだ。
ーー
「あっ見えて来たよ」
唐突にミツが報告した。俺やイリス達の目ではまだ青い空と白い雲しか見当たらないが、人間の能力を卓越した帝さん達は見る事ができるらしい。証拠にラミは一人はしゃぎまくっている。
「ミツ、確認なんだが何キロぐらい先にあるんだ?」
「えっとねぇ……短く見積もって一、いやニかな」
「やっぱり帝って化け物なんだな」
「改変者の君が言うと、なんか変な話だけどね」
「俺はベースが人間だから、身体能力の面ではお前らより百歩ぐらい掛け離れてるんで」
「はいはい。言い訳は十二分に聞きますよー」
「言い訳も何も事実だtt……うわぁぁ!?」
突然、ミツはスピードを上げて残り約一、二キロの距離を駆け抜けた。そのスピードはもう、一般ではまず体験する事がないような速さで目も開けれないものだった。全く見えなかった空中島が微かに影を表し、そして全貌がクッキリ見えるようになるのにそんな多くの時間はかからなかったと思う。ミツは俺達がひと段落したと判断し、目の前に広がる八つに別れた島を指して低く告げた。
「━━━━━さぁ、着いたよ。ここが堕落の帝王がいる島、『明けの明星』さ」
はい!どうも!一週間ぶりです!
今「なんだ、コイツ生きてたのか」とか思いました?残念ながらまだ生きてるんですよ!
何故なら、まだテストが返って来てないから!!
ってなわけで!まだ死にませんが来週死ぬ予定ですので、お見知り置きを(笑)次回は明後日の夜九時です!
では、また!




