第十一話 国の王
「……コッチは片付いた。イリス、そっちは終わったか?」
『えっと………うん、今終わったわ。どうする?一旦集合する?』
「そっちに全員集まってるだよな?」
『そうよ。集合するなら、あんたが来てくれる方が良いのだけど』
「いやいい。シャロとヘリス、お前とラミの二組で行動してくれ。多分、もうすぐ王様が現れる」
『王様?』
「あぁ。超絶クソ野郎な王様だ」
ビルの階段を登り、屋上への扉を蹴って開ける。灰色の空、霞んだ景色。ある意味幻想的な風景は今も俺の心を惹きつける。スタスタと歩き、屋上の中心に辿り着くと灰色だった空が突如として血を誘う赤色に変貌した。
『━━━━━━━警報発令。警報発令。新たなる挑戦者が現れました。参加者の方々は注意して下さい』
「予想より早いな。こちとら残りの人数すら把握してねぇってのに」
『ライ!ねぇ、コレどう言う事?!』
「今すぐどっかに身を隠せ!!おいでなさったんだよ、この世界の創造主がな!」
ゲームマスターって役職は何の為にあるのだろうか。綺麗に言えば、ゲームが秩序正しく行われるための監視又は設定変更を行う為だ。だが、人は権力を持つと途端に暴虐の獣と成り果てる。創造主、つまり神さまだ。ブラフマーだ、イザナギだ、デミウルゴスだ。そんな奴らと同じ力を持った人間が慢心しない訳がない。
だからここで、この世界で、新たなる強者が現れるのはそいつからすれば心底都合が悪い。ならどうするか。神の力を持って、徹底的に殲滅するのみ。
「━━━━━━━まさかここまでやられるとは。余も流石に感心した。残るは12組、余を楽しませれる者は何人いるかな?」
絶対王者の降臨。俺達がついさっきまでやっていた殺し合いは、奴の降臨への前置きだ。意味なんかない。会場を沸かせ、ムードと士気を上げて行く中で最骨頂となった所で乱入し、強者をそれ以上の力を持って潰し回る。
「優勝者は素晴らしい景品を貰える?馬鹿げた話だぜ。そら貰えるだろうよ。何せ勝った奴はこの国の帝王なんだからな」
『マスター!この世界で改変《Alteration》は使えるの?』
「無理だ。魔法が使えねぇんだから、改変も使えはしねぇ。体術と手持ちの武器のみだ」
『なら私が!』
「馬鹿言うな。あいつがこの世界のルールに従うとでも思ってるのか?自分はチート能力バンバン使って、コッチにはデバフぶっかけて終わりだ」
『じゃあどうするの?』
「まずは逃げる事からだな。機帝はAIじゃない筈だ。逃げれる隙は必ずある」
『わかった!』
とは言いつつも現状は最悪。いや、詰みだと言っても過言ではない。この形勢を逆転させるには、それに対抗できる何かがないと無理だ。武器か戦闘手段か、どちらでもない何かか。ただ言えるのは今の俺達の装備や編成でどうこうできる相手ではない。
未だ向こうのチート能力については不明だ。けれどコッチの戦い方は向こうに知れ渡っている。ゴリ押しは通用しないし、基本の策ももちろん通じない。
「索敵、武器無限、威力調整……これだからチーターは嫌いだ」
絶望とも取れる大きなため息を吐き、周囲に人がいるかを目視で確認する。ここからでは機帝の姿は見えず、他の敵も見つける事ができない。すぐに諦め、屋内へと戻った。一室にある椅子に腰掛けて次の一手を考えていると、ザザッとトランシーバーが鳴り出した。
『機帝を見つけたよ、ラー君!』
「どこでだ?!」
『わからない。けど、一つの集団とやり合おうとしてるから音がすると思う』
「わかった。………ヘリス、シャロを連れて逃げろ。魔法抜きで人間が勝てる相手じゃない」
『わかった。ラー君も気をつけてね』
「おう」
トランシーバーの電源をオフにし、洋服棚にかかっているフード付きのコートを羽織り、俺は静かに裏口から外へと出た。キョロキョロと辺りを見回して、近所の歩道を少し歩き回る。潜伏していた建物から数軒先の所で、俺はある物を見つけた。
「これってマンホールだよな?もしかしたら………使える?」
ちゃんとした工具は持っていないから、バールのような物で代用しないといけない。あれ?けど、ここって銃しか落ちてなかったような。もしかして自力で開けろと?あ、普通は使わないか。
「よし、せーの!………軽いわ!!!」
パカっと蓋は開き、中の空洞がこちらを覗く。うん、いや、何、すごく軽かった。確か人間の手では開けられないのが普通だったハズなのに、あっさりホントあっさり開いちゃったよ。
「そ、それじゃあ入って行くか」
それだけポツリと呟いて、俺は未知なる地下への道へと足を踏み入れた。
はい!どうも!■です!
あーどうしよう!もうすぐ、この一年のラスボスがやって来る……!!
クソッ!どうすればいいんだ!
頼む!誰かクリスマスを倒してくれぇ!!!
って事で次回は明後日木曜日の夜9時です!




