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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第六章 ある冬の思い出
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第八話 壁に埋まる人

「……ん」


「あ、いたいた」


「……ラー君?」


「変な人が目の前に……!」


「目潰してやろうか?」


「じょ、冗談だよ!」



フエーゴに言われるまま、廃墟となったビルの中を散策していると四人が綺麗に川の字で眠っていた。イリスとヘリスは俺と同じようにこのクソみたいな異世界に驚いているが、シャロはそんな事はお構い無しに俺をディスって来る。ラミ?あぁ、涎垂らしてまだ寝てるよ。



『全員揃ったようだな。なら始めようか』


「何を?」


「講演会」


「眠たくなって来た……」


「まだ始まってすらないよ?!」


「zZZ……」


「ラミはどうするの?」


「ほっといても大丈夫だろ」




気絶しているハズがいつの間にか爆睡に変わってるミツは放っておいて、起きてる面々は声の向こうでふんぞり返っているフエーゴへ意識を向ける。フエーゴは俺達の会話が終了すると共に説明を再開した。



『時間も押している。二度はないと思え。この世界は……そうだな、お前らが見てきた街数個分程だ。二、三時間あれば一周できる。次に武器だが、今目の前に転送された初期武器と地面や建物内に剥き身で置かれている武器の二つがある。威力や性能は野良武器の方が強いだろうな。そして体力か、それは視界の右だか左に見えるだろ?それがゼロになれば文字通り『この世界で死ぬ』。説明は以上だ。質問があるのなら、サッサと済ませろ』



早口なのか、普通なのか微妙な所でフエーゴは説明した。体を触りながら一つ一つ確認していき、異常はないと判断する。脳と体との間に誤差は無い上に五感の方も問題なく働いている。最後に突如現れた黒いボックスを開けて見ると、中には日本名で『ベレッタM92』と言われる自動拳銃が五丁とサバイバルナイフが同じく五本入っていた。



「銃もそこそこいいヤツだな。まぁ、この世界に名前とかはねぇだろうけど」


『機械が真剣に考えた、人を手早く殺す武器だ。まあ、使えないだろうけがな』


「そうだな、俺使えねぇわ。あれー球が撃てな〜い」(棒)


「……ライ君ってホント嘘下手だよね?」


「言ったらダメよ、シャロ。それが唯一の弱点なんだから」


「聞こえてんぞ、テメェら」



う、嘘下手じゃねぇし。頑張ったらもっと上手いし。べ、別に安全装置外してないから撃てないとかじゃねぇし。このピストルが悪いんだし。



「けどコレって、ラー君の持ってるハクロウに似てない?」


『なに?』


「ヘリスも馬鹿だなぁ!んなわけねぇだろ?こんな精密機械作れるわけねぇよ」


「えーけど、似てるよね?イリス様もそう思うでしょ?」


「逆に、違うなんて言えないわよ」



おいおいおい!お前らここぞとばかりに設定ぶち壊してくるなぁ!!つか、せめて俺の考えぐらい汲んでくれよご主人様!!!……し、シャロはそんな事言わねぇよな?



「え、コレってこの安全装置ってヤツを外せば撃てるんでしょ?…………ほら」



ズドンッ!と重たい音が鳴り響き、建物の柱に弾丸の穴が開く。アッサリと初心者の関門である安全装置を解除した挙句、狙った所にピンポイントで当てやがった。いや、確かにもしもの為って事で教えたのは俺だけどさ………時と場所を考えて欲しかった。



『撃ちやがった……』


「あ、それを外せば撃てるようになるのね。早く教えなさいよ、ライ」


「ラー君もちゃっかり外してますもんね」


「いいよ!撃てるよ!!けど無駄撃ちするなよ!弾無くなるから!!」



もういいよ。ヘリスの時点でもう半分諦めてたけどさ、ここまで来ると笑えるよ。ははは……アレ?おかしいな目から水が。



『ハッ!初期武器が使えるだけで図に乗るなよ改変者ども!!』


「なぁ、そういやここから飛び降りたりしたら死ぬのか?」


「綺麗、と言うより清々しいほどの無視ね」


「そう言えば撃つ時に赤い線が見えたんだけどアレ何?」


「弾道線じゃねぇの?それがあったら当てやすくなるし、避けることも可能だかんな」


「……アレ?みんな何してるの?」


「それでさぁ、死ぬの死なないの?はっきりさせろよ?」


「えっ!無視!?無視なのマスター!?可愛い可愛いラミちゃんの寝起きだよ?!」


「大丈夫だって、ラミラミ。誰も反応しなかっただろうから」


「慰めになってないよ!シャロも酷すぎるよ!!」



なんで一々反応しなきゃなんねぇんだよ。俺は今雰囲気ぶち壊されてもの凄く八つ当たりしたい気分なんだ。誰かさん達のせいで。



『死なぬ。お前らがそこから飛び降りようが、もっと高い場所から降りようが死にはせん。体力が減るのは撃たれるか、斬られた時のみだ』


「そうか。じゃあ、コレ仲間に撃ったらどうなるんだ?」


『もちろん、傷一つつかないし減りもせぬ。ただ軽く反動で吹き飛ぶくらいだな』


「……そっか。んじゃ、チュートリアルはここまででいい。━━━━━━サッサと殺し合いを始めようぜ」


『ほう。惨めな姿を見せて貰おうか、人間ども』



そこでフエーゴのチュートリアルは終了し、脳での違和感も途絶える。一時の静寂が訪れた後に、機械じみた女の声が辺り一帯に広がって宣告した。



「遊戯祭、ここに開幕です」



開始が宣告され、俺は彼女達を建物の奥へと進ませようとした瞬間、天井が抜け落ち三人組が飛び降りて来た。三人のうち一人はハゲでもう一人は髭ダルマ、三人目はザビエルヘアー。三人とも右手にベレッタm92 、左手にサバイバルナイフを握っている。



「お前らが客人様だな?」


「俺らに弾と武器を寄越してもらおうか!」


「さぁ、死ねぇ!!!」



銃をゆっくり構え始めながらゆっくり落ちて来た。天井は三メートルほどの高さで落下時間もそこそこある。ヤツらがこのゲームに上手くないのは奇襲の仕方、銃口のブレからよくわかる。この世界には魔法が存在しない上に、身体能力は元々の高さに設定されている。帝のような頭のイカれた存在は皆無。つまり簡単に置き換えればここは『元いた世界』と同じだ。ならば、



「━━━━━奇襲には相手が悪い」



右手と左手に握っているベレッタm92 をサッと上げて照準を合わせる。赤い線が銃口から出るか出ないかの間際で向こうの線がまだ空中を上下に揺れている瞬間、乾いた音と共にハゲと髭ダルマの頭が吹き飛んだ。血が吹き荒れて脳に小さな穴が開く。残った最後の一人はその光景に絶句し銃から手を落とすが、奇襲して来た奴を何のお返しも無しに放置するわけがない。音速、もしくはそれよりも少し早いぐらいの速度で動いた少女がザビエル頭の首をナイフで斬り落とした。ブッシャァ!と血が吹き荒れるが、僅か二秒にも満たない速さでポリゴンとなって首なしの死体も飛んで行った首も消え去った。



「2キルゲット♪」


「なら私は1キル!ってあぁ!!」



音速で動いたのだから、そのままスッて止まれるわけがなく奥の壁へ顔面から突っ込んだ。いやマジ痛そう。よかったな、銃とナイフ以外で死ななくて。あ、再生するから一緒か。



「……抜けない」


「その前に絵面の問題がある」



美少女の顔面半分が壁に埋まっているってどうよ?ギャグ漫画でも早々ねぇぞ。つか、イリス達も助けてやれよ。見てて可哀想だろ。



「……おい?大丈夫か?」


「あっ、うん。いやちょっとビックリしただけ」


「よく反応したよね、ラー君」


「慣れた、からだな」


「それに弾道線出てなかったよ?」


「出る前に撃ったからな。体験したらわかるけど、アレむっちゃ遅いな」



そんな風に愚痴を言いながら壁に埋まったミツを助けるべく足を握った瞬間、ふと思いついた。さっきの八つ当たりしたい気分はあの髪の毛三トリオで少しはマシになったが、やっぱり本人達に制裁をしなければいけないと俺は思うんだ。思い立ったが吉日、ここは実行しようじゃないか!



「・・・・・・」



ドンドンドンッ!と銃声が鳴り終わると、目の前に頭まで地面に埋まった美少女三人が出来上がった。いやぁ、いい絵面だわ。うん。心が晴れ晴れするね!



「さて、丸々顔を埋まった気分をどうぞ?」


「………そうね、痛くはないわ。けど、もっと言いたい事がある」


「何だろうね」


「シャロわかるよ。それはねぇ……ライ君殺す!」



ズボッと頭を抜き、躊躇いなく銃をコッチに向ける。後ろに壁がないってわかってるのかな、この人達。落ちるよ、俺落ちるよ?







「一つだけ言わせて欲しい。あんま撃つと音で場所がバレr…ハゲバンザイッ!!!」






いや、改めておもうよ。やっぱり彼女達に銃を教えたのは間違っていたと思う。







はい!どうも!■です!


さてさて、始まって来ましたね。あとは盛大に暴れるだけ!!さぁ、黒服の人に捕まらないよう頑張るぞ!٩(ˊωˋ*)و


次回は水曜日の夜9時です!お楽しみにー!

うぅ、寒い寒い……

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