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結局俺は不信のまんま  作者: ◾️
第五章 贋造の英雄
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第二十五話 人知れず時は過ぎ去る

「んじゃ、俺は帰るわ。世話になったな、アルト」


「おう。また近いうちに来やがれ!そん時は誰も襲って来ねぇ事を願ってるよ」


「ハッ!自称厄病神の俺に通じると思ってんのか?」


「まぁ、無理な話だな。諦めるよ」


「もう少し食い下がってくれよ!俺とお前の仲だろ?!」



泣きそうなかおで睨む俺を「そんな仲あったか?」と、とぼけてアルトはスルーした。少し肌寒くなった風が頰を撫でて通り過ぎて行く。今は夜中、どこかの幼気な少女が活発に活動する時間帯だ。だがその少女も今となっては━━━━、



「・・・・・」



シュンとした態度で俺の袖を今も引っ張っている。彼女なりに罪悪感があったりするのかもしれないので、俺から何かを言ってやったりはしない。開き直るのも、その罪悪感を物色する動きを見せるのも、すべて彼女の判断だ。俺が手を貸すのは単純にまだ幼い彼女の成長を妨げるのと同じことだ。



「血帝はお前が預かる、と。そいつは家に置いとくのか?」


「んー、何にも考えてない」


「そうか。聞いた俺が馬鹿だった」


「だ、大丈夫だって!もう暴れたりはしねぇよ。まぁその辺はイリスに一任してるしな」


「ったく、騎士のくせに主人と付き合ってどうすんだよ。いざって時に守るモノを間違えるぞ?」


「ンなことはわかってんだよ。けど……」



躊躇って言葉が喉の奥でつっかえる。騎士として彼女を守るのは当然のこと。しかし、アルトが言ったように色々な事に手を回せば、段々と守るべきものが多くなってくる。そしてアレヤコレヤを守ろうした結果、何一つ守れないと言う醜態を晒す。



「……ま、そこまでは面倒見れねぇから自分で何とかしろ。一応テメェと同盟を組んだ仲だ、勝手に潰れて行くのを見るのは耐え難ぇからな」


「わかったよ。あぁそうだ、ミツと喧嘩したら承知しねぇからな。そこだけ覚えとけ」


「あいつとなら喧嘩はしねぇよ。するとしたら魔帝ぐらいだな」


「やめろ!!それから先はフラグにしかならないから!」



必死にそれ以上先の言葉を言わせないようにする俺を見て、キョトンとした顔で彼は首をかしげた。もう駄目だと察した俺は一目散にイリスやロイテが乗る馬車へとラミを抱えながら急行し、バンバンっと扉の開閉を済ませて平然とした顔で彼女の横に座った。



「何してんの、あんた?」


「未来の俺を危機から救ってる」


「……それはお疲れさま」



と、真顔で返した俺を「アホかテメェわ」みたいな顔でイリスは一蹴した。アレから特に何も無かったのだが、なんかイリスが冷たい気がしてならない。アレかな?ツンデレ最終奥義『あんたなんか、構ってあげないんだから!』とか?



「それじゃあ、ライ殿。出発しますが、よろしいですかな?」


「あぁ、構わねぇよ。出してくれ」


「了解しました」








ーー




こうして、俺達はタウミル王国から旅立ちクリフォト王国へと戻った。ユーグとエルは国賊として連行し、ラミはトルエノ邸でヒモ生活を送るってのが今の現状だ。今の俺の感情をそのまま言えば、



「━━━━俺もヒモ生活を送りてぇぇぇええええええ!!!!!!」


「いきなり大きな声を出すな。俺はもう残業で死にそうなんだ……」



と、かぼそい声で答えてくれるのは高音ボーイスのアルト団長様だ。彼はアルトから色々と雑務を任されたらしく、エルとユーグが俺を殺しに来た件やラミの処分etc……まるで日本の正社員のように働いている。「死ぬことはねぇから問題なし☆」とアルトはピースサインをしながら言っていたが、本人を目の当たりにすると「こいつの寿命あと何週間なんだ?」って感想が出てくる。



「えっと……事情を説明しますとですね、俺らが遊んでたら血帝が遊び場を横取りしに来た上に、傀儡さんまで連れて来たんです。だから僕達は、ドラ○もんの力を借りて見事いじめっ子を撃退したってわけです」


「悪い、普通に話してくれ」


「えっ?話したら団長ストレスであの世に召されますよ?いいんですか?いいんですね」


「わかったわかった。血帝の世話はお前がする。ってのと、エルとユーグの件からするにこの国もしくは他の国に人帝に歯向かおうとしてる人間がいるってことだな?」



アレスは死にぞこないの表情から一変、凛としたいつもの騎士団団長に戻った。彼は始末書を見下ろしながら、深いため息とともに問い返す。



「えぇ、まぁそうです。裏切り者の件は信用できる人間のみで固めた方がいいですね。今回のことで貴族騎士全員が信用できるって保証はなくなりましたし」


「だな。この件は俺が直々に出るとしよう。補佐はお前とイワン、加えてお前らが信用できる人間だ。しかしまぁ、その辺は追々話すとしようか」



彼は椅子から立ち上がり、胸の中央の所に手を当てて一礼した。これがこの国の敬礼で一番最上のものだ。深く一礼をして、体を起こすといつもより少し低い声で感謝の辞を述べた。



「第四騎士オオガミ ライ。本件の貴殿の活躍、本当に感謝する。これからもこの国とアルト様の為に勤めてくれ!!」


「死力を尽くして当たらせてもらいます」



俺は同じように一礼し、扉を開けて外へと出た。もう外は秋っぽくなり、そろそろ紅葉が見れそうな時期になっている。そんな色鮮やかな思いを馳せていると、前から一人のよく知る老人が歩いて来た。彼はそのまま俺の前に立ち、胸元から一つのネックレスを取り出した。



「ライ殿。誠に勝手な頼みなのですが一つ聞いてくれますか?」


「あぁ、構わねぇよ」


「頼みとは……イリスがもし誰かと婚約するとなった時に、この首飾りを彼女に渡して欲しいのです」



彼の手から差し出されたネックレスは、俺がロイテのカバンの中で見つけたあのネックレスだ。このネックレスに何の意味があるのかはわからないが、相当大切なものなのは察する。だから、俺は首を縦に振って彼の手からそのネックレスを受け取った。



「これは彼女の両親が、彼女が成人した時に贈るつもりだった首飾りです。今までは私が持っていましたが、そろそろ代変わりした方がいいかと思いましてね。一番信用できるライ殿に渡しておきます」


「……そうか。渡すときに何か言った方がいいか?」


「そうですね……これはあなたの家族が渡そうとしたものだ、とでもしておきましょうか」


「任せとけ。いい感じのタイミングで渡してやるよ」


「ハハ、お願いします」



彼はそう言うと、スッと回れ右しスタスタと奥の方へ歩いて行った。





この時、この時点で世界が良からぬ方向へと少しずつ動いていることにまだオオガミ ライは気づいていなかった。






━━━━━第五章「贋造の英雄」〜タウミル王国編〜 fin.

はい!どつも!■です!


第五章終了です!そしてそして、明日は第二シーズンがスタートされます!!超豪華!


さて次回からなんですが、番外編を二話挟み、そこから一章丸々ギャグ回の第六章に入って行きますので、お楽しみに!!


では!また!

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