第二十三話 仲直りは人生の五本の指に入るほど緊張する。
明日から28日まで休みます。理由は第二シーズンの下準備です。誠に勝手ですがご理解お願いします。
窓から入ってくる優しい秋風を感じながら、俺の意識は段々と覚醒し始める。指先に力が入り始め、腕へと通り最後に体全体に意識が向く。ゆっくりと目を開けると見たことがない天井が視界に入ってくる。だが、それよりも先に体が感じたのは━━━━
「……このベッド硬くね?」
まさに臥薪。硬い木の棒の上で寝かされているかのような不快感が俺の背中を刺激する。少し寝返りをうとうにも、ベッドと触れ合う部分が痛すぎて絶妙なポジションが見つからない。ゴロゴロと右や左に転がっていると、最後には頭から落下した。逆立ちをしようとしたけど腕の筋肉が足りなさ過ぎて体が支えられなかった、みたいなポーズをとっているとガチャと音を立てながら扉が開いた。
入って来たのは緑の髪のイケメン少年君と、金髪に青い瞳をしたロリ。二人は部屋に入って俺を見るに、二度見し顔を見合わせさらにもう一回部屋から入り直し始めた。
「テメェらはさっきから何やってんの!?」
「いや、小僧の方がおかしいじゃろ。何じゃ?夢遊病か何かの類か?」
「ンなわけねぇだろ!このベッドが硬すぎんだよ!」
「はぁ?ベッドが硬いって何だよ」
アルトはそう言いながら、俺をベッドの上に寝かせてシーツの上に手を乗せる。その後数秒ほど彼は黙り込んだが、パッと明るい顔を向けながらコッチを見た。
「……俺の筋肉より柔けぇから問題なし!」
「硬かったんじゃねぇか!!何でオブラートに隠すんだよ?!」
「うるせぇ!怪我人は黙って寝てやがれ!」
「逆ギレ!?」
ベッドが丸太だという証拠が実証されたので、俺はチラリとロリ(ババア)の方へ視線を送る。が、彼女は視線を外してスルーし何事もなかったかのように話し始めた。
「グチグチ文句言う元気があるのなら、そろそろ退院じゃな。お前さん如きにベッド一つを貸すのは少々気が引ける」
「変なおじさんに売り飛ばすぞ、このクソロリババア!」
「そのおじさんは儂と同期じゃから問題ないわい」
「この国の老人はクソ野郎しかいねぇのか!!」
「ババアを馬鹿にするなって……これでも一応歳はとってんだから」
フォローになってないフォローを入れるアルトを他所に、俺はこの見た目だけは最高のロリババアを睨みつける。だが彼女はそんな俺をため息一つであしらい、元々の用を済ませ始める。
「はぁ……小僧、お前さんの身体は大体治っておる。細かい骨の骨折や内臓の修復作業などは日にち薬で何とかなるし、砕けた顎も治してやった。まぁ、今からしてみれば治さなかった方が良かったのかもしれないがな」
「そうか。素直に礼は言っておくよ。ありがとな」
「儂ができることをしたまでよ」
少し胸を張りながら、そう答える彼女を俺は微笑ましく見つつ身体に意識を向ける。彼女が言った通り、身体の傷は粗方治り終えている。まだ少し倦怠感は残っているが痛みは無いので日常生活を送るには十分な状態だ。そうやって確認する為に両手をグーパーグーパーしていると、アルトが少し真面目な声のトーンで話しかけて来た。
「俺の用事は血帝の方だよ。……どうすんだ、アレ?その辺の森に放り出したら生物がいなくなるぜ?」
「あぁ、ラミのことか。そういや今どこにいるんだ?」
「地下の牢屋部屋だよ。お前が連れて来た騎士どもの隣の牢だ。今んとこは大人しくしているみたいだけど、いつ何時暴れ出すかわかんねぇからな」
「まぁ、それが妥当だわな」
ゆっくりと体を起こしながら、アルトと会話をする。彼女の今の状態を聞く所によると、話をしに行くこともできそうだと察する。しかし俺は、彼女よりも会いたい人物に対して何ら話を聞けていない。心配はして……くれてると願いつつ俺は二人に聞いた。
「……イリスはどうしてる?」
「嬢ちゃんなら爺さんと一緒にお前の帰りを待ってるぞ。ここは俺と婆さんしか立ち入れないからな」
特に問題がない事を聞けて一安心する。だから、もう一つの話に興味を惹かれた。
「あれ?そうなの?」
「あたりめぇだろ。ココは人帝とその一団の診療所だぜ?」
「うわぁ、とうとう俺もあの変人二人と同じ部屋で寝泊まりしてしまったのか……」
「ハハハ!そうみたいだな!」
俺が言う『変人二人』なんて言わずともわかるだろう。変声期がまだ来ないオッさんと異性の認識を誤ってる美青年だ。そんな奴が寝泊まりしてたベッドが、コレだって言うのは理解できる。ベッドがあいつらの性格を真似たんだろう。かわいそうなベッドよ……。
「ならサッサとここから立ち去らせてもらうよ。先にイリスの所行ってから血帝の所に行くからよろしく〜」
「おーう!ちゃんと仲直りしろよ!」
「〜〜ッ!ッテメェ!何で知ってんだ?!」
「ロイテから聞いた」
「あのジジイッ!!」
俺はこの部屋にいない人へ中指を突き立てる。二人はニヤついた顔でこちらを見ながら「早よ行け」と促してくる。一つ吐息を吐いてロイテの処分は後に回してまずは彼女に会いに行こう、と決意し着替え始めた。今着ている病衣みたいな服の上に、黒白の騎士のマントを羽織って立ち上がる。初めは千鳥足だったが、しっかりと地に足をつけて歩き出した。
「んじゃ、仲直りしてきますか!」
「なんか戦場に行く時より緊張してないか、あいつ?」
「……そうじゃな。やっぱり男女の喧嘩は怖いのぉ」
「テメェらは少し黙っとけ!」
頑張って固めた決意を軽く一蹴されたが、深呼吸してドアノブに手をかけて外へと出る。目の前にある柵から綺麗な青空が映り込んで来る。その景色をすぐに一望し終え、俺は左の通路へと足を進めた。
彼女がいるのは多分、二階下の彼女の部屋だ。あとは勇気と俺の話術に頼むしかない。卒業式で返事をする時みたいな緊張をしつつ一歩一歩ゆっくりと歩き始めた。
はい!どうも!■です!
……あれ?なんかメインヒロインがヒロインやってるんだけど、どう言うこと?主人公とは大違いだなぁ!!
ってなわけで、次回は29日の夜9時です。すみません。次回で第五章は終わり、次は丸々一章ギャグ回にでもしようかなぁ〜なんて考えてたりしてますんで、お楽しみにしていて下さい。
それでは!また!




