プロローグ
「はぁはぁ・・・」
「くそ、数が多すぎる・・・」
襲い掛かる魔物達と対峙する5人の少年少女達。だが、5人の表情からは疲労の色が見て取れた。
魔物の巣窟といわれるシャウラの洞窟。ここに巣食う魔物達を征圧するため、5人の少年少女が足を踏み入れていた。襲い掛かる魔物達と戦いながら、奥へ奥へと進む5人。そして、洞窟の最深部に辿り着くと、そこには数え切れないほどの魔物達が潜んでいたのである。そして、5人のリーダーと思われる少年が先手を切って魔物達に奇襲を仕掛け、それが戦いの幕開けとなった。
「ったく・・・どんだけ居んだよこいつら・・・」
「き、きりがないわ・・・」
魔物達との長く激しい戦いが続き、次第に消耗していく体力。魔物達の数は次第に減っていったが、5人の体力もすでに限界にきていた。
「み、みんな・・・」
1人の少女が相手をしていた魔物の身体をレイピアで貫いて倒すと、心配そうな表情で他の皆を見つめる。
(皆の消耗が激しい、もはやこれまでか・・・)
リーダーの少年は周りを見渡し、他の皆の披露した様子を見て、ある決断を下した。
「円華、これを・・・」
少年はレイピアを武器とする少女『円華』に1つの結晶を渡し、魔物達の群れの前にたった1人で向かっていった。
「流星っ!?一体何を・・・」
円華はリーダーの少年『流星』が魔物達の元へと向かう様子を見て驚きつつ流星に問いた。
「円華、俺がこいつらの相手を引き受ける。その間に皆を連れてここから離脱しろ」
どうやら、流星は魔物達の相手を一手に引き受ける事で時間を稼ぎ、その間に円華達4人をここから離脱させるつもりのようだ。
「そんな、危険です。それなら私もここに・・・」
「いいから早く行けっ!円華っ!」
自らもこの場に残ろうとした円華だったが、流星はそれを拒み、まるで円華を突き放すかのように大声で叫んだ。
「安心しろ、こいつら片付けたらすぐに俺も戻るさ・・・」
流星はそう言いながら、笑みを見せつつ円華達の方を振り向いた。
「・・・分かりました」
矢作詞ほほ笑む流星の姿を見て、円華は流星の力になれなかった事に対するふがいなさで唇を噛み、結晶を使って他の4人と共にこの場から離脱した。
「それでいい・・・。さて・・・」
4人が離脱したのを見て、流星は残った魔物達の群れに目を向け・・・
「来いよ、俺がまとめて相手してやるぜっ!!」
流星は剣を構えて、襲い掛かる魔物達を迎え撃った。
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それから一年後・・・
「ここがシリウス騎士学園か・・・」
ここはシリウス騎士学園。突如として地上に現れ、人々に牙を向く魔物達に対抗するべく、数々の戦士を育成しているこの学園の前に、中性的な顔立ちで黒い短髪が特徴的な身長160cm位の少年が立っていた。
「噂には聞いていたけど、やっぱり大きいんだな・・・」
学園のあまりの大きさに圧倒されているこの少年の名前は『梵 琉斗』。彼は今日、この学園に転入してきたのである。
「今日から、よろしくお願いしますっ!」
流星は学園の門の前で一礼し、学園の中へと入っていった。琉斗のシリウス学園での生活が今、始まろうとしていた・・・。