カレーモスバーガーには到底納得できぬ
美味い不味いは問題ではないのだ。
ああ、美味いとも。充分に美味い。所謂ひとつのハンバーガーとして完成されている。それは認めよう。
だが、違うのだ。これではないのだ。
かつて、モスバーガーの主力兵器の一つであったナンカレードッグ、そのソーセージの上にかかっていたシンプルな甘口カレー。
あのカレー味のハンバーガーを食べられると思って、ずっと期待していたのだ。
つまり、私の考えるカレーバーガーとは、こうだ。
パン
カレー
ハンバーグ
パン
これこそカレーバーガーと呼ぶに相応しいものである。
だが、あれはなんだ。
パン
トマト
カレー
モスバーガーのタレ
ハンバーグ
パン
モスバーガーのタレ、邪魔すぎである。
あとトマトも邪魔。「あれだけトマト好きを吹聴しておきながら、なんだこの手のひら返しは」と思われるやもしれないが、とにかく邪魔。カレーを味わうのに、あのもっさりモスモスとしたモストマトは邪魔なのだ。
そして、タレ。どう味わってもモスバーガーのタレである。
実はマヨネーズを塗った食パンにイシイのチキンハンバーグを乗せるとモスバーガーの味を再現できて経済的なのだが、今回はまったく関係ないので割愛する。
更に、カレーに入っているのかタレに入っているのかは定かではないが、玉葱のみじん切りもシャキシャキすぎる。カレーには邪魔でしかない。
これは、あくまでも「カレー風味のモスバーガー」であって、「カレーバーガー」ではない。
ややこしいことを考える必要はないのだ。カレーバーガーなのだから、パンとパンの間にハンバーグとカレーをぶちこめば、それで事足りるのだ。
「更にモスバーガーらしく」だの「味に調和を持たせる」だの、そういったグルメ評論家のご機嫌取りみたいな味は求めてはおらぬ。
「カレーモス」という響きを聞いた時に胸に宿ったこのトキメキをどうしてくれるのだ。ついでに私のナンカレードッグを返せ。復刻せよ。お願いします!
しかたがないので、作った。
いつものカレーの残りにオートミールをぶち込んで、ポテポテするくらいにまで固くする。
そこらへんで牛ひき肉を買ってきて、つなぎ用にワインで溶いたオートミール、味付けに塩とブラックペッパーをしっかり目に、ついでに香りづけのカルダモンを少々。これを狂ったようにこねまくり、フライパンで焼くだけだ。
それにしても、オートミールは便利である。カレーのとろみ付けといい、ハンバーグのつなぎといい、「もう少し硬くしたいな」と言う時にはとても重宝する。
だが、このオートミール、単体ではマズイ事この上ない。これに牛乳を入れるだけで「Oh、ブレックファスト! HAHAHA」と言ってモリモリ食うアメリカンは、どこかおかしいのではないか。
アメリカ人に対する誹謗中傷はさておき、カレーバーガーの話である。
実のところ、調達に一番苦労したのはパンだった。正確にはバンズとか言うらしいが、そんなことは知ったことではない。
それっぽいパンが見つからないので、そこらへんで売ってた丸コッペパンで代用することになった。この際、パスコのマフィンでも充分な気がする。
難しいことはなにもない。パン→ハンバーグ→カレー→パン、この順に重ねるだけである。
完成だ。「ぼくのかんがえたさいきょうのカレーバーガー」が完成したのだ。
ことここに至った以上、四の五の言うのはよそう。
うまい。完璧だ。これこそ私の考えていたカレーバーガーである。この味をこそ、私は求めていたのだ。苦労した甲斐があったというものである。
そして、どうしてカレーモスバーガーがあのような代物になったのかを理解した。
見かけが最悪だった。