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スパイスに関する話

 スパイスカレーなるものを作るようになってから、週一程度は食卓に私のカレーが並ぶような家風となって、それは八ヶ月ほどが経過した今現在も続いている。

 その間、延々と試行錯誤の日々である。

 父親やカーチャンなどは、「もう充分に美味しいから」などと言ってはくれるのだが、カレーの道に終わりはないのだ。

 何が足りないのかがまったく分からない中、「とにかく色々なスパイスを試そう」というのが一つの方針になっていた時期があった。

 結果として、私の部屋の主に歴史関係の学術本が並んでいた本棚だが、今ではかなりの割合がスパイスに占められてしまっている。これもまた避け得ぬ犠牲といったところか。


 さて、スパイスである。

 一つ一つは安価なものが多いため、これがまた結構な速度で増えていく。

 近所で手に入らないものは、アメ横(実はスパイスの聖地である)やら、その近辺の専門店やらを折りあるごとに回り、今では次のようなレパートリーとなった。


スパイス系

 ・クミン

 ・コリアンダー

 ・ターメリック

 ・オールスパイス

 ・フェネグリーク

 ・カルダモン

 ・カイエンペッパー

 ・シナモン

 ・ブラックペッパー

 ・フェネルシード

 ・クローブ

 ・ホワイトペッパー

 ・マスタード

 ・アジョワン

 ・ナツメグ


ハーブ系

 ・ローレル

 ・オレガノ

 ・タイム

 ・パセリ


 最初に言っておくが、数だけ増やせば良いというものではない。

 いや、それは分かっている。分かってはいるが、買ってしまった以上はぶち込みたくなるのが人情というものであろう。

 欲求には逆らい難く、すべてをぶち込んでみたのだが、当然ながらクミン率が低下する。クミン率の低下とは、すなわちカレー率の低下である。

 つまるところ、「カレーっぽいが、カレーだかなんだかわからないもの」が出来上がることとなり、やはり「数だけ増やせば良いというものではない」を我が身で実感することとなった。

 しばしばカレー屋の宣伝で「○○種類のスパイスを配合」的なキャッチフレーズを見るが、そんなものは何の参考にもならぬ。

 ひとつのカレーに入れるスパイスの種類など、せいぜい10種類程度だ。それ以上のスパイスを入れることを否定はせぬが、しかしそれは、カレーの個性を殺すことに他ならぬ。

 肉やカレーの種類によってもスパイスの向き不向きがある。例えば、ほうれん草カレーにはブラックペッパーが、ビーフカレーにはシナモンがよく合う。使い分けもまた重要である。


 今もなおスパイスは足したり減らしたりして研究途上ではあるが、どうしても「なかなか出番のないスパイス」というものが出てきてしまう。

 だが、上手くしたもので、この数多くのスパイスも、ほとんどは無駄にはなっていない。

 なぜなら、これらのスパイスには便秘解消などの効能を持つものが多数含まれるのだ。父親に試してもらったところ、これがなかなか調子良いらしい。

 最近は「下剤を使う頻度が減った」なるコメントをもらったので、こちらも継続中である。

 あるいは「コノヤロウ教えやがれ」という声もあるやも知れぬので、参考までに、便秘解消スパイスのレシピを掲載しておこう。


 便秘解消スパイスA

 ・ブラックペッパー:4グラム

 ・マスタード:4グラム

 ・コリアンダー:4グラム

 ・アジョワン:4グラム

 ・カルダモン:2グラム


 便秘解消スパイスB

 ・ブラックペッパー:4グラム

 ・クミン:4グラム

 ・フェネル:4グラム

 ・ナツメグ:4グラム

 ・クローブ:2グラム


 どちらも2日から3日かけて消化する前提である。

 父親はサラダにドレッシングと一緒にかけて使っているようだが、基本的にはスープ系およびグリル系を想定して調合しているつもりである。

 なお、AとBに分けているのには理由がある。同じスパイスを長期間摂取し続けると、身体のほうがそれに慣れてしまい、便秘解消効果も薄れてしまうのである。これを避けるため、2種類を交互に使うというわけだ。

 どちらも、ブラックペッパーを基本としてスパイスとして扱いやすくした上で、カルダモンの爽やかな香りとクローブの薬っぽい香りを使い分けているといった要領である。

 個人的にはコリアンダーのレモンぽい(と、私は感じている)風味とナツメグのフルーツ風味でバランスを取っているつもりなのだが、いかがなものであろうか。


 更に話はそれるが、この他にシナモンとターメリック1グラムずつを牛乳で溶いたものを、私を含め家族全員で毎日飲むようにしている。

 溶いていると言っても、シナモンは救い難いほど水に溶けないので、ココアのようにペースト状にするという段階を踏む必要があるのだが。

 ともあれ、シナモンは素晴らしい。

 主にビーフカレーの仕上げ用に使っているもので、カレーに投入する頻度はそれほど高くはない。しかし、薬効に関しては間違いなくキング・オブ・スパイスである。

 血圧に血糖値、コレステロール値まで引き下げ、さらに滋養強壮と鎮静作用を兼ねているという、まさしく反則級のスパイスといえよう。なお、妊娠中の女性にはよろしくないと言われているので、その点は注意していただきたい。

 ターメリックの薬効も色々あるが、個人的に注目したいのは血液の浄化である。一日中パソコンと向き合う不健康ゴリラは、きっと血液もドロッドロなのである。これを少しでも解消し、脳梗塞やら心筋梗塞やらのリスクを引き下げてくれるのであれば、これほど有り難いスパイスもないといえよう。

 ただし、これだけ有用なターメリックだが、人によっては安易な摂取はおすすめできない。

 ターメリックには鉄分が多く含まれ、これが適量であれば肝臓に良い効果をもたらすのだが、摂取が過ぎると鉄分によってむしろ肝臓が疲弊し、最悪の場合、肝炎にもなりかねない両刃の剣でもあるのだ。

 普段、別の食事や薬にて鉄分を多く採っていると自覚のある方は、避けておくべきであろう。

 特に盲点なのは、昨今、飲み会の折りに「二日酔い対策」としてウコン(=ターメリック)飲料をガブ飲みする愚か者がいるということだ。

 二日酔いには効くやも知れぬが、確実に鉄分を過剰摂取することになり、肝臓が蝕まれるのは時間の問題といえよう。

 ちなみに一日に摂取して問題ないとされるターメリックの量は6グラム程度である。

 巷で人気の「ウ○ンの力」などにはターメリック何グラム相当のエキスが入っているか明記されていないゆえに一概には言えないが、過ぎたるは及ばざるが如し。気をつけたいものである。


 おおむねこのような次第で、山のように買い込んだスパイスも順調に消化しつつあるのであった。

 だが、この中でも本当に出番の訪れないスパイスがひとつふたつある。

 ホワイトペッパーとマスタードである。

 マスタードはカレー粉に混ぜる人もいるが、今のところ、ちょっと使い勝手がわからないでいる。

 テンパリングで使うという人をしばしば見かけるが、本当なのだろうか。これをテンパリングすると炸裂弾と化し台所が戦場になり、ゴリラでも一時撤退を余儀なくされるのだ。

 これを使っている人は、いったいどう解決しているのだろうか。

 あとホワイトペッパー、てめえも駄目だ。臭い。すげえ臭い。とんこつラーメンを食べていないのにとんこつの臭いがする。ラーメン以外ではすっこんでろ。

 まあ、そのうち何か使い道も見つかるだろう。


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