序段 隔絶
いつからか、私は焦燥を感じていたような気がする。そう感じたのは、私が大学生だった頃を思い出す時である。思えば、若かったという観が拭えず、何をするにも無鉄砲であった。
しかし、その大学生活の始まりは、鬱屈として、晴れやかさなどほとんど感じられなかった。合格したのが二次志望校であったことが、私の心に重くのしかかっていたのかもしれない。友人と一緒に受けて、それこそ、私よりも必死に勉強していた友人の方が落ちたことが、私の心に重くのしかかったのかもしれない。金銭的なゆとりのなさが、私の心に重くのしかかったのかもしれない。一人で暮らすという未知の体験が、私の心に重くのしかかったのかもしれない。いずれにせよ、入学式の日、それに望むべく一張羅で外に出た私を迎えたのは、黒く立ち込めた、雨雲であった。
夢に見る 桜乱れる 春は無し
黒く棚引く 心抱けば
それでも、私の心はまだ比して明るいものであった。それは、高校の頃に先生から何度も刷り込まれた大学楽園説に基づくものであり、私の心を支える拠り所でもあった。事実、大学では、単位を取りさえすればよく、それ以外の勉強は一切する必要はなかった。無論、好きでする分には、際限はない。とはいえ、大学入試の地獄の勉強量に耐え切ったばかりの人々は、遊興に全力を注ぐものが多かったと言えよう。
だが、この遊興にも私は一縷の寂しさを覚えた。飲めば騒ぐ、飲めば吐くの繰り返しであり、そこに何の建設性もない。徒労と言うべきか、虚構と言うべきか、当時の私は迷い、悩んだ。
幻想に 逃れる者を 誘わん
夜の酒場の 一献の酔い
故に、私は酒場が嫌いだった。