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七話

 遅れてすいません><

 家庭の事情が・・・!受験が・・・!!

 ちなみにこちらは分割の後半です。

  


  キーンコーンカーンコーンー・・・・・・・



 

 「はい、じゃあ今日の授業は終わり~、挨拶よろ。」


 星鎖さんが授業終了のチャイムと同時に、授業を止めクラスの委員長に挨拶を促す。いつものこととはいえ、さすがに説明途中で止めるのは止めて欲しい。


 「起立!気を付け、礼!」


 「ありがとうございました。」


 ただ、もう慣れたことなので委員長が挨拶をし、今日一日の授業が終わった。他の生徒はそれぞれ部活へと向かう。


 俺も教科書類を鞄に入れ、部室へと向かう。


 二階にある渡り廊下を通って、階段を上る。


 第一棟、四階の端にあるその部屋の前には一枚のプレートがかけられていた。


 『世界情報研究同好会』


 ここが俺の所属する部活だ。鍵が開いていることから白川はもう来ているらしい。


 「うっす。」


 ドアを開け中に入ると既に来ていた白川が部室にもともとあった本を読んでいた。


 「ん。」


 白川は少しこちらを見て再び自分の本を読み始める。


教室の半分ほどのこの部屋は両脇に資料(紙媒体)で埋め尽くされた棚が置かれ、真ん中に大きな机とパイプいすがいくつか、そして窓の前に一昔前のデスクトップのパソコンが置かれている。

 ここにある資料のほとんどがかつての先輩たちによって積み重ねられた「エデン」の情報である。その中にはまだ世間には出回っていない貴重な情報が数多く存在する。ただ、あまりにも出鱈目に入れられているので、どこに何があるのかは全く分からないのが現状だが。


 鞄を机の上に置き、パイプいすに座る。特にやることもないのでぼーっとしている。部屋の中には白川の本のページをめくる音しかしない。



 パラ・・・・・・・・・・・パラ・・・・・・・・・・・・



 ここの部活にかつて所属していた人たちは、どうやらサブカルチャー好き(いわゆるオタク)が多かったらしく、棚の一部のスペースにはラノベなどの本が多くある。


 今白川が読んでいる本も多少色あせているので恐らくここから取ったのだろう。


 ただ・・・・・、こういうのを集めた人たちの多くが男だったらしく、その中には一部・・・・あるのだ。



 ・・・・・・パラ・・・・・・・・パラ・・・・・・・・



 「なあ・・・・・・・、白川。」


 「・・・何?」


 白川が手を止めこちらを見てくる。


 「・・・人の趣味にとやかく言うのはあんまりよくないってわかってるんだけどさ、そのさ、頼むからそういうジャンルの本は家とかで読んでくれないか・・・・・?」


 白川が俺の言ったことの意味が分からないというように首をかしげる。



 「・・・何を言ってるの?私が読んでいるのはただの(・・・)恋愛小説だけど?」



 ・・・・・・・・・・・・。


 

 「SMプレイのハードコアな官能小説のどこが普通の恋愛小説だっ!!!!」



  そう、白川のとっても残念な秘密とは、彼女の恋愛感覚があまりにも間違った方向に偏っていることなのだ。

 かつて彼女が急に部室の棚から本を取り出したと思ったらSMプレイ物の本だったときの驚きは正直今でも忘れられない。


 「二人の愛情を主従関係でほぐつほぐれつしながら表現する・・・これ以上の愛情表現は存在しな・・」


 「違うだろ!絶対に違う!!それは明らかに愛情表現ですらないうえに、主従関係ですらない!!」


 「・・・私が昔恋愛小説と調べたらトップにこういう小説が出てきたのだけど?」


 「いったいどこでどうやって調べたんだお前はっ!!」


 あまりの酷さに頭を抱えたくなるが、どうにか心を落ち着けて冷静になろうとする。


 「まあ、とにかく、とにかくだ。よく考えてほしい。今この部室には俺とお前しかいないわけだけど、いつここに誰かが入ってくるかもわからない。そんな時にお前がそんな本読んでるってバレたら嫌だろ。」


 「普通の恋愛小説をよんでいるだけだけど?別に困らない。」


 「ああもう、だからそういうことじゃなくて、もし他の人がお前が無言でカバーも掛けずに、ただ黙々と官能小説を読んでる姿をみたら絶対いろんな意味でその人が困るだろ?」


 「む・・・・。」


 「だからさ、頼むからちょっとは考えてくれ。」


 「・・・・分かった。」


 そういうと白川は本にしおりを挟み席を立って、本のある(ブックカバーも置いてある)棚に向かう・・・・と思ったらなぜか部室に備え付けられている水道でうがいを始めた。

 うがいを終え、席に着くと、おもむろに本をとり・・・・・




 「男は泣き叫ぶ女に猿轡を付けてしばりつけ、目隠しをされて見えないのをいいことにその熱く猛る棒を女の秘境に・・・・・。」



 「誰が音読しろっつったあああああああああああああああっっっっ!!!!!!!!!!!!」



 突然始まった官能小説朗読会に、驚愕のあまり大声を上げて叫ぶ。


 「・・・・?あなたがそうしろって言ったでしょ?無言で読むのはいけないって。」


 「そこ!?そこなの!?ブックカバーがどうとか官能小説がどうとかじゃなくて、そこなの!!??どこをどう解釈したらそうなるの!!!???」


 もうこいつの思考回路が全く分からない。いったいどのように育ったらこんな人間が出来上がるのだろうか?


 「・・・・・影峰君は意味が分からない。」


 「お前のほうが意味が分からんわあああああああああああっっっっ!!!!」


 はあ、と嘆息する白川に再び叫ぶ。もうこいつの頭を一回隅から隅まで調べたくなる。


 「・・・今日の夜は空いてる?」


 パタンと本を閉じ、白川が俺の用事を訪ねてくる。こいつの話が突然変わることなどもう当然のことだ。


 「はあ・・・・・、今日の夜か?たぶん無理だ。課題の論文があるからな。」


 息を整えながら取りあえず答える。


 「今日の何時ごろまでに終わる?」


 「ああだからもう、今日は無理だって言ってるだろ。」


 「何時?」


 白川がひたすらにいつ終わるのか聞いてくる。こうなったらこっちが折れるまで徹底的に訊ねてくるのでもう折れるしかなくなる。


 「分かったよ・・・・たぶん11時」


 「10時」


 「頼むから10時45分まで待って。マジで。」


 「・・・あなたが私にこの本を音読しろって言ったことをクラスで言わしてもらうけど?」


 そういってさっきの本を目の前にちらつかせてくる。


 「何でそうなるんだっ!!ああもうわかったよ!ただし10時半!それ以下は無理!」


 「・・・ん、分かった。」


 そういうと白川は鞄を持って帰宅の準備を始める。カギはこいつが持っているので俺も鞄を持つ。


 「集合場所はどこにすんだ?あと狩場は?」


 「中央広場に10時半。狩場はクロス火山。」


 余談ではあるがクロス火山は変動率が非常に高く、上級冒険者が最低でも50人いないと死亡率が非常に高いといわれる場所である。ましてや二人で行こうなんて場所では決してない。


 「了解、じゃ10時半な。」


 そういうと、二人は席を立って部室を出た。


 これが俺たちの普段の部活風景である。




-------------------------------------------------------------------------





 『エデンに出現するMOBのアルゴリズムはたとえ同種のモンスターであれど違うことが多い。』


 カタカタと部屋にパソコンのタイピング音が響く。


 『だが、違うと言えど遭遇時の行動パターンはほぼ同じだ。変化がみられるのは主に戦闘を初めてお互いの行動パターンが分かり始めた時だ。

 ゆえにそれぞれ同種のMOBには同じ基本アルゴリズムが搭載されており、戦闘を重ねることでサブアルゴリズムともいえる別のアルゴリズムが置換されると考えられる。

 またサブアルゴリズムはそれぞれの個体によって持つ数、パターンは違うと思われる。

 恐らくではあるがサブアルゴリズムのパターンは数百万を超えると思われる。それが既存のRPGのMOBとの違いにつながっているのではないだろうか。』


 カタンッ、と最後の一文字を打ち終える。

 エデンのアルゴリズムに関する論文がようやく終わった。現在9時40分、帰ったのが5時半だったので食事の時間を抜いてもざっと3時間はかかったことになる。


 「ふぅ~~、終わったぁ~~。」


 ずっとパソコンに向かったままだったので体が固まっている。伸びをするとあちこちからパキパキと音がした。


 「まあ、これで時間には間に合うな。さて、」


 終わった論文を上書き保存しようとした、そのとき、



 ピロリ~ン。『メールが届きました。』



 「ん?メール誰からだ?」


 上書き保存を止め、メールの宛先人を確認しようとすると、


 「・・・宛先人不明か。うん?」


 そのメールには添付ファイルが一つあった。


 「怪しいな・・・。でも今この時代にウイルスなんてばら撒くバカなんているのか?」


 今この時代は情報が最も価値があるとされている。ゆえに他人の情報を侵害する行為は、今現在非常に罪が重く、ハッキングで懲役十年なんて話もあるくらいだ。


 「ウイルスバスターは最新版だし、どうにかなるか?」


 怖いので論文の上書きを先に行う。


 「さ~て、どんな奴かなっと?」


 そして何の気なしにクリック。


 瞬間、パソコンの画面が急に光りだした。


 「ウワッ!!」


 突然の光に目を覆う。


 しばらくして光の収まったパソコンの画面を見ると、そこには美しい橙色の髪の少女がいた。


 「ふう・・・・ハッキン・・・、いえ転送成功ですね。」


 なんだこれって・・・おい、今ハッキングって言わなかったか?


 「誰だ、お前?」


 そういうと少女はこちらを向き、


 「はじめまして・・・って訳でもないのですが、昨日は助けていただきありがとうございました。」


 そう言われ、昨日のことを思い出す。


 昨日と言えば特に何もなかった・・・わけでもないがいったい誰だ・・?

 と、思ったその時、その声聞いてを思い出す。


 「あ!まさかお前昨日の!」


 「そうです。お互い名前も聞いていなかったので、あの後あなたのログを探すのには苦労しました。フィールドのデータに干渉したり、会話のログをあさりまくったり、あなたのアバターから逆探知したりと結構苦労しました。」


 そういいながら少女は右手でピースサインをしてくる。


 こいつ今さらっと刑務所に一生ぶち込まれかねないことを暴露しなかったか?


 内心冷や汗をかきながらそんなことを考え、そして、今現在最も気になっていることを聞いた。






 「お前俺の論文のデータどこやった?」





 先ほどまでデスクトップ上に存在していたはずの論文の画面が影も形も存在していないのだ。


 そういうと一瞬ポカンとした表情を浮かべた少女は、


 「あ、食べちゃいました。」


 と、答えた。




 「は・・・・・・?」




 いま目の前のこいつは何を言ったのだろうか?食べた?俺の三時間の苦労の結晶を?


 「はい。こちらに出てくるときに片付けるのが面倒だったんで食べちゃいました。なかなかのデータ量で食べごたえがありましたよ。」


 そう言いながら少女はゲフーというような仕草をしながら腹をさすっている。



 

 ・・・・・・・・・・ブチッ。



 インターネット回線を切断し、画面の中のこいつが逃げられないようにする。そして席を立ち、後ろにある棚から目的のものを探す。過去に買ったものの、あまりの(・・・・)効果の強さ(・・・・・)に封印したものだ。今回はこれを使ってもいいだろう。


 ウイルスは駆逐すべき。


 「あ、あの?い、いったい何をしているんですか?何かとてつもなく嫌な予感がするんですけど。で、できればネット回線はつないでくれませんか?そうしないとシャレにならないので・・・。」


 ほう・・・良いことを聞いた。やっぱり予想は合っていたようだ。


 そして奥から目的のものである一枚のCDを取り出す。


 そのCDの表面には・・・


 『超☆強☆力!ウイルスデリーター!!どんなウイルスも一殺いちころ

  注意!!このプログラムはあまりにも強力すぎるため、全てのデータを消去してしまう可能性があります!あらかじめデータのバックアップを取っておくことを、とてもとてもとっっても強く!!お勧めします!!』




 「ちょっ!!!!」



  何を取り出したのか気づいたらしく画面の中のそいつが慌て出す!!


 「待って!待ってくださいっ!!まずはお互いの自己紹介と行きましょうよ!!ね!話し合わなきゃ何も始まらないんですよ!!私の名前はヒノミヤアイナ、完全自立感情搭載型のAIです!!」


 アイナが涙目になりながら自己紹介をしてくる。その様子からあながち嘘ではないらしい。涙を流すAIなんて初めて見た。 


 「ほう、そうか。じゃあ俺のほうも名乗らなきゃな。俺の名前は影峰夜鷹。今からお前をデータすらも残さず消し去ってやる奴さ。」


 「嫌あああああああああああああああああああああっっっっッッッッ!!!!!!!!!待って!何もわかってないじゃないですかっ!!目、目がマジですって!!」


 そんなアイナの様子を見ながら、顔に笑みを浮かべパソコンに近づいていく。


 「話し合いましょうって!!ね!話し合えばきっと分かり合えるはずです!!」


 そういってくるアイナにしょうがないと一つだけ慈悲を与えてやる。


 「じゃあ聞くが、論文のデータは戻せるのか?」


 「え・・・?」


 「戻せるのか?」


 「あ・・・その・・・・。」


 何度も追及するとアイナは言葉に詰まり、そして、


 「・・・ごめんなさい。無理です。」


 ・・・・・よし、断罪だ。


 「わああああああああああああああああああああああ!!!!ごめんなさいごめんなさい!!許して!許してくださああああああああああいいいいいいいいいいっっっ!!!!」


 「黙れっ!!人様のデータ勝手に食らっておいてなーにがAIだ!!やってることはウイルスと変わらんだろうがっ!!ウイルスは断固消去すべきだっ!!」


 そういってCDをパソコンに挿入しようとしたその時、再びアイナが叫びだす。


 「なっ!!ウウウウ、ウイルスっ!?この、私が!?2017年現在絶対に作ることが不可能だと言われているAIに対してなんて失礼なことをいうんですかああああああああああっっっ!!!」


 ・・・・ん?何を言っているんだこいつは?


 「・・・・おい。アイナ、おまえ何言ってんの?」


 「はい?」


 「今年は2032年だぞ?ついにキレ過ぎて時間機能バグった?」


 「へ・・・?えっ!?」


 まだ自分がバグっていることに気付いてないらしい。


 「だーかーらー、今年は2032年だぞ?お前、頭、大丈夫?」


 先ほどからなぜかこいつの様子がおかしい。ずっとフリーズしたまんまだ、いかれたなこりゃ。


 そう思ったのもつかの間だった。






 「ええええええええええええええええええええええええええええええええッッッッッッッッッッ!!!!!?!?!?!???!」





  アイナの驚愕に満ちた叫びが部屋に響き渡った。





 

 次回、解説回。

 間違いなど教えていただけたら嬉しいです。

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