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これこそが運命の出逢い。

この章から第十章まで以下のお題を使用させていただいています。

使用お題。


運命的な恋に10のお題

● これこそが運命出逢い。

● 全てが止まってしまう時間。

● 恋をするために生まれてきた。

● 貴方は今誰を想っている?

● 逢えない時間寂しくてたまらない。

● 何をしたら笑ってくれるだろう。

● 一緒に出かけるチャンスを逃さず。

● この鼓動は治まることを知らない。

● 一歩進みたいから貴方に言うのだ。

● 「今から言うこと絶対に嘘じゃないから」

 配布元:「Abandon」

URL:http://haruka.saiin.net/~title/0/



また、この短編集の中には深刻なネタバレ(と言うほど重要でもないかもしれませんが)本編では書いていないこと、これから書く予定のことも含まれています。

ネタバレは絶対に許せないという方は本編をご覧になってからお読みください。

作り的には短編のみでもお楽しみいただけるかと思います。




『アラストル・マングスタね? その命、頂戴』


『悪いが簡単にはやれねぇな……』






 思えばある意味運命的な出会いなのかもしれない。

 尤も、俺とこいつの間に、ロマンスとかそういった甘ったるいものは無い。

 それどころか、宿敵だとかそう言った類のものですらないのだ。



 一言で言うならば【奇妙】


 俺と玻璃の関係は【奇妙】な関係でしかないのだ。





「運命の出会いねぇ…お前、意外とそういった甘ったるい考えも持ってるんだな」

「甘ったるい? 別に人と会っても甘いもの無いよ?」

 本を開きながら足をばたばたと動かしている玻璃に「運命の出会い」とやらのことを訊かれ、戸惑う。

 丁度昨日見た映画がそんな感じの内容だった気がする。

 まさかついさっきまでそんなことを考えていたなんて悟られたくない。

 そう考えていたら、玻璃は意味が解っていなかったらしい。


「まだまだガキだな」

「煩い。三十路」

 まただ。

 玻璃に「ガキ」というと必ず「三十路」と返される。

 事実だから仕方ねぇとは思いつつもやはり痛い。


「なんでそんなこと訊いた?」

 これ以上言われないためにも話題を戻す。

「蘭がなんか言ってた。運命の出会いがどうとか、未来への影響がどうとか…」

 随分曖昧だな……。

 玻璃が興味の無いことを覚えていられるはずも無いが……。


「蘭が言ってた。人と人が出会うのは前世からずっと決まってる運命なんだって」

「ほぉ」

「兄弟とか家族に生まれるのは前世でもずっとそういう繋がりがあるからだって」

「そうか」

 また随分スピリチュアルな話だな。

 まぁ、俺には関係の無い分野だ。

「女ってのはそういうのが好きだな」

「別に…でも、朔夜は前世の記憶が少し残ってるとか言ってたよ」

「ほぉ…で?」

「なに?」

「詳しい話は無いのか?」

 中途半端に言われると気になるだろ。

「神にお仕えする人だったんだって」

「……今とかわらねぇなぁ…」

「うん」

 期待した俺が馬鹿だった。

 もう少し童話風な何かが登場すると思ったのだが…。

「あ、蘭が言ってた。私と瑠璃は前世で恋人だったんだって」

「はぁ?」

 女同士だろ。とは思ったが、前世とやらでは性別や人種も違うことがあると聞く。

 まぁ、今の瑠璃の妹にデレデレのところを見ると否定できねぇな。

「なんかね」

「ん?」

「アラストルにも会ったことある気がする」

 玻璃が真剣に言う。


「馬鹿か。お前が俺に会ったことある気がするのはシルバに似てるからだろ?」

「…違う」

「はぁ?」

 散々シルバに似てると言っていた奴が何を言ってる?

「アラストル」

「何だ?」

 玻璃がじぃっと俺を見る。


「人はね。出会うことに意味があるんだってシルバが言ってた」

「まぁ、そりゃあな……すれ違う相手にもすれ違うことに意味があるとか言うしな…」

 もっとも、そういうことを言うのは大抵術師や魔術を齧ったことのある連中だ。

「アラストルに会ったのも意味があることだよね?」

「ああ、そうだな」

 確かに、玻璃との出会いは俺の人生に大きな影響を与えている。


「こういうの、運命って言うのかな?」

「さぁな」


 玻璃が聞きたかったのは甘ったるいロマンス映画のような【運命】ではなく、もっと前世とか縁とかそういった類の【運命】だったらしい。



「じゃあ、アラストルも運命の人だ」

 玻璃は少しだけ柔らかく微笑んだ。


 どうも、玻璃が笑うのには弱い。

 特に柔らかく笑うと妙にリリアンに似ている。

 それで居て玻璃は玻璃だと感じさせるのだ。


 神が居るのなら問いたい。


 なぜ玻璃と俺を出会わせたのか。

 なぜどちらにも似た知り合いが居るのか。


 そんなことを考えながらコーヒーを飲んでいると、玻璃は床に伏して眠ってしまっていた。


「おい…せめて長椅子で寝ろ」

 そう言っても起きる気配は無い。

 仕方なく抱き上げて長椅子に寝かせると、先程まで玻璃が読んでいた本が目に入った。


「……『運命の赤い糸』?」

 どうやら最近流行っているロマンス小説らしい。

 栞代わりにカードが挟まっている。


 【たまにはこういうのも悪くないわよ?】


 上品な文字は彼女の長姉、朔夜の文字だろう。


「……まさか、な?」

 玻璃に限ってそんなことは無いだろう。


 本をテーブルに置き、玻璃に掛ける毛布を取りにいく。








『ほら、これでも着てろ。かなり濡れてるかもしれねぇが無いよりはマシだろ…』



 拾ってしまったのは、気まぐれだった。


 その気まぐれを運命と呼ぶのだろうか?

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