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私の人生の主人公
あの人が私の知らない柔らかな笑みを浮かべている。
私の前では大して笑いもせず、怒りも憎しみも、なんの感情もない真顔でしかいないくせに。
彼女が何かを呟いた。
その途端その柔らかい笑みに微かな声がのる。
「なんで笑ってるんですか!」
「いや、笑ってなどいない。微笑ましいなと思っただけだ。リリエンタール嬢、すまない。私はもう行かなくては。」
それならば仕方ないと、シシリア·リリエンタール嬢は先ほどの怒ったふりを辞め、笑顔で彼を見送る。
別に2人が疚しい関係であるなとど言いたいわけではない。
今だって二人きりでの会話ですらなく、護衛代わりの御学友やその婚約者との集まりだったのだから。
だから余計に、気づいてしまう。
私に向ける表情こそが彼が取り繕った、仮面のままの姿であることを。
あんなものをみるなんて、自分がこの時間にこの廊下を通ったのが間違いだったのだ。




