Introduction.
「しけたツラも爽やかになるような情報が聞きたいか!?」
梅雨が明け、確かに夏の訪れが分かるくらいには気温が上がっているこの暑さと同程度に、電話越しではあるが、興奮してることはわかる。
しかし、いつものことだろう。
情報屋の卓也が持ってくる情報は、既に知っている話か、消費期限がとっくに過ぎた話など、信憑性が薄いものばかりだ。
『またロクでもないことなんだろ?卓也の持ってくる噂はアテにならないからなぁ。』
そう言いながら、厚さ4mm程度の携帯端末に表示されている赤色のボタンを切ろうとした。
「まぁ、待てよ!!これは絶対おかしいんだ!様々な情報が開示されているこの2090年に、明らかに更新されていない土地があるんだ。」
…。こういう話には弱い。通話の終了ボタンを切らずに、このアテのない話に耳を傾けることにした。
『どんな情報なんだ?』
「おっと、この話を聞きたいなら、20,000ドレンが必要だ。どうだ?この話は儲かるぜ?」
相当自信があるようだ。しかし、20,000ドレン。それなりの車や、装飾品、このワシンキョウD.C.で暮らすなら1ヶ月ですぐ溶けちまう金額だが、さて…
「どうするんだ?この話を聞くなら、とっとと払ってくれよ、依頼主もお急ぎでね。」
『なら、お前は今俺に話を聞くかの相談をしてるんだから、相談料を20%もらうぜ?その情報、16,000ドレンで買うが、どうだ?』
「わかったよ。16,000ドレンで手打ちだ。依頼主と報酬額を聞いたら値切らずに羽振りが良くなることを期待するよ。」
『で、本題と依頼主と、大事な大事な報酬は?』
「まず、依頼主だが、ワシンキョウ政府直轄である世界監視機構(World Surveillance Organization)、通称WSOのボスであるジョージ・タナカだ。」
情報の信憑性はさておき、情報の話をする際の、声色が変わる卓也の真剣トーンは好きだ。
それに、この依頼主。大きな金の匂いがするが、本物か?
「疑うのも無理はない。俺もメールではなく、今時高価な紙の手紙を見て驚いたが、おそらく本物のジョージであると考えているが、話半分で聞いてもらってもいい。なぜなら俺はもう、16,000ドレンを手にしているのでな。」
察してやがるし、情報料を渡すのも癪だ。
「話を続ける。このジョージからの依頼は、アラビア半島、イエメンとサウジアラビアの国境付近にある砂漠地域、アル・ダッヂに潜入して欲しい。ここには二つの国に所属せず、独自の国を主張する部族がいるらしい。しかし、今回はその調査となるが、とんでもなく優秀な人工衛生でさえ現状が捉えられず。さらに派遣した、調査に特化したWSOの隊員でさえ行方しれず。そこで、このワシンキョウで一番フラフラしていて、身寄りもなく、それなりの戦闘力と実績のある、サスケ・ジェームズ様に白羽の矢が立った、というわけだ。」
「支払われる報酬は、1,000,000ドレン。」
「改めて確認だ、アル・ダッヂにて独自の国を宣言する部族の調査、および報告までだ。意図しない妨害がある場合、即刻排除して構わんそうだ。背後にはWSOもいるし、安心だな。頼んだぜ、サスケ。」
『OKだ。その依頼、引き受ける。依頼主には、任務成功のアップルパイでも焼いておくように言っといてくれ。』
電話を切り、1911年から長い歴史を作ってきたM1911と、その昔、この日本と呼ばれた国に存在した自衛隊という組織が使っていた89式5.56mm自動小銃を携えて、プライベートジェットへ向かった。