3 つかのま
人工星メリクリウスは、鉱物資源豊富な小天体を改修した個人所有の天体だ。
企業や個人が鉱物資源の豊富な天体を占有する人工星は珍しくはない。
そんなメリクリウスの宇宙ドックに、予定より少しかかって到着した。
「じいちゃん!ただいま帰りました!連絡したお客さん。シオ、この人じいちゃん。ここの責任者のテオ・アートルマ」
「お前、すごいもん連れてきたな」
迷った末、宇宙服で出たシオウはペコリと頭を下げた。
「サトウシオウです。双子惑星の幼馴染で、遭難しているところを救助してもらいました。しばらくお世話になります」
「遭難とは災難だったなぁ。ユージンの友達なら歓迎する。部屋はあるからゆっくり休め」
「とりあえず、この艦、見てもらっていい?」
「いいぞ。手が空いたら解析始める。まあ、1週間後くらいになるかもな」
「わかった」
くるりとシオに向き直り、ドックから室内へ向かう。
「じゃあ、シオまずは着替え一式調達して、部屋用意するよ」
「助かる」
洞穴のような室内に入ると無機質空間と、奥の方は木目の壁になっていた。
「売店はその先。この辺は会社のオフィスエリア。そこで木に色変わる辺りから重力あるから気をつけて。食堂はこの角左。部屋は真っすぐ行って上。下はジムとか、医務室」
しばらく生活することになりそうな館内を案内してもらいながら進む。
「おっとぅ」
足が床に吸い付く感覚に、膝が笑う。
少しの重力にガクッと来た。
「部屋まで階段だから、頑張れ」
「まじか」
3日ぶりの重力に戸惑う身体を動かして、売店と呼ぶ場所に入る。
そこで着替え一式を調達し、案内された部屋でベットに倒れ込むと、死んだように眠りこけた。