8 ちりてのち
昼の時間は自由時間ですごし、仮眠をとる。
23:00。時間である
「シュガーソルト号発進準備完了」
「ルイ。オトホシの外殻防御」
「2時間程度しか持たないけど、起動させてある。制御ロックと鍵もOK」
「ハッチ閉めたら直にロック。ユージン発進」
「了解」
オトホシに別れを告げ、シュガーソルト号は出発する。
シオは眼鏡を外してケースに入れ、磁石でできたそれを後の壁に放り投げた。
「ヘッドセット着用。行ってくる」
そう告げるとシオは、赤いボタンに手を置いた。
スイッチでなく実は指紋認証である。青白い光が切り取るように迸り、艦橋の艦長席が上昇していく。
外では上部前方一部が開口し、砲台が露出。
開いた部分は翼のように変形する。
「・・・へ、変形?メイン動力炉切り替え、ステルス防御装甲スイッチオールオン?取り敢えず許可つけてけばいんだな?!」
戸惑いながら流れるオペレーションに従うルイ。
《ユージン。エホシに前進。欠けに垂直姿勢》
「・・・わかった!」
離れていくエホシを追いかければ、欠けたエホシの中にいつの間にか船が居た。
掘削作業用のロボットアームの付いた船と、運搬船だ。
「・・・居たな」
目視でも確認出来るのをルイは冷たい視線で見つめた。
《10秒相対速度合わせて姿勢維持のち面舵離脱》
艦の上部で集束音の後、衝撃。
閃光がエホシの欠けから中心に入る。
「〜っ揺れるっ!」
武装船など初体験だがユージンは操縦桿を握り、計器を見ながら艦の姿勢抑えた。
「4・3・2・」
閃光がもう1回同じところに向う。
「離脱!」
ルイはカウントして指示を出す。
離脱の瞬間に追い風のような爆風。
エホシは爆散した。
「あ~ぁ。エホシが本当になくなっちゃった」
最大船速で予定通りの空域離脱を図りながら、ユーシンがつぶやくように嘆く。
こんな最後になるとは・・・。
「・・・きっと、違法な採掘の事故だろうな」
「ぇえ〜〜〜」
隣の長身を見上げると、きれいな笑顔だった。
「奇しくも3月18日。本当の命日だな」
「・・・コワイお兄さんたち」
ユージンはドン引きして、まあそうかと納得した。
元砲撃手な軍人と、そのうち捕まると親に言わしめるお兄さん達だ。