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特別な魔術師


「姫様、ここは只の骨董品店じゃ。暗殺の依頼なら殺し屋を雇うんじゃな」


ジェルマンは至極真っ当な事を言った。


「悪名高い骨董品店が今更何を言うのかしら?この店の商品で死んだ者や行方不明になった者は後を絶たないそうじゃない」


「やれやれ、儂はちゃんと使用方法を教えておるのじゃがな……何故か()()()()()()()()()が多いのじゃよ」


よよよよ、と目頭を押さえるジェルマンに同情するような優しさは少女にはない。


「あの女を始末して欲しいから、ここに来てるんじゃないの!」


全く人の話を聞かない少女である。


「儂の話聞いとったかの?殺しの依頼は受け付けん。何度も言うがの、ここは骨董品店じゃ。姫様なら、一流の殺し屋や依頼できるじゃろう」


「……今まで失敗しているから貴方に頼んでいるのよ」


「金をケチっておるのか?」


「失礼ね!誰がその辺のチンピラ依頼しますか!本職の一流の殺し屋にしか依頼しないわ!」



何を隠そう、少女は既に殺人依頼済みであった。

全て失敗に終わったため、魔術師のジェルマンに依頼しているのだった。

骨董品店を営んでいる悪名高い魔術師であるが、その力は本物である。

恐らく、王宮に出仕している魔術師達や国際魔術師連盟に所属している者達の誰よりも優秀なのだ。

そんな優秀過ぎる魔術師が()()であること自体が異常なのだが、ジェルマンに関しては例外とされていた。

()()()()()が認めているからだ。

まあ、それを面白く思はない魔術師は多いので、自然とジェルマンは孤立していったが、ジェルマン本人は、全く気にすることも無く、逆に面倒な事に巻き込まれなくてラッキーとさえ考えていた。




「ふぉほぉほぉほぉほぉ。よほど悪運が強いと見える」


「笑い事じゃないわ!暗殺に向いている商品を購入しようにも、貴方ときたら『売らない』の一点張りじゃない!いい値で払うと言っているのに!」


()()()()()()()()()()というやつじゃよ。店の商品を一度使い切るまでは決して他の商品は売らないというな。ここにある商品は儂が丹精込めて創った物や世界中から集めた逸品揃いじゃ。二股は許されんのじゃよ。現に、姫様はまだ最初の商品を使い切っておらん。それが終わるまでは他の商品は売れませんな」


少女は眉を寄せてジェルマンを恨めしそうに睨んだが、ジェルマンは楽しそうに笑うだけ。

そうなのだ。

少女はこの店の客。

しかも、()()使()()()()()()()()()()()()


この店の不思議なルール。

それが、最初の商品を使い切らない限り、他の商品を購入できない決まりなのだ。

もっとも、二度に渡って購入した客は今だ嘗て誰一人としていない、という物騒なものでもあった。



「なにも殺してしまわんでもいいじゃろ」


「邪魔なのよ、あの女。消えて欲しいの」


「そんな事をしなくとも王太子と婚約しているんじゃ。若い頃の浮気の一つや二つ許すのも女の度量とゆうもんじゃよ」


「……ジェルマン、本気で言ってます?何もしなければどうなるのか、貴方もよく知っているでしょう!」


「なら、婚約を解消してはどうじゃ?姫様なら、相手は選り取り見取りじゃろうに」


「そうして、王太子とあの女が結ばれるのを黙って見ていろと?雌猫が王太子妃になる?冗談!」


「今なら美談として賞賛されるんじゃないかのぅ」


「相手のために身を引く?バカじゃないの?何故、私がそんな真似をしないといけないの!自分の恋を実らせるのなら兎も角、その反対の行動をする意味が分からないわ!そもそも王太子殿下は私の婚約者なのよ?礼儀知らずの生意気でドロボウ猫に渡すなんて!なのに、この私と同じ聖女候補ですって!?平民女が!冗談じゃないわ!」


激昂する少女は幼くして王太子と婚約した筆頭公爵家の令嬢であった。



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