悪名高き骨董品店
王都の中心部に洒落た骨董品店がある。
そこは一風変わっていた。
他にはない“いわくつきの商品”ばかりを扱っているのだ。
店主も変わっている。
普通ではない。
魔術師だ。
カランコロン!カランコロン!
入り口のドアについている鈴が景気よく鳴り響く。
「たのもう、ですわ!」
同時に威勢良い少女の声も店に響いた。
「今日こそは私の頼みを聞いて頂きますわよ!」
「ほぉほぉほぉほぉ。相変わらず姫様は怖い物知らずですなぁ」
少女に対峙するのは白髪の老人である。
長い白髪は腰まであり、口髭や顎髭も同じように長い。真っ白な長い一つの布で造られたような衣装。
その姿は物語に出てくる魔法使いそのものであった。だが、あながち間違ってはいない。老人の名前は、ジェルマン。魔術師である。
ニコニコ微笑んで如何にも好好爺といった風貌ではあるが、実は、この魔術師の評判は悪い。
いや、悪い処ではなく最悪の評判であった。
それというのもジェルマンが営んでいる骨董品店は、いわくつきの商品ばかりを取り扱っていて、それによって不幸になる人間が後を絶たない。なら商品を購入しなければいい話なのだが、生憎、ジェルマンの商品は良く効く。効き過ぎて自滅するケースが多いのだ。はっきり言えば購入者の自業自得なのだが生き残った者や残された人間はそうは思わない。『何故、そんな恐ろしい物を売ったんだ』と訴えるのだ。
買った者ではなく売りつけた者が悪い。
滅茶苦茶な論理だ。
だが、それがまかり通ってしまった。
何故か。
客の多くは貴族階級やブルジョワ階級。
権力と金を持っている者ばかり。
彼らが「そうだ」と言えばまかり通る世界である。
それでもジェルマンの店を訪れる客は後を絶たない。
「あの女を殺して欲しいの!」
理由は、欲深い客が多いからかも……しれない。