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如来ストリーム  作者: 古屋裕
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如来ストリーム 閻魔大王

やあ、皆さん。

スタジオアガルタから、素敵なゲストと、素敵な時間を、お送りする如来ストリーム、始まりましたね。


さて、今回のゲストは、地獄の王。


亡者の生前の罪を裁く、十王の中心的な存在。


罪を憎んで人を憎まず。だけど、お前の罪は俺が罰する!

嘘つきは、舌を引っこ抜かれるから、気を付けろ!


蒟蒻大好き、閻魔大王にお越し頂きました。


それでは、閻魔さま、宜しくお願いします。


「よろしくお願いします。」


いや~、プロデューサーが、「今日は、バレンタインデーだから、地獄の話でもしてやって。」と、そんな感じで、今回の配信が決定してしまいました。


閻魔さま、急な依頼にも関わらず、快く、出演を引き受けて頂きまして、ありがとうございました。


「まあ、私も出たいとは、思っていたから、丁度良いタイミングだった思うよ。」


いやいや。ありがとうございます。


私もプロデューサーには、振り回されっぱなしですよ。


さて、閻魔さま。

嘘つきは、舌を引っこ抜かれる言いますが、この配信は、何と言いますか、創作と言えば、聞こえは良いのですが、言ってみれば、嘘ばかりって話になるじゃないですか。


この配信の内容は、如来ストリームの担当プロデューサーが制作していますが、やはり死後、彼は、舌を引っこ抜かれてしまうのでしょうか?


私としては、是非、そうして貰いたいくらいなのですが。


「ふっ、そこは、嘘じゃなくて、フィクションだと言ってやらないと。」


「まあ、それに、嘘は、悪意の有無が重要だし、少なくとも、この配信には、悪意は感じないからね。」


「だからこそ、私もこの依頼を引き受けた訳だが。」


「まあ、正しい事でも悪意を持って、それを使えば間違った事になるのだから、ホラ話だって使い方さえ間違えなければ、お咎めなしだよ。」


「罪に問われるような嘘とは、誰かを、陥れる悪意があるか否か。そして、その嘘の結果が、人を不幸にするのか、しないのか。そこが重要なのだからね。」


なるほど、じゃあ、プロデューサーは何とか地獄は免れそうな感じですね?


「まあ、今の所は大丈夫だと…思う?」


はは、プロデューサー、ギリギリなんですね。


いや、寺院なんかでの、閻魔さまの造形は、大概が、憤怒の形相ですから、めちゃめちゃ恐ろしいイメージがあるんですが、こうしてお会いしますと、随分、柔らかい方で驚いています。


「私の持ち物に、浄玻璃の鏡と言うものがあるのだが。」


ああ、亡者の生前の罪を映し出すと言う、あの鏡ですね。


「人が亡くなると、先ずは、産まれてから、死ぬまでの、一生分の自分の振る舞いを、自分の主観だけでなく、その者の人生に関わった全て者の視点から見る事になる。」


「浄玻璃の鏡とは、その一連の通過儀礼を表したものだ。」


何故、そのような、通過儀礼が必要なんですか?


「それは、この世が、人の意識の成長を目的として、意図的に作られたものだからだよ。」


それでは、やはり、人は、生まれ変わるのですね?


「その一生に悔いがあれば。」


「また、果たさねばならぬ約束があるのであれば、何度でも、その人は生まれ変わろうとするだろうね。」


なるほど。


「死後、その者の一生を追体験する事で、その者は浄化されて、初めて、次の段階に移行出来る。」


「浄玻璃の鏡とは、そのような役割のものだ。」


「そして、私もまた、その者を写し出す鏡のようなものなのだよ。」


それは、どう言う事ですか?


「心に、やましいものを抱えた者が、私を見れば、それは大変に恐ろしく見えるだろうし、逆に、正直で、誠実な者が、私を見れば、私の姿もその様に映るだろう。」


「人は、私に、己の本当の姿を見るからね。」


なるほど、そうだったんですね。


あと、閻魔さまと言えば、蒟蒻が好物だと伺ってますが、冥府の主にしては、随分と世俗的ですよね?


「私を世俗的だと言うが、そもそも、私は、人であった者だよ。」


あ、閻魔さまって人間だったんですか?


「そうだよ。最近は、落語に嵌ってしまって、かつての名人に、寄席を開いてもらっているよ。」


「特に、蒟蒻問答がお気に入りだね。」


あはは、閻魔さまって、面白い方ですね。


「そうかな?でも、閻魔って、冥府における官職だから、任期があるんだよね。」


え~、閻魔さまって、役職で、任期があるんですか?


「そうだよ。だから、私は、数えて、幾代目かの閻魔になる。」


ほう、そうだったんですね。


「任期がなかったらと思うと、ゾッとするよ。永遠に、こんな仕事やってられないだろう?」


ああ~、そう言えば、閻魔さまって、裁判が終わった後に、無理矢理、鬼に羽交い締めにされて、煮えたぎった銅を飲まされるんですよね?


「まあ、そう言われているよね。」


あれは、何故なんですか?


「それは、私は、元々が人だろう?」


「つまり、人が人を裁くと言う行為そのものが、罪に該当するからだよ。」


そうなんですか?


「この世の法則は、絶対であり、厳格なものなんだよ。」


「人が放ったものは、必ず、その者に還ってくるからね。」


「あの世のように、時間を超越している世界にあれば、それは一目瞭然なんだけど、生憎、うつつの世には、時間があるので、時間差が生じてしまうんだ。」


「その為に、どれもこれも、自分が放ったもので、自分が引き寄せたものだと言う事を、人は信じる事が出来ない。」


「なので、人の罪を、人が罰する必要が出てくる訳だ。」


「この世の法則を理解していれば、本来は、人が人を裁くような真似は、蛇足であり、する必要がないものだからね。」


そうなんですね。


「だから、本来の我々の役割は、人を裁く事などではなく、この世の法を衆生に、よくよく理解させると言う事なんだよ。」


「だから、人に対して、裁判をした時点で、それは、我々の過失を意味する訳だから、私も、同様に断罪されるって話なんだよ。」


それもまた酷い話ですね。


「まあね。でも、本当に熱した銅を飲まされる訳じゃないけどね。」


「そうは言っても、割りに合わない役目だからね。任期がないとやってられないのさ。」


それでは、どうして、冥界などが存在するのですか?


「いや、この話は、長くなるので、詳しい話は、これから、この配信に登場するゲストに譲ろうと思うよ。」


「ただ、閻魔としての私の任期も、冥府そのものも、もうすぐ、その役割を終える。」


ええ〜、気になるなぁ。しかも、しれっと、凄い事言ってますよ。


「まあね。」


「でも、この話は、遠い昔に遡って、この世に何が起きて、どうして黄泉が出来てしまったのかを、詳しく説明しなければならないからね。」


ああ、それだと確かに、時間が足りなくなりそうですね。


残念ですが、また違う機会に、期待しましょう。


閻魔さま、今回はお忙しい中、スタジオアガルタまでご足労頂き、ありがとうございました。


「こちらこそ、ありがとうございました。」


いや~、バレンタインデーの浮かれた日に、地獄のお話が聞けて、リスナーの皆さまも、満足して頂けたと思います。


クレームは、プロデューサーに、直接どうぞ。


それではまた。


如来ストリーム。


次回もお会いしましょう。


バイバイ。

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