表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

店主

人をつぶす為には最低10年の時間が必要だ。しかし今回は違う。私の事を憧れているからこそ、潰しやすい。


本来の私ならまず土台から作るだろう。岬はまだ幼く、蜜の味を覚えさせる事が可能な年齢だ。


私は強引にキスをしながら、彼女が媚薬を飲み込むように導いていく。


特殊な薬でね、幻覚と快楽を見せてくれる魔法の薬。私と彼は媚薬に近い存在から、そう呼んでいる。


いつまで考える事が出来るのか楽しみ。


くくくっ、とのどで笑うと、彼女は観念したように、飲み込んでいく。


飲み込んだ事を確認し、唇を離す。


「いい子だ」

『ゲホゲホっ』

「私の見ている世界を見たがってたのは岬じゃないか」

『つっ』

「そんな顔をするな、大丈夫だ。すぐ落ちる」



即効性のある薬は喉を通り、胃の中へと侵入していく。胃液で溶けていき、次第に全身に回っていく。まるで毒蛇の猛毒のように――




閉じていた瞼を開けると、そこには彼と店主の姿がある。ここは同業者が集まる酒屋。ストレス解消の為に店主がくつろぐ場として提供している、私達『道化師』のもう一つの居場所でもある。


『お連れの方はつぶれましたか』

「そうだね、殆ど酒を呑まない奴が無理をするからだよ」

『……何かありましたか?』


この世界で生きているからこそ、私達の考えや行動で色々な予測をたてているのだろう。私に聞いてくるという事は興味がある証拠。


「たいした事ではないね」

『貴方のやり方についていけないと言った感じに見えました』

「だろうね。私には関係ないけど」

『冷たいですね、パートナーでしょう』

「まだまだだね」


私は店主と雑談をしながら、彼をあの店に預けてきた。潰れて、寝てしまった奴には興味がない。それに今、彼の傍にいると、うまい酒がまずくなる、だからいい気分の中で一人で帰るんだ。


私の花園にね。


夜風は頬のほてりを覚まさせ、彼女を繋いでいる牢獄へと足を向かわす。


『貴方は面白い人だ、この仕事がなりたつのも、貴方のお陰なのですから』


店主の言葉を思い出しながら、フラリと風に乗り、消えていく。


「変な奴」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ