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……誘拐と改造、そして洗脳


俺はジェシカを抱えて空を飛ぶ。お姫様抱っこの状態で、かなり高速で。

「な、何!? 飛んでる!?」

「ジェシカよ。これは魔法とは異なる力だ。科学の力という奴だ。俺の脚を見ろ。輝く粒子が飛び出しているのがわかるな? この粒子の噴出力で空を飛んでいるのだ。この粒子を生み出す超小型の炉を生体に備え付けている。先程の自動障壁も類似の原理だ。」


という設定の科学技術だという代物だがな。だがこれは立派な技術となっている。新粒子や新元素が実際に発現しており、それの実用化がなされているのだから。


「……よくわからないね。私をどうするつもりだい。」

「何、ちょっと改造するだけさ。ジェシカも飛翔と自動障壁を使えるようにするから、直に体感し学び研究を経て理解するようになる。そして魔法の研究をしてもらう。」


このゲームの技術研究には自軍の特徴的な科学研究以外に、「敵性技術研究」という物がある。ネルフス帝国にとって敵となる勢力の技術を研究できるのだ。正義を掲げる勢力が使うコンバットアーマーやその瞬時装着技術とか、魔法少女の変身および変身プロセスの模倣技術の開発など。

この世界の魔法に対しても敵性技術として研究をさせる……事が出来る筈だ。魔法とやらを帝国の武器とする事も目的の1つだが特に必要なのは魔法に対する対応策を模索する事だ。ジェシカの話によると現状の帝国の脅威となるものの1つに「魔法」があるからな。


「……」

ジェシカは訝しげな視線を俺に向けるが、諦めているのか抵抗は無い。俺達は鉱山基地予定地まで飛んだ。鉱山基地のメイン部は洞窟内だが魔物達用の居住区は外に作る手筈となっている。

近くまで飛ぶとブルーがサブコンソールを操作して居住区の建造をしているのが見えた。

「……ヴァイスクラウド様。製作は順調です。」

「うむ。ご苦労。ブルーよ。紹介しよう。こちらの女性は魔女ジェシカだ。彼女には帝国の魔法研究を担ってもらう。」

「はい。ジェシカ様。よろしくお願いします。私はブルーと言います。」

「……」

ジェシカは無言だ。

「ではブルーよ。ここは任せたぞ。」

「はい。お任せください。」

満面の笑みで返事をするブルー。


俺とジェシカは鉱山基地予定地を離れ飛翔して本拠地を目指す。

「あんた、あんな小さい子にも働かせてるのかい。」

「ああ、ブルーの事か。あいつは魔物(モンスター)を改造した存在だ。はぐれバブリースライムという魔物に知恵と人に擬態出来る能力を与えたのだ。」

「あんた。……神の御技に手を出しているのかい。」

「ふむ。そのような認識は無かったな。だが人の手で出来てしまう事だ。神の御技でもなんでもないさ。」

「ふん。」

それ以降はジェシカも黙ってしまった。


で、本拠地近くに来ると、空はすっかり夕焼けになっていた。こちらの世界に来てから1日目が終わろうとしている。色々あった1日だったな。


俺達は本拠地の基地の中に入る。

この基地は至って近代的な建造物だ。樹脂製の床材や金属製の天井と照明に対して、ジェシカは見慣れないものだと驚く。

「何だい。この変な洞窟は。」

「ここがネルフス帝国の本拠地だ。ジェシカよ。ではまず手術室にご招待だ。貴方の治療と若返り化をする。改造について何か希望はあるか?」

「何言っても聞きゃしないだろ。」

「そんな事もないさ。それでは貴方の治療と手術を開始する。……眠れ。睡眠(スリープ)

「あっ……」


俺はジェシカを眠らせて治療ポッドに入れた。まずは脚の再生治療だな。その後若返り化と改造、そして洗脳をする。後は身体強化などなどを盛り込んで……全行程をするとなるとかなり時間がかかりそうだ。

「では作業は任せたぞ。プチレッド達。」

「「「あいさー」」」

「「「任せてー」」」


レッドの分体達に作業を任せて俺は手術室を後にした。時間を見るともう夜だ。今日の作業はここまでだな。

俺はレッドとブルーとイエローを呼び出して食料部屋で一緒に食事を摂った。食堂のような場所で配膳はプチレッドがしてくれた。

3人は美味しい美味しいと騒いでいた。今日のメニューは「豚の生姜焼き定食」だったがスライム3人娘の口に合ったようだ。別の定食メニューも豊富にあるみたいだし俺もちょっと楽しみではある。


その後、スライム3人娘には3人部屋を与えて、俺は1人でプライベートルームに入る。白銀の鎧を脱いでシャワーを浴びると鏡に映った自分自身が見える。

「やはり俺はヴァイスクラウドの体になってしまっている。」

体つきが以前の自分と明らかに違う。筋肉のつき方がアスリートのそれだ。そして変化したのは体つきだけでは無い。

「俺は……俺の名前は田中 雅也だった。」

俺は田中 雅也。善良な日本人だ。悪の勢力を作るために人を攫う……なんて発想はあくまでゲーム内の発想だ。会ったばかりの人をいきなり誘拐するような事を考える人間ではない。だが口調や仕草もゲーム中のヴァイスクラウドのように変わっているし考え方や倫理観も変わったという認識がある。

「今の俺はヴァイスクラウドか。」

そして昔は違ったという感覚があるだけで今の自分に違和感はほぼ無い。無くなったというか最初から無い。無駄に悩まなくて良かったという実感さえある。


「これはこれで構わないか。俺は田中 雅也の記憶を持ったヴァイスクラウドだ。これからネルフス帝国を再建する。」


俺は決意を新たにした。



#0001基地(名も無き洞窟) 本拠地

構成員4人

※ジェシカ改造中 0%

#0002基地(ウィズダール山脈-中央6) 鉱山基地

構成員0人


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