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山奥の魔女を……


俺は山奥の一軒家の前に降り立つ。

山脈しかないこの周辺で不自然な一軒家。

隣には小さい畑と透き通った水の小川がある。

「ここは魔女ジェシカの家です。」

とコンソールが教えてくれた。

「ふむ。こんな山奥に魔女が住んでいるのか。」


その一軒家に歩いて近づくと……ダダダダダダッ!!!と、高速の何かが自動障壁にぶつかった。実体は見えないが衝撃がある何か。

「何だ? 何が飛んできた?」


「おや。今のをくらって生きてるのかい。」

一軒家の扉が開いて背の小さい白髪の老婆が現れた。右足が義足の老婆で杖をついてこちらに歩いて来る。その老婆の顔には深いシワがあるが、それ以上に額から頬にかけて大きな切り傷の跡があった。そして今の「高速の何か」を撃ってきたのはこの老婆のようだ。


「いきなり攻撃とはご挨拶だな。貴方はここで何をしているんだ?」

「兜で顔を隠している知らない奴に話す事は無いよ。」

俺は兜を取って再度、話しかける。

「これは失礼した。レディ。私は名をヴァイスクラウドと言う。あなたの御名前を聞いても?」

「私の事なんか聞いてもしょうがないよ。何しに来たか知らないけど帰んな。」


つっけんどんに返された。

「ふむ。一筋縄ではいかないか。ところでさっきは何を飛ばしてきたのだ?」

「しつこいねえ。もう1発食らいたいのかい?」

「そうだな。何が飛んできたかわからないから、

もう1発頼む。」

「はん。変な奴だね。ほら。XXXXXXX」

呪文のようなものを老婆が唱えると、俺に向かって衝撃の玉が飛んできた。自動障壁が展開されて目に見えない何かが弾ける。

「これは……飛ばしているのは空気……圧縮した空気か。どうりで目視出来ないわけだ。」

「へえ。その辺がわかるのか。……ところであんた。どうやって防いだんだい?」

「ふふっ、名前も知らない相手には教えられない事だ。」

本当は魔女ジェシカだろうと知っているけどな。

「ふん。あんたバカだけどまあまあ面白い奴だね。私はジェシカだ。ここへ何しに来たんだ?」

俺は鉱山基地予定地の盆地を指差して、

「あそこに盆地があるだろ。そこの鉱山の採掘に来たんだ。そこからこの一軒家が見えてな。まあ、興味本意だ。」

「こんな辺鄙な場所に採掘ねえ。」


「ああ。……ジェシカよ。実を言うと俺はこの世界で迷子なのだ。この周辺というか、色々と教えてもらえると助かる。」

「はん、採掘に来たのに迷子って変な奴だよ。まあいいや。ウチに来な。何にも出せないけどな。」

「助かる。」


一軒家の中に入る。

「まあ、座んな。ゲホッ! ゲホッ!」

ジェシカはあまり良くない咳をしている。

俺達は2人がけのテーブルに座った。で、迷子にこれだよと、ジェシカに周辺の地図を見せてもらった。この辺りは殆どが山脈だ。山から外れて平原に変わるポイントに街道があり、その街道の先に行くと人間の国グランセル王国があるらしい。また他にも人間の国やそれ以外の人種の国がいくつかあるようだ。文明レベルで言うとヨーロッパの産業革命以前程度のようだ。だがこの世界には「魔法」という物が存在しているからよくわからないが。


そしてジェシカはその人間の国から来てここに1人で住んでいる。その国の話をする時にジェシカは微かだが嫌な顔をして顔の大きな傷をさすった。何かしらのいざこざがあってここで隠居しているのだろうと想像がつく。

大体この辺りの事を把握すると俺は地図上で帝国本拠地の洞窟を探してそこを指差して言った。

「ここだ。ここに俺のネルフス帝国がある。」

「へえ。ここに国なんてあったかな。」

「いや、これから作るんだ。ここにネルフス帝国を」

「はあ? あんた、何を言ってるんだい。」


俺はこれまでの事を色々と話した。ニホンという場所で強大なネルフス帝国を築いた事。様々な苦労の元、小さな組織から大きな国まで発展させた事。気づいたら1人でこの世界に居た事。一度は失ったネルフス帝国だがそれでも再び再建する事などを色々と話した。

なぜか俺は子供が母親に自分の成果を自慢するように帝国の事をジェシカに喋り続けてしまった。ジェシカもジェシカで「何バカな事言っているんだ」という顔をしつつも、笑って最後まで俺の話を聴いてくれた。

それが俺にとってはとても楽しい時間だった。


「で、今やっと鉱物資源の目処が立った所なんだ。」

「ふふっ、すごいねえ。男は皆バカだから。あんたもバカだねえ。」

「ああ……お母さん。」

「え?」

「お母さんみたいだな。ジェシカは。」

「私に子供はいないよ。やめとくれ。」

「だが、良い母になるだろう。」

「もう、こんなババアだよ。……まあでもさ。男は一度決めた事は最後までやり通さなきゃダメさね。」

「やはり、お母さんみたいだ。」

「やめなって言ってんだろ。……ゲホッゲホッ!」

「ふむ。病気か?」


「まあね。色々回復魔法を試したけど、ダメさ。老いで死ぬ方が早いトコまでにはなったけどね。結局治らずさ。何のために生きてたんだか……」

そう言ってジェシカは人差し指を立てると指遊びのように魔法を使い出した。


指先に火が灯る。

かと思うと、圧縮した空気によって火が潰されて消える。次の瞬間にはその空間に氷塊が作られる。瞬きして見た次の瞬間には再び火が灯っている。ジェシカはそんな芸当を苦も無くやってのけた。


「ふむ。これが魔法の力だと言うのか。ジェシカよ。私はお前が欲しい。」

「は? 何言ってんだい?」

「わが帝国に来ないか? 帝国のために魔法研究をして欲しい。」

「今日会ったばっかりで、いきなり勧誘かい。こんな老い先短いババア連れても意味ないだろ。」

「問題無い。ジェシカが思う以上に帝国の治療技術は高い。我が帝国に降れ。」

「……こっちはもう色々と諦めてるんだ。嫌だよ。」

「そうか。嫌というのであれば仕方が無い。」

楽しい時間は終了してしまった。仕方なく。


捕縛(バインド)

「何を……グエッ!」

俺はジェシカの体の自由を奪って拘束した。するとコンソールにログが表示された。

「周囲の敵生体を排除しました。」

「魔女ジェシカの家を支配しました。」

周辺に他に人は居ないようだな。では誘拐しようか。

「お前を帝国に連れて行く。言ってなかったが我が帝国は悪の帝国なのだ。」

「なっ!」

俺は兜を被りジェシカを抱えると、外に出た。

「飛翔」


「我が帝国の一端を見せてやる。ジェシカよ」



#0001基地(名も無き洞窟) 本拠地

構成員4人

#0002基地(ウィズダール山脈-中央6) 鉱山基地

構成員0人


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