力技と雪山基地あらため魔石採掘基地
俺とジェシカは雪山基地に跳躍した。
そこに建造した大牢獄では巨大なドラゴンであるヴェンデルがスヤスヤと寝息を立てている。
「こいつは……伝説の古黒龍 ヴェンデルじゃないか。もしかしてヴァイスがこいつを?」
「ああ。こいつを改造したいのだが魔法がかかってるらしくてな。」
「伝説の龍を改造したいだなんて……ヴァイスの頭はぶっとんでるねえ。」
そうかな? 誰でも珍しい生き物がいたらゲットしたくなるものだと思うが……。
「ジェシカよ。こいつにかかっている魔法がわかるか?」
「これは……封印魔法だ。肉体をこの地に縛る魔法だね。そのせいでヴェンデルはあまり遠くに行けないはずだよ。」
「この魔法は解けそうか?」
「この封印魔法はいわゆる「鍵穴の無い錠前」だね。解く方法が無い魔法さ。だから効果を削る魔法を地道にぶつけていくしかないね。」
「なるほど。そうすれば解けるのか。」
「ざっと数百日かかるけどね。」
うーむ。流石にそんな日数は待っていられない。
「何か良い方法は無いか? ジェシカよ。」
「うーん。これは魔力の塊がクサリのように体全体に巻きついている形だからね。やっぱり地道に削っていくしか……」
ふむ。体全体にクサリか。
「クサリがかかっているのは胴体だけか? 頭は?」
「クサリは胴体にかけてだね。クサビがあるのもちょうどドラゴンの胸の心臓に刺さってる形だね。たしかに頭にはクサリは無いけど……」
ならば大丈夫そうだな。
「はっ!」
俺は刀でヴェンデルの首を刎ねた。
「えっ!?」
「凍結……それと転送。」
俺はヴェンデルの頭部を本拠地の特大型治療ポッドに転送した。今度は転送が成功したようだ。これでひとまずは大丈夫だな。
「えっ! ヴェンデルを殺したのかい?」
「いや。殺してはいない。頭さえ無事ならば治療ポッドにて全身を再生できるからそうするつもりだ。ジェシカの脚だってすっかり再生しただろう? 同じ要領さ。」
「確かにそうだけどさ……。」
ジェシカは腑に落ちない顔をしている。
「封印魔法はどうなった?」
「ヴェンデルの肉体も死んだから封印魔法も立ち消えたよ。」
それはちょうど良い。なんだ、簡単に封印魔法を解く方法があったじゃないか。
「転送」
今度はヴェンデルの体部分を転送した。これで後は頭部と体をくっつけてしまえば元どおりだ。雑な仕組みの封印魔法のおかげで対処が簡単に済んだ。
「ヴァイスのする事はやっぱりぶっとんでるね。」
合理的だと言って欲しいがな。
その後、俺はアステムの墓を掘り起こしてアステムの骨を回収した。ジェシカからやはり白い目で見られたがその骨をまじまじと見たジェシカは、
「ん? ヴァイス、その骨は何だい? 並々ならぬ魔力を感じるよ?」
「こいつはアステムという奴らしいぞ。ヴェンデルはアステムの事を我が友と言っていた。」
「アステムは伝説の勇者の名だね。怒り狂う古黒龍ヴェンデルをこの地に封印したって聖王国では伝わってるけど……我が友? まあ聖王国グランセルだから伝承が間違っているのかもねえ。」
ふむ。自国の都合の良いように歴史を塗り替えるなど、しない国の方が珍しいというものだ。
で、残ったのは金貨や宝剣などの財宝の山。
「ジェシカ。この財宝の山に何か有用なものはあるか。」
「ほー、この財宝はすごいね。あっ、魔剣や魔道具がいくつかあるじゃないか。」
金貨や宝剣の山の中に魔法の道具が埋まっていたようだ。
「魔法の効果を持つアイテムか。全部ジェシカが好きなだけ持っていくと良い。帝国の魔法研究に役立ててくれ。」
「本当かい!? 〜♪ いや〜悪いね〜。」
おっ、初めて見るジェシカのニコニコした満面の笑顔だ。彼女は魔法オタクなのかもしれない。
ではジェシカが必要としたもの以外に残った金貨や宝剣は鋳潰して資源にでもしよう。
と、ここでジェシカが俺に伺うように聞いてきた。
「あとさ。ヴァイス。この洞窟は魔石が大量に採れそうなんだ。」
「ふむ。魔石とは何だ?」
「魔法の効果を高める触媒みたいなもんだよ。使い方によっては魔法の発生速度を速めたり魔法を阻害したり出来るね。」
ほう。魔法というものがよくわからないが何となく重要だと思われる。
「魔法の研究にも実用的にも必要な代物だと伝わった。ではここを魔石採掘の基地として魔石の安定供給を図ろう。」
「本当かい!? やった! なるべくたくさん必要なんだ。頼むね♪ ヴァイス」
ジェシカは急に甘えてくるようになったな。だが帝国の魔法研究に必要ならば仕方あるまい。
「ついでにさヴェンデルの体素材も一部貰えるかい? 再生するんならいいだろ?」
「ふむ。どこの部位が欲しいか言ってみろ。」
「骨と皮と……あと逆鱗! 魔道具の良い材料になるんだよ〜♪」
……まあ、魔法研究に必要ならば仕方あるまいな。再生にかかる時間の差異も微々たるものだし。ここはジェシカの言う通りにしておこう。
俺達は雪山基地あらため魔石採掘基地の用事を済ませた後、本拠地の基地へと戻った。
#0001基地(名も無き洞窟) 本拠地
構成員5人
ヴェンデル改造中 0%
#0002基地(ウィズダール山脈-中央6) 鉱山基地
構成員318人
#0003基地(古黒龍の洞窟) 魔石採掘基地
0人